表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ティップオフ  作者: 朝日菜
藍沢凜音 前編
15/24

幕間五 衰弱するホタル




「いけません」


「ほんの少しだけでも……!」


「いけません。いいですかお嬢様、私は絶対に譲りませんよ!」


 ベッドに横たわる私を見下ろす松岡まつおかと目を合わせる。松岡の瞳には絶対に譲れなさそうな覚悟と意志があった。


「お医者様に止められているのをお忘れですか」


「……わ、忘れてないよ」


 私は顔をせた。

 これ以上、執事の松岡と意見を対立させたところで私が勝つわけがない。それがわかっていたから。


「申し訳ございません。本日は全中の予選の初戦という大事な日なのですが」


 私は首を横に振った。


「松岡が謝ることじゃない。私がもっと強く生まれていれば良かったのに……」


 すると今度は松岡が首を横に振る番だった。


「お嬢様は、本当に大事な部分である心はお強いお方です。ただ、お体の調子がよろしくないだけのことじゃないですか」


「体も強くなりたいの」


「弱くても私が守ります。私とお嬢様が初めて会った、あの日のように」


 松岡はそっと、右脇腹を撫でた。そこには今もなお消えない傷跡が刻まれていた。



 私と松岡が初めて会ったあの日。



 私は祖父母の墓参りの後、車にかれそうになったことがある。そんな私を守ってくれたのは、ご両親の墓参りに来ていた高校生の松岡だった。


「……ごめんね」


「いいえ。それが私の、"存在理由"ですから」


 私にバスケを教えてくれた松岡は笑った。

 私は松岡の台詞が頭から離れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ