No1.オセロ・ヴァーミリオン
Out of BLUE 祝すべき第1話です。プロットは6年前に書いたもので、それを再構成したものです!自信作なのでどうぞご覧ください!!
気がついたら漆黒の中を彷徨っていた。やはり、何処へ向かって歩いても、同じような場所を歩いているように感じる。目が覚めてから数日間、この闇の中を歩き続けた。そして今日に至る。時間が進んでいるのか、そんなことさえ疑問となる。だが、そんな絶望の中で、人影(いや、光というべきか)が俺の目に留まった。そして、その光を辿るとこの壮大で明々な街に到着した。
「ここはなんていう街なんだ……?」
「ディールだよっ!セントラルディール!お兄ちゃん知らないの?」
いつの間にか目の前にいた金髪蒼眼の舌足らずな少女は、大きな尖り帽子を頭からこぼさんとしながら返答してくれた。
「そっか、ありがとう!」
「うんッ!ばいばいお兄ちゃん!」
大きな尖り帽子の小さな金髪蒼眼は、銀髪に手を振って去っていった。
セントラルディールという街、やっと俺は暗闇から脱することが出来た。ふと、後ろが気になり振り向いた。すると後ろには大きな広場のみが目に入る。そう、大きな広場だ。俺の歩き続けた暗闇はない。取り乱していて気がつかなかったが、なんと快晴である。少し広場とは逆の方向に進んでみると、市場で魚らしきものを売っている。晴天の早朝…らしい。やはりあの闇はなんだったのか、そんなことを気にかけながら足に針路を任せていると、朝にしては暗すぎる場所へ辿り着いた。どうやら袋小路らしい。まさに、自分そのものだ。そんな冗談を嘲笑していると金切り声が、耳に突き刺さった。
「――!!!」
悲鳴を聞くやと否や使命感とともに俺の心には高鳴りが生まれた。小道を駆け、左へ曲がると人の形をしたのトカゲ(後々知るのだがリザードマンというモンスターの一種らしい)が瑠璃髪の小柄な少女を壁際に追いつめている。リザードマンの手には紅く血塗られた呉鉤が握られており、少女の青いウィザードローブは青い布と化している。
しかし、俺は内心は怯えていた。だが、足と拳が先に動いた。
「おらぁァァ!!」
俺の拳は全力を伴いリザードマンに命中した。……だがリザードマンの皮膚には傷ひとつすらついていない。それどころか、ボロボロなのは俺の手だった。
「オマエ、ハムカウカ?オデニ?!」
「あぁ、かかってこいよっッ!!!」
本当は足が竦み動けそうもなかった。
「マズハ、オマエキル!!」
瑠璃髪の少女を見捨てて自分だけ助かるなんてことは自分が許さなかった。
「ッぐぅ!!」
しかし、やはり抵抗する術は思いつかない。あの高鳴りは何処へ消えたのだろうか……。
「ま、まだだッ!」
「シニタイラシイナ、ハヤク」
リザードマンは呉鉤を俺に向かって振り下ろした。全てが終わった、そう頭に過った。刹那、俺を一筋の光が吹き飛ばした。
「ッ!!」
するとそこには、ブロンドの長髪の青年が立っていた。
「また、悪さをしているのか!!リザードマン」
青年はトカゲ男に向かって言い放った。
次の瞬間、青年の手は光に包まれ、その光の中から一本の倭刀を取り出した。そして、リザードマンに青年の刀から放たれた黄色い斬撃が直撃した。
「グヴぁア!!!」
リザードマンは、奇妙な声を上げて地に伏せた。
「もう、大丈夫だ。お嬢さん。」
「ありがとうございます!!」
青年は、少女の笑顔を得ることが出来た。このとき俺は、少女を自らの手で救うことが出来なかった屈辱に襲われていた。
すると、
「君は、オセロ・ヴァーミリオンか。」
青年は俺にそう言った。確かにそう言った。
「…俺を知っているのか?」
そうだ、俺の名前は確かにオセロ・ヴァーミリオンだ。しかし、俺はこの青年を見たことすらない。さらに俺にはあの闇を彷徨っていた記憶しかない。
【今話の初登場人物】<覚えとくと読みやすいよ!)
・オセロ・ヴァーミリオン (17歳)
→今作の主人公。詳細は不明。身長175cm 銀髪黒眼
・リザードマン
→モンスターの一種で性格は短気。呉鉤の使用を好む。鋭い鱗を持つ。
【あとがき】
やっぱり、昔の自分の文章を読んでいると語彙や文章能力の低さが逆に面白いですよね。登場人物のイラストがあるといいなと思いつつも絵心が全くないので、頭の中どまりです(笑)
感想や評価にご協力していただけると光栄です!それでは次の話で会いましょう!