No.2 治癒魔法
【前回のおさらい 3point!】
①オセロは、セントラルディールという街にたどり着く
②瑠璃髪蒼眼の少女が謎の青年により助けられる
③謎の青年はオセロのことを知っているような口ぶりであったが…
「あぁ、名前程度だがな。」
俺は、もちろんこの男を全く知らない。そして俺には、暗闇以前の記憶がない。そもそも暗闇以前があったのすら分からない。記憶喪失であろうか。いや、それにしては俺は知識が多すぎるのではないか。しかし、もし仮にそうであったにしても、あの暗闇はなんであったのか。
「そうか。さっきは助かった!」
吹き飛ばされはしたものの、助けてもらったのは確かだ。
「いや、そんなことは別にいい。お前は魔法が使えなくなったのか?」
魔法——その存在は確かに記憶にはある。闇を彷徨っていた俺でさえも。
「わからない…なにもかも」
存在は認知しているが、使い方とまでは頭にない。不覚にも、口が滑ってしまった。
「そうか、お前も昔は…」
青年がそう言いかけた時、
「ありがとう!えっと…オセロさん?」
瑠璃髪の少女は、話を割ってお礼を言った。この会話で名前を覚えるなんて大したものだ。
「いや、俺だけじゃどうにもならなかった…」
「ううん、大丈夫です!オセロさんのおかげで今の命があるんですッ!」
俺がしたことは、リザードマンをなぐって返り討ちにあっただけだ。まぁ、確かにリザードマンの注意を引きつけることにはなったのだろう。
「私、ティナっていいます!ティナ・アルグエリアールですっ!セントラルディール医療魔法学校に通ってます。お互いボロボロですね…えへへ、私が治療してあげますよ!」
”キュアー”
彼女は、手から光を発し、俺の傷口に手をかざす。すると、みるみる傷が癒えていく。一方明らかに彼女は辛そうにしている。健気なのだろう。
「もう大丈夫だ!ありがとう」
「だめです!まだ治りきっていませんよ!」
「いや、俺のことより…」
「いえ、私は大丈夫ですっ!慣れているんで…えへへ」
なんだか少し気持ちが軽くなった気がする。いや、自分の人生の1ページがやっと埋まったとでもいうべきか。
そうこうしているうちに俺の体から傷が消えた。しかし、彼女は息が上がっている。
すると案の定彼女は倒れてしまった。青年に協力を求めようとしたがそこには彼の姿はなかった。
俺は彼女を抱え必死で病院を探しまわった。周りの眼が俺に向いてることは明らかだったが、そんなことはべつに気にならなかった。
なぜ俺がこんなことをしているのかは自分でも分からなかった。
《ディール国立病院》
やっとの思いで俺は病院にたどり着いた。
清純で元気のよさそうな彼女が身にまとっているウィザードローブは、布切れと見えるほどぼろぼろだった。リザードマンがどれほど冷酷なのかが分かるほどだ。
どれくらい時間が経っただろうか、もう日が沈んでいる。
窓から眺めると、人々が帰路についているのが分かる。俺は何処へ帰ったらいいのかそんなことを考えていると目の前の扉が開いた。
「あっ!オセロさん!!」
瑠璃色の彼女が俺を見つけて元気いっぱいにでてきた。
「やっぱり、オセロさんは優しいですね!」
彼女は、満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた。
「もう大丈夫なのか?」
「はい!もうばっちりですよ!えへへ」
「そっか、それは良かったよ!」
「オセロさんはこれからどうするんですか?話を聞いてる限り、この国のひとじゃないですよね!この国でリヴェールさんを知らない人なんていませんし!」
「取り敢えず、ティナを家まで送ることにするよ。」
「本当ですか?ありがとうございます!!」
こうして俺は彼女をこの街セントラルディール郊外の家まで送ることにした。
【初登場人物】
・ティナ・アルグエリアール (14歳)
→瑠璃髪蒼眼の少女 身長148cm 治癒魔法が得意らしい
【魔法】
キュアー:外的損傷を回復する初級魔法。