幕間四 奏でられる歌
1
アメリカは今日も晴天だった。
「奏歌ー」
キッチンから母親の麻衣歌の声がして、私は返事をした。リビングと同じ部屋にあるキッチンでは、お母さんがじっとカレンダーを見つめている。
「日本が夏休みの時に一回帰ろうと思うんだけど、どう?」
「え?」
「いきなり帰るんじゃなくて、一回見に行くのよ。学校のこともあるでしょう?」
「あ、そっか……。うん、すっごくいいと思う!」
お母さんは微笑んで、何故かリビングの机を指さす。手を伸ばして置いてあった封筒を手に取ると、意外と重みがあって私は首を傾げた。
「ちょっと読んでみなさい」
「はぁい」
封筒から出てきたのは、学校のパンフレットだった。パンフレットには大きく《東雲中学校》と書いてある。
「……ひがし、くも?」
「シノノメよ。奏歌には難しかったかしら」
「そっ、そんなことないよ!」
そっか。私、漢字あんまり読み書きできないから日本に戻ったら恥をかいてしまう。勉強しようと思う反面、パンフレットで目を引いたのは部活動紹介欄だった。
その中には私の得意なバスケ部もあって。
「…………ぁ」
よく見ると、昔、夏休み中に行われる大きな大会で優勝したと書いてあった。夏休み中ということは、もしかしたらその大会を見られるかもしれない。
私は密かに自分がワクワクしているのを感じた。