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第二十六話 戦友と共に……

 現実逃避という行動を、

今日ほど実行したいと思い続けた日はない、星一朗は後に語っている。

妹・恵玲奈の奸計によって

戦場へ送り込まれた事へのささやかな反抗である。

絶え間なく訪れる来店客相手に、慣れない愛想を振りまき、

慣れない接客対応を続けているわけである。

世話になっている喫茶店の手伝いなのだから、

文句一つ言わず頑張っているのであって、

別の店だったら途中退場を考慮していることだろう。

星一朗は客からのオーダーを聞きながら、

まるで飛ぶように店内を駆け回る妹・恵玲奈と

竜二の姪であるセシルの姿を見ながら、

客として普通に注文していたいと心底思ったのだった。


「ナポリタンにパンプキンシチュー、上がったよ!

 恵玲奈ちゃんお願いっ!」

「はーいただいま!」

「オーダー入ります!

 ブレンド2! Pドーナツセット2!」

「セシル、悪いけどブレンドはお願い!

 ドーナツセットは120秒頂戴っ!」


 恵玲奈の働きぶりは、

最早数年勤め上げたベテランのそれに近いものだった。

元々適正があったのだろうが、

竜二は本格的に恵玲奈の正式採用を検討するまでになっていた。

セシルも恵玲奈に負けじと頑張っているが、

人見知りする時があるようで特定の客層に対して態度が異なる時があった。

特にトラブルがあったわけではないが、

オーナーとしては少し気になる部分である。

星一朗というと……。


 星一朗はオーダー票を脇に抱え、冷水の入ったグラスをお客の前に置く。

彼がオーダーを聞きに行ったテーブルは、

女子高生3人が陣取る魔窟もとい、たぶん花園だった。

見目麗しいかどうかは人による為詳細は割愛するが、

常に楽しそうに喋りながら何かに対して笑っている。

ぴくりと星一朗の眉が動く。

そこまで年齢差があるわけではないが、

星一朗は彼女達が話す内容について全く理解出来なかった。

住んでいる世界が違うとは良く言ったモノである。


「ご注文どぞー、あ、お水っす。」

「わっ、こぼれちゃった……やだ、つめたーい。」

「あ、す、すみません、すぐに拭くものを持ってきますんで。」


 気が抜けてしまったのか、少し乱暴にグラスを置いてしまった。

グラスの中の水が跳ね、雨運悪く女子高生のブレザーが濡れてしまった。

特に彼女達が怒った様子はなく、

水だから大丈夫ですよーと笑いながら言葉を返していた。

ほっと胸を撫で下ろした星一朗は、

急ぎ渇いた清掃用の布巾を持ってきて、

すみませんと言いながらテーブルを拭く。


「……ひそひそ

 (このオニイサン、目つき悪くない? 眠いのかな)」

「……ひそひそ

 (金髪だし態度もあんまり良くないよね、でも……顔は良いよね)」

「……ひそひそ

 (確かに顔はイイかも。)」

「申し訳御座いませんでした。

 ご注文がお決まりになりましたら、スタッフをお呼びください。

 (聞こえてるっつーの!)」


 ペコリと一礼した後、星一朗はバッグヤードへ向かった。

時計の針は午後1時を指している。

予定では今から待望の昼休憩シフトへ移行するからだ。

本来ならばもう少し後ろの時間で取る予定だったようだが、

少し早めに取って後ろの時間を厚めの人員で回そうということになった。

バッグヤードへ入るとすでに昼食がテーブルの上に用意されてあった。

恐らく竜二が時間の合間をぬって用意してくれたのだろう。

星一朗は感謝しつつナポリタンにシーザーサラダ、

それにアイスコーヒーを本能のまま胃に放り込む。


「美味いっ! いつもの3倍は美味い!」


 思わず声が外に漏れる。

ナポリタンのトマトピューレと具材の絶妙な絡み具合に適度な塩加減、

そして新鮮な野菜乱舞のシーザーサラダ、

そして【箱庭】の十八番であるコーヒーの香り。

もしかしたら俺は日々こんな美味い食事を食べていたのか、と

感慨に耽ってしまっていた。

そんな悠長な事を考えているとバッグヤードのドアが開き、

忙しそうにセシルが飛び込んできた。


「あ、お疲れ様です。」

「お疲れー、ん? 材料の補充?」

「ええ、おじさまは動けないですし、

 恵玲奈ちゃんも今フロアから抜けると痛いってことであたしが。」

「本条さんが抜けても痛いのは変わらんよ、と

 休憩中の俺が言ってみたり。」


 確かに誰かがやらないと来店客に迷惑がかかるのは間違いない。

問題はスタッフの少なさだろう。

臨時で良いから、バイトの一人くらい雇えば良いのにと思ったのだった。


「そうだといいんですけど……

 まあそれはともかく、鷲谷さんから何か連絡はありました?」

「悦郎からならさっき連絡来てたわ……

 詳しくはまだ見てないけど、

 今週の日曜日の午後駅前のファミレスまで来いってさ。」

「本格的に始まるんですね、

 うわ~大変だろうとは思うんですが、何かワクワクしてしまいます。」

「そんな楽しいものじゃないぜ、デバッグ作業ってのは。

 本音を言うとゲーム好き程やっちゃいけない作業の一つだと俺は思う。

 ただまあ、俺みたいなシステム系に興味があるヤツは

 また違うんだろうけどね。」

「でもやっぱり気になりますよ、ゲームの裏側を見れるわけですし。」


 星一朗はそうだけどね、と言った後

ポケットに放り込んでいたスマートフォンを取り出し

悦郎からのメールを確認する。

そこにはセシルについても触れられており、

打ち合わせにタイミングが合えば来て欲しいとあった。


「んー?

 あ、悦郎から本条さんも打ち合わせ来れるなら来てくれーだってさ。」

「うーん、行きたいのは山々なんですけど、

 今週末は普段のバイトのシフトが入っていて、日中は難しいんです。」

「了解、じゃあ打ち合わせは俺だけで行ってくる。

 内容は後で纏めてメールするから。」

「分かりました、そっちはお任せしますね。

 ……そう言えばデバッグ作業の件、

 恵玲奈ちゃんには言ってあるんですか?

 様子を見るとまだお話していないんじゃないかなーと

 ……勘ぐっちゃってますけど。」

「その勘ぐり正解、まだアイツには言って無いよ。

 なぁに我が妹の事だ、最終的には了承してくれるはず。

 問題は怒りの緩和方法を早急に準備しとかにゃならんってことさ。

 それにこの手伝いだってアイツが勝手に決めたことだから、

 無下に断るなんて真似はせんだろう、はははっ。」


 肩を竦めて、はははっと外国人のように渇いた笑いを飛ばす星一朗。

この様子だと、恵玲奈を説得させる策が何も浮かばずにいるのだろう。

セシルもまた愛想笑いで返すしかなかったのだった。

セシルは星一朗へ挨拶をした後、

バッグヤードでごそごそと材料の補充を済ませ出ていった。

星一朗はふと時計に目を移す。

時間を見れば後30分はランチタイム、

ここで昼寝をするのも手だが疲労度から寝過ごしかねない。

そう判断した星一朗は、バッグヤードに何かないかと探して回った。

すると何故か携帯ゲーム機が放置されているのを発見する。

恐らく竜二の携帯ゲーム機だろうが、

考えるよりも先に手に取りパワースイッチを押して起動させた。

差し込まれていたゲームは【テトリスDS】、

落ちモノ系パズルゲームの元祖と言っても

過言ではないくらい有名なゲームである。


「何だってこんなところにテトリスが……。

 まぁ、いっか竜二さん勝手に借りますよーっと。」


********


 日曜日の午後、

駅周辺にある有名チェーンのファミリーレストランにて。

禁煙席で難しい顔をして星一朗と悦郎は顔を付き合わせていた。

もちろん遊びに来たついで、買物の途中で、

といった浮かれた状況ではない。

今週末から始まるデバッグ作業について打ち合わせの真っ最中なのだから。

だが先日の疲れが抜けきっていないのか、

星一朗は肩を揉みながら首をゆっくりと回している。


「あ~、いかん、疲れが取れてねぇ。」

「【箱庭】でのバイトが原因か?」

「だなぁ……接客業なんてやらせやがって、

 恵玲奈のヤツ、俺を過大評価しすぎだ。」


 悦郎はノートパソコンを持ち込んで、

開発中のゲーム画面を交えながら、

ああだこうだと簡単にではあるが

ゲームシステムの仕様について説明を行っていた。

星一朗は手渡された紙媒体の資料を片手にふむふむと相槌を打つ。

専門用語もいくつか、プログラミング関係の文字も見える。


「と言うことはグラフィックの実装は遅くなりそうなのか。

 悦郎、なるはやの催促はしているんだろう?」

「ああ、グラフィック担当は遅筆だが、

 味のある良いイラストを描ける人材でな。

 せっついてはいるが、クオリティを下げられては叶わん。」

「致し方なしか。

 俺達(デバッグ班)が出来る事は、

 実装したシステムの動作確認を主軸に、

 テキスト周りの表示や誤字脱字といった点の洗い出しあたりか。」

「そうなるな。

 頻繁なバージョン更新が序盤は続くだろう。

 大変だとは思うが、セーブデータも流用はせずに

 毎回イチから作成してプレイしてみてくれ。」

「だな……データ周り触ったりするんなら、

 セーブデータ起因のバグが起こらんとも言えんだろうし、

 時間的に厳しいとは思うがやるだけはやるさ。」


 いつもの十倍は真面目なトークを繰り広げる二人である。

正直、普段の彼等を知っている人間が見れば気持ち悪いの一言だろう。


「しっかし、ノベル+ハクスラとか……冒険しすぎじゃね?」

「オレ達だって半分はそう思っている。

 だが、やってみる価値はある。」

「しない後悔より、して後悔ってか。

 リアルな話さ、学校卒業した後じゃあ

 ゲーム作りなんて難しくなるだろうし、

 今しかないってのはわかるぜ。」

「ゲーマー思考でな、

 冒険という言葉の魅力には逆らえんのだよ。」


 ふっと悦郎は気障に鼻で笑い、

飲みかけだったオレンジジュースを一口含む。

星一朗もすっかり冷えてしまった元ホットコーヒーに口をつける。

そして星一朗はそうだなぁと同意の言葉を返して、

ファミレスの窓から通りを行く人を見やった。

今日はいつにも増して気温が下がっており、

マフラーや手袋を身に付けている人がチラホラ見えた。

昼間は暖かいだろうとタカを括って

やや薄着で来てしまった星一朗であった。


「受け取れ。

 最新バージョンのデータだ、今のうちに渡しておく。」


 そう言って悦郎は懐からDVD-ROMを2枚取り出し星一朗に手渡した。

星一朗とセシルの分で2枚、

あとそれからと言葉を続けてUSBメモリを1個追加で手渡した。

ちなみに悦郎が渡したDVDだが、DVD-ROMは読み出し専用の形式である。

追記や削除は基本的に行えない為、

映像記録用やゲーム用として用いられている。

また、コンテストに提出する際と同様の形式である。


「ん?

 まさか起動処理も確認しろって?」

「ああ、ディスク起動とストレージ起動で確認を頼む。

 ディスク版のみで考えてはいるが、念のためにな。」

「ストレージについては、本当に”ついで”だからな。

 中身までは手が回らんぜ。」

「分かっている。」

「ならいいんだが。

 そういや先行して送ってもらってたシナリオ読んだぜ、

 まだ半分ってところだが。」

「お、そいつはいい。

 架空の欧州を舞台にしたファンタジーサスペンス風でな。」

「……シナリオの主人公ってさ、俺達兄妹をモチーフにしてねぇか?

 描写されている内容や兄妹設定に、

 これは主人公のイメージイラストだろう?

 似ているとまでは言わんが、

 モチーフにされている感じが凄くするんだが……。」


 一瞬、悦郎の眉がぴくりとなる。

そして数秒の沈黙の後、動揺を隠せないまま返答する。

視点は定まらず明後日の方向を見たまま、

テーブルの上で組んでいた両手は微妙に震えていた。

星一朗はやっぱりなと思いながら、

飲みかけだったコーヒーの残りを飲み干す。


「な、ナンの話だ?」

「動揺しすぎだろうが……ってことはやっぱそうかよ。

 性格や雰囲気は違うんだろうが、

 見た目や細かい設定が俺達そっくりで読みながら驚いたぜ……。」

「身近な人物をモチーフにする、よくある話だろう?」

「書く前に一言あってもいいんじゃないかね、悦郎君よ。」

「最初は七夕をモチーフに牽牛アルタイル

 悪の組織捕らえられた織女ベガを助けに行くという、

 王道ファンタジー路線を考えていたんだ。

 冗談で書いた今の話が、

 その書いているうちに興が乗ってしまってな……。

 初稿を見せたら仲間内に受けてそのまま正式採用という流れだ。

 すまん、お前達兄妹をモチーフに書いた。」


 何故七夕をモチーフにしたのか、と

星一朗は聞きたかったがシナリオを書き始めたのが

七夕の頃と考えたらアッサリと納得がいった。

ゲームの製作状況からいっても時期は間違いないだろう。


「恵玲奈には黙っておいてやるが、多分気づくぜ。

 アイツ意外と目敏いから。」

「……デバッグ途中に一度様子見で顔を出す、

 その時菓子折りでも持って行く。」

「そうしてくれ。」


 そう言って悦郎は伝票を取り立ち上がった、

どうやらここの払いは持ってくれるようである。

もしかしたら星一朗達をモチーフにしたせめてもの償いかもしれないが。

打ち合わせはこれにて終了、

あとは実データを持って作業開始するだけである。

バグレポートの報告方法については、

クラウドサービスを使ってやり取りする手筈になった。

クラウドサービスであれば、

インターネットが利用できる状況且つ、

パソコンがあれば場所は問わない。

最初は作業の終わりにメールでレポートを纏めて送信

という案もあったようだが、

修正作業はすぐにでも対応したいとのことで

メールでの報告は却下となった。


「ごっそさんっ!

 バージョンアップのデータもクラウドでやり取りするんだよな。」

「ああ。

 データが上がったら毎回ディスクに焼いてくれ。

 空ディスクについては明日にでも手配してお前の家へ送る。」

「了解。

 つか本格的だな、もっとざっくばらんになるかと思ってたけど、

 そうじゃないらしい。」

「やるなら本気だ。

 さて、オレはそろそろ戻る、電車の時間も丁度良い頃合いだ。」

「おう。」

「ああ、恵玲奈と本条さんにも宜しく。」

「じゃあ、また近いうちにな悦郎。」

「期待しているぞ、星一朗。」


 そう言って悦郎は背中を向けながら手を挙げたのだった。

相変わらず妙に気障ったらしいやつだなと星一朗は思っていたが、

戦友の変わらない様子を見てほっとしていたのは言うまでもない。


 星一朗は見ての通りの性格のせいか、

友人が多い方ではなく十割の確率で初対面相手には人見知りする。

長く付き合っている友人は片手で足りるほど、

それ以外の人間は環境の変化や立場の変化で

態度を変えてきた人間ばかりだった。

だが、悦郎はずっと変わらなかった。

中学へ上がっても高校へ行っても、

見知らぬ土地の大学へ行っても悦郎はずっと変わらなかった。

見た目や考え方は年齢を重ねる毎に変化している。

だが、本質的な部分で変わっていない事が星一朗は理解していた。

だから今回の頼みもすんなり引き受けたし、

何の疑いもなく悦郎の言った言葉を信じた。


「……さぁて恵玲奈にどう話したもんか。

 手土産は必要だろうな。」


 星一朗は帰り道、

恵玲奈が好きな某洋菓子店で賄賂の品を用意したのだった。

締めて2000円の出費である。

決して安くはないが、

妹の機嫌を損ねずに協力させることが出来るツールとして考えれば

コストパフォーマンスは優秀な方だろう、

そんな事を思いながら星一朗は家路を急いだのった。


********


「じゃあ、早速デバッグ作業を始めようか。」

「はい、先生!」


 星一朗とセシルは【箱庭】の地下【コレクションルーム】で、

悦郎から渡されていたディスクを使いデバッグ作業を開始したのだった。

ただ今日は初日、ゲームの仕様に慣れる事が重要である。

また、デバッグ作業を知らないセシルの為に、

作業のイロハを教えるつもりでもあった。

デバッグ作業をしたことがない人間は、

どれがバグでどれが仕様なのか、

どの程度のレベルが報告対象なのか、という部分で

混乱してしまうものである。

星一朗は判断基準も含めて説明を始めた。


「ふと思ったんですけど。」

「なんだね。」

「チェスター君ってデバッグの経験者なんですか?

 なんか妙に詳しいし、作業の入り方や判断基準とかも的確ですし。」

「まあね。

 俺がたまーにやってるバイトってのがそれ。

 新規のプロジェクトがないと仕事ないから

 ずっとやってるわけじゃないけどさ。」

「ああ、納得です。

 だから鷲谷さんもそれを知っていて、

 作業全般のアレコレをチェスター君に任せているんですね。」

「いいや、アイツには言ってねぇよ。

 でもまあ、俺の言動から気づいてはいるだろうな。」


 そう言いながら星一朗は、

持ち込んだノートパソコンのディスクドライブにDVD-ROMを挿入する。

ディスクをマウントした後、

自動でインストール指示のダイアログが表示され、

指示に従ってインストールを開始する。

インストール完了後、ゲームが自動起動しメニュー画面が表示された。

ゲームタイトルはまだ仮のようで、

適当な画像があるだけで、テキストで調整中と表示されていた。


「本当にグラフィック関連はまだなんだな。」

「おおおっ、本当に開発中って感じがして面白いですね~!」

「ニューゲームする前にまずはオプション周りを見ていこうか。

 プレイヤーの大半が最初に触れる項目の一つで、バグも出やすい。」

「へぇ~、例えばどんなバグなんですか?」


 目をキラキラと輝かせて星一朗の講釈を聞くセシル。

どうやら本当にデバッグ作業に興味を持っていたようである。

過去にツクールシリーズを作ったことがある娘である、

何となくどういうものかは分かっているはずだが、

星一朗の言うデバッグ作業はもっと上のランクのものだった。


「設定したはずなのに設定が反映されていない、

 音量を上げたのに実際は下がっている、

 特定の設定にしてニューゲームするとフリーズする、とかかな。」

「そういうのを一つ一つ実際に変更してみて、

 仕様通りの動作になっているか確認するんですね。」

「そう、これがデバッグ作業の基本。

 プランナーやプログラマーが書いた通りの仕様になっているか、

 を実際のプレイをもって確認するんだ。

 まあ、組み合わせとか膨大だから表計算ソフトを使って、

 チェックリスト化して効率化は図るけどさ。」

「ゲームによっては数万通りとも数十万通りとも

 ……それ全部やるんですか?」

「どうかな。

 時間は有限、コストも有限、でも品質面での妥協は許されない。

 そうなってくるともうデバッグ班だけじゃ判断できないから、

 普通はもっとエライ方々に判断を仰ぐらしい。」

「そっか、コスト掛りますもんね。」


 そう言いながらセシルは

コントローラパッドを操作してオプションを選択する。

だが、何度決定ボタンを押しても画面が遷移せず

メニュー画面から動かない。

星一朗は急ぎ自分のノートパソコンでも同様の操作を行い再現させる。

今度はキーボード操作でオプションを選び決定キーを押す。

すると正常の画面は遷移した。


「バグだな。」

「へ? ああ、そっか。

 キーボード操作では遷移したけど、

 コントローラパッドじゃ動かなかったですもんね。」

「どっちかって言うと、キーアサインの方に問題があるかもしれん。

 画面上は決定ボタンを設定してあるはずなのに、

 実は違うボタンが決定になっているとかね。」


 そう言うと星一朗はガチャガチャと

コントローラパッドを押して動作を確認した。

すると決定ボタンではないはずのボタンを押した瞬間、

画面は遷移しオプション画面になった。

星一朗の予想通り、キーアサインの設定にバグがあるようである。


「チェスター君の言うとおり、

 キーアサインの方がバグだったんですね。」

「単にオプション画面に行けないってだけじゃ、

 バグレポートとしては弱すぎる。

 最低でもこの程度までは調査しとかないと、

 修正処理する側も大変だろ?」

「ですね、よっしあたしも頑張ろうっと。

 判断がつかない時は質問していいですか?」

「ああ、もちろん。

 今日はその為に一緒に作業しているんだ、何でも聞いてくれ。」

「はい、有り難う御座います!

 チェスター先生っ!」



続く!

ゲームソフトの選定は作者個人の独断とプレイ経験で決定しています。

一部偏ってしまう事もありますが、何卒ご了承ください。

デバッグ作業・バグの内容については架空の症状です。

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