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第二十三話 シャッツカンマーの主

 星一朗と悦郎の雌雄を決した戦いはどうなったのか。

結論から言えば、二人の決着は大方の予想通りついていない。

正しくは戦ってもいない。

夕食の準備を終えたのが午後8時を廻ろうかというところで、

タイミング良く恵玲奈と黒瀬兄妹の母親が帰宅。

そのままディナータイムへと流れ、泪と悦郎は相伴に預かり、

さて勝負でも始めようかと思って時計を見たら

既に午後9時半を過ぎていた。


「で、お兄ちゃんは何をやったのかな?

 ん? 言うてみ?」

「野菜の皮むきと、うどんの湯挙げだ!」

「おおおおおおお、道理でちゃんと皮がむけていないわけだ!

 もう食べづらい!」

「妹よ、ピールは栄養豊富なのだぞ?」

「……星君、素直に謝りなさいよ。」


 ちなみに星一朗と泪が用意した”鍋焼きうどん”と”湯豆腐”は、

思いの外好評であり、少し多めに用意していたはずの具材や麺は

綺麗に無くなったのである。

泪は身内になら出しても恥ずかしくない腕前と言っていたが、

流石にレストランを開業するまではいかないまでも

十分に美味しいと口に出せる腕前だった。

野菜の皮を剥き、お湯を沸かし、うどんの湯切りをするので

精一杯だった星一朗は少し反省をしていた。

少し料理の勉強をしようかという程度に。


「今日はお暇する。

 この時間、人様の家のリビングで騒ぐわけにはいかん。」

「お?」

「もう遅い、勝負が長くなれば深夜になるのは明白だろう。」

「そうだな。」


 悦郎はそう言うとソファーから立ち上がり帰る準備を始めた。

星一朗が自室から【ブシドーブレード弐】のディスクを

手に持ってきたところだった。

常識的に考えれば当然の流れである。

キッチンでは恵玲奈と泪が食後の後片付けをし、

黒瀬兄妹の母親はお風呂に行ってくる、と言い残して姿を消していた。

小学生や中学生ならまだ許される場合もあるだろうが。

成人男子たる悦郎がその行動を取る気は無かった。

星一朗は玄関まで見送ってくると言ってリビングを後にした。


********


「星一朗、明日は暇か?」

「午前は大学へ行かにゃならんが、正午過ぎなら大丈夫だな。」


 玄関を開け外へ出ると雨はいつしか止んでおり、

雲の合間から月が顔を見せていた。

秋の月は、かつて俳句や和歌にその優美さ美麗さを称えられ愛された。

雨上がりの宵闇に差し込む月の光は、

都会の住まう者にも世界は時として幻想の側面が

あると教えてくれる貴重な存在だ。

悦郎はしばらく外の様子を眺めた後、口元を緩め言葉を返す。


「なら丁度いい。

 明日、久しぶりに竜二さんのところへ顔見せに行くつもりだ。

 【箱庭】で改めて決着をつけるというのはどうだ?」

「へへ、いいねぇその提案受けるぜ。」

「また明日になったら連絡するが、

 大学が終わったら【箱庭】に来てくれればいい。

 事情については挨拶がてらオレから竜二さんには説明しておく。」

「おう、頼むわ。」


 星一朗と悦郎は玄関で固い握手をして明日の戦いの約束をした。

もちろんオーナーである竜二の了解など取っているわけはない。

だが彼の竜二ならば二人の対決の邪魔はしないどころか

応援してしまうだろう。

同じゲーマーとして、いや、二人の事をよく知る同好の士として。

その様子を遠くから見ていた恵玲奈と泪は同時に溜息をこぼしていた。


「お兄ちゃんと悦郎君って、

 見た目全然似てないのに性格も全然違うのに、

 根元の部分は同じだよね。」

「ほんとそれ。」

「しかも二人ともゲームが上手いわけじゃないけど、

 ゲームがトコトン大好きで、

 その一点だけでずっとここまで来ている感じ。」

「恵玲奈も大変よね、その二人に囲まれていたんでしょ?」

「もう慣れたよ、今はお兄ちゃんだけだし。

 それよりも最近はお兄ちゃんのシスコン具合がヒドい。」


 真剣な表情を浮かべ恵玲奈は自身の悩みを泪にこぼしていた。

泪はさらに呆れ果てた表情を浮かべて恵玲奈の肩を優しくぽんぽんとする。


「それ前からだから、

 治ることはない感じだし、もう諦めた方がいいんじゃないかしら。」

「えー……。」

「それに貴女だって(端から見るとちょっとブラコン気味)……

 んー、なんでもないわ。

 そうそう言うのが遅くなったけれど、今日は泊めてね恵玲奈。

 流石にこの時間から家に帰る気がしないわ。」

「言われなくとも、そうなると思ってたよ。」

「さっすが恵玲奈、頼りになる♪」


 様々な思惑が巡る中、星一朗の長い秋の1日がようやく終わりを迎えた。

星一朗は悦郎を見送った後、自室のベッドへ倒れ込む。

朝イチに部屋へ戻ってきて眠ったと思ったら、

泪がやってきて振り回されて、

夜になったら悦郎が遊びに来てかつての決着の約束をして。

横になったまま、星一朗は今日の出来事を思い返していた。

睡眠不足の影響もあるだろうが、疲労蓄積は間違いなく、

彼の呼吸が静かな寝息に変わるのに時間はさほど掛らなかったのだった。


********


 喫茶店・【箱庭】では、秋限定メニューを珍しく出していた。

店の入口には、珍しく簡単なメニュー表の看板が立てられ、

イラスト入りの可愛い文字で秋限定と記してあった、

製作者が竜二でないことは明らかである。

秋限定メニューが受けたのか、

それともこれまで地道に営業していた成果が報われたのかまでは不明だが、

どういうわけか普段よりも客足は多く、

店内の空席は一切無く客も入れ替わり立ち替わりで活況に沸いていた。

竜二はいつものようにコーヒーをちびちびやる余裕は一切無く、

ひたすらオーダーに応えて料理の腕を奮い、

たまたま手伝いに来ていた姪のセシルは

店のエプロンドレスを身に纏いウェイトレスの役目を果たしていた。

メイド服に似たエプロンドレスのスカートを翻し、黒髪をなびかせながら。

つまるところ【箱庭】としてあるまじき忙しさであり、

喫茶店としてやっと本分に沿ったものになっていた。


 店内に入った星一朗・恵玲奈・泪の三人は目を丸くしていた。

彼等が普段座っているカウンター席は

見知らぬサラリーマンが座っており、

のんびりとコーヒーを啜りながらタブロイド紙を見ている。

テーブル席はスーツ姿の女性やら学生らしき同年代の姿もあった。


「うお、なんだこの人の数。

 俺の指定席が見知らぬオッサンの魔の手に……ぐぬぬっ!」

「うっわー、大盛況じゃない。

 うっわー、竜二さんがひたすら真面目に調理している。」

「ちょっと話と違うじゃないのよ。

 静かでコーヒーが美味しい喫茶店って聞いていたのに。」


 店の入口で、星一朗と恵玲奈と泪は各々好き勝手を言っていた。

普段の【箱庭】の状態を知っていれば驚きを隠せないのは当然である。

ある意味、星一朗と恵玲奈は泪に嘘をついてしまったようになっているが。


「いや、普段はこんなんじゃないんだって。

 今の状況は異常。」

「そうそう。

 お客さんなんてだいたい数人いるかいないかなんだから。」

「でもコーヒーは美味しいのでしょ?

 確かに場所は少し分りづらいとは思うけれど、

 隠れ家的な要素もあるから、

 口コミで知られていたんじゃないのかしら?」


 隠れ家というのは、口コミで広まってしまった段階で隠れ家ではない、

と星一朗は声を大にして言いたかった。

だが、営利目的で営業している喫茶店である以上、

好む好まざるという話ではないのは確かである。

星一朗は店内で忙しそうに走り回っていたセシルを見つけ、

思わず声を掛ける。


「本条さん、お疲れ様!」

「あ、チェスター君!

 それに恵玲奈ちゃんと、真野さん!?」

「どうしたの今日、何か異様に人が多いんだけど。

 【箱庭】としてはありえねぇ光景だぜ。」

「ええ、そうなんですよ。

 おじさまが珍しく秋限定メニューを出したんですけど、

 それが原因みたいです。」

「こんにちわ、セシルさん♪

 秋限定メニューって、この特製パンプキンドーナツですか?」

「本条さんだったかしらね、こんにちわ、忙しそうね。」


 恵玲奈と泪もセシルと見ると笑顔で挨拶をする。

泪が一緒に居たことは少々意外だったようでセシルは一瞬戸惑ったが、

そういえば彼女は二人のイトコさんだった

と思い出して笑顔で返したのだった。


「そうなの。

 周辺のオフィススタッフの方々に受けたようで、

 それに丁度ドーナツ注文者は

 もれなくコーヒー一杯無料とかやっているから、余計にって感じです。」

「商売っ気あるように見えるけど、商売っ気ないようにも見える。

 コーヒー一杯無料とか……ここは喫茶店でしょうよ。

 せめて半額とか少額で良いから取ればいいのに。」

「そうそうおじさまから伝言が、

 チェスター君が来たら【コレクションルーム】へ行くようにと。

 鷲谷悦郎さんと言う方がお待ちですって。」

「アイツもう来てんのか。」

「チェスター君のお知り合い、ですよね?」

「そう、ガキの頃からの戦友ダチさ。」


 そう言うと星一朗はセシルにありがとうと言って、

例のコレクションルームへ繋がるドアへ向かった。

気分は巌流島で決着をつけようと約束をした

宮本武蔵と佐々木小次郎の如く、なんて言うのは言い過ぎだろうが、

星一朗はこの勝負が楽しみだった。

星一朗は途中、調理を続ける竜二に挨拶をし他の客に邪魔にならないよう、

そそくさと姿を消したのだった。

店内に残された恵玲奈と泪は、お互いに顔を見合わせる。

言わずとも考えていることは同じだった。


「セシルさん、私達もお手伝いしていいですか?」

「流石にこの客入りで一人は辛いでしょう?

 私達で良ければだけれどね。」

「い、いいの!?

 あたしはすっごい嬉しいけど、

 一応おじさまに確認してくるね、ちょっと待ってて!」


 セシルはぱぁっと表情を明るくし、

バタバタと跳ぶように竜二の元へ確認をしにいった。

恵玲奈は何やら背後に気配を感じとりドアを開けると、

いつの間にか入店を待つ人の列が出来つつ会った。

確かに今はランチタイム真っ直中だが、

場末の喫茶店に列を作るとは、

期間限定とは言え口コミのチカラ恐るべしである。

客足を見る限りでは、

この周辺のオフィス関係者が多くスーツを着た人が多く見られた。


「ヤバイ、外に人が並らび始めてるよ。

 あの様子だとあと二時間は忙しいかも。」

「暇だったからついてきたのが運の尽きね……私も人が良いんだから。」


 接客の仕事について二人は経験者である。

恵玲奈は普段のバイトが本屋であるし、

泪は専門学校のイベント関連で良く接客を引き受けている。

飲食店での経験はないが、接客を行う上でのマナーや基本姿勢は変わらない。


「あははは、それ自分で言っちゃうの?

 あ、セシルさん、どうでした?」

「おじさまは

 ”断る理由はないよ、エプロンはあるから着用して接客お願い!”

 と言ってました。

 バイト代は出すから、お願いしますとむしろ泣きつかれました。」

「あ、あはは、良かったね泪、バイト代出るってさ。」


 泪はニヤリと微笑みながら言葉を返した。


「バイト代は結構よ。

 その代わりお客がはけたら、

 ゆっくりと美味しいと評判のコーヒーと

 その秋限定メニューを注文させてもらうわ。

 もちろん貴女のおじさまのおごりでね♪」

「おじさまには言っておきます。

 じゃあ、早速着替えてもらって接客をお願いしますね。」


 恵玲奈と泪はセシルに案内され従業員控え室へ行き、

ハンガーに掛けられていたバイト用のエプロンドレスを身につけた。

デザインは少々古めかしいが、

ヴィクトリアンメイドを意識したもので

黒基調のロングスカート仕様だった。

装飾は派手なものは一切なく、

せいぜい袖やスカートに縫い付けられたフリルくらいなもの。

仕事着らしく実用に耐えるような素材的な工夫が施されていた。

恵玲奈も泪も髪の色が明るいこともあり、

セシルとはまた違った雰囲気を醸し出していた。


「こんなものがあったとは。

 もしかして竜二さんの趣味?」

「お店の外観は中世欧州風なのだから、

 ある意味で合致しているし、別にいいんじゃないの?」

「まあいっか、シックだけど結構可愛いかも。

 泪はそういうフリルついてるの似合うねぇ。」

「まさかこんなところで、

 エプロンドレスを着ることになるとは……ね。」

「お兄ちゃんがいなくて良かったかも。

 見たら面倒くさい反応されそう。」

「ふふふ、そうね。」


********


「来たな、星一朗。」

「早いな、もっとゆっくりするかと思っていたんだがな。」


 悦郎は【コレクションルーム】の一角で

ゲームソフトを手に取り懐かしんでいた。

彼が見ていたのはプレイステーション及び

セガサターンのソフトが並ぶ領域。

合計で約4500枚のディスクケースは、

しっかりと各々固定されており

ちょっとした地震程度では床に落ちることは無かった。

有名博物館と言っても遜色ない保管状況、

そして目を見張る和洋問わないラインナップ。

何より実機で稼働できる状態の良さが

この【箱庭コレクションルーム】の価値を引き上げている。


「それにしてもここはいつ来ても壮観だな、

 ”シャッツカンマー”と言っても過言ではあるまいよ。」

「なんだそれ?」

「独語で”宝物庫”という意味だ。

 差し詰め、竜二さんはシャッツカンマーの主だな。」

「本人はただのコレクター気分だと思うぜ?

 まあ俺達にとっては宝物で間違いはないが。」

「ははは、違いない。

 当のシャッツカンマーの主は忙しい様子だったから、

 事情だけ説明して部屋だけ開けて貰った。」

「みたいだな。

 恵玲奈と泪がこっち来ないとこを見ると、

 本条さんを手伝っているんだろう。」

「本条さん?

 ああ、あの黒髪の美人のことか。

 竜二さんの姪御さんらしいな。」

「ご存知で。」

「ふ、お前は手伝わなくていいのか?」


 星一朗は自嘲気味に一笑にふして、悦郎のいじわるな質問に答える。


「俺が接客なんて出来るわけないだろう?

 野郎がやるより恵玲奈と泪が店に出ていた方が客も喜ぶだろうさ。

 それに今日は物見遊山の暇人じゃない、戦士として来ている。」

「言うに及ばず。」

「その手のもの、見つけてくれていたか。」

「獲物はこれで間違いないな、一撃の美学を体現した一本。」


 悦郎は手に持っていたディスクを星一朗に見せる。

そのディスクは間違いなく【ブシドーブレード弐】だった。

星一朗はこくりと首を縦に振ると、

ゲームハード領域へ足を向け、丁重に保管されたケースを開ける。

最後に発売された小型化され接続端子を

一部オミットされたプレイステーション本体を取り出し、

大型ディスプレイへ手際よく接続しゲームを起動させた。


「この大画面で見ると、少々ポリゴンは荒く感じるな。」

「ゲームの解像度とディスプレイの解像度がマッチしてないからな、

 だがゲームをやる上での支障は無いぜ。」

「だな。

 ゲームの面白さや楽しさは、各項目のバランス次第だ。」

「言ってくれるな、中学時代はグラフィック至上主義だったくせに。」

「ふ、お前はシステム至上主義だっただろうに。」


 星一朗は【ナイトストーカー】で獲物はロングソード、

悦郎は【源五郎】で獲物は打刀を選択した。

【ナイトストーカー】は忍者風のキャラクターで身のこなしが軽く、

軽量の武器を持たせれば誰よりも早く初撃を叩き込める。

【源五郎】は言うなれば武器を選ばない万能キャラクターで、

打刀の場合は剣速が最速クラスである居合が可能である。

先の先の【ナイトストーカー】と

後の先の【源五郎】、

一撃で勝負が決まるゲームに相応しいチョイスと言えるかもしれない。

ステージは星一朗の選択で竹林、竹の葉が舞う印象に残る場所である。


 画面上では竹藪の中、剣を向ける二人あり。

開始と同時に【源五郎】は居合の構えへ、

星一朗の【ナイトストーカー】はロングソードを構えたまま

一足で踏み込める間合いを計る。

射程の都合で言えば、【源五郎】の打刀はロングソードよりやや勝るが、

構えが居合である以上は意味を成さないだろう。


「お前の狙いは分っている。

 一気に陰早手(踏み込みからのダッシュ切り)だろう。」

「うるせぇ、

 カウンター狙いの疾風陰抜(踏み込みながらの居合)なんて

 見え見えなんだよ!」

「やはりお前との勝負は疲れる、だが故に面白い!」

「その粋や良し、戦友よ!」


 暑苦しい会話を交しながらも互いのコントローラを持つ手は冷静だった。

ジリジリと間合いを計りながら相手の剣の射程を見極めている。

悦郎はカウンター狙いと星一朗は宣言したが、

これはカマを掛けたに過ぎない。

確かに居合はどの攻撃よりも早く剣を出すことが出来るゆえ、

カウンター技としての性能も高い。

しかし剣速が早いと言うことは先の先でも有効と言うことになる。

だがその初撃を防御あるいは躱すことが出来れば、

居合に勝てたも同然と言えるだろう。


「悦郎、知っているか?」

「なんだ突然。」

「今の恵玲奈の胸のサイズは、Cの80だ!」

「な……なんだと!?

 そんなバカなっ!」

「隙アリ!」


 動揺からか一瞬反応が遅れた悦郎の【源五郎】は、

星一朗が操る【ナイトストーカー】の一閃に切り捨てられたのだった。

血飛沫をあげ倒れ伏す【源五郎】を見ながら打ち震える悦郎。

思わず声を挙げる。


「卑怯だぞ、星一朗!

 妹をダシに使うなどと!」

「反応したお前が悪い。

 ちなみにさっき言ったサイズは嘘だ!

 うははははっ!」

「く、デマカセかっ!

 ええぃ次っ!」

「俺はキャラと獲物は一緒でいいぜ、

 さぁかかってこいよ悦郎っ!」


 次なるステージは波が打ち寄せる浜辺。

キャラクター・獲物は先程と同じく、

またもや開始と同時に間合いを詰めながら隙を伺う。

波の音と砂地の踏む足音だけが、その場の空気を支配する。

先程と同じ手は使えない星一朗は、

どうにか悦郎の気を逸らせないか考えを巡らせていた。

しかし先に動いたのは悦郎だった。


「知っているか星一朗。」

「お、動揺を誘うつもりか?

 俺には効かんぞ。」

「まあ聞け。

 本条さんと言ったか、最近、妙な男にまとわりつかれているらしいぞ。 

 美人だからなあり得ない話でもあるまい。」

「嘘だな。」

「さあな、オレは竜二さんと彼女が話しているのを見ただけだ。」

「く、この野郎ポーカーフェイスで淡々と言ってんじゃねぇよ!」

「甘いな、星一朗!

 動揺が画面に出てしまっているぞ、隙アリだ!」


 動揺隠すように先手を打ったはずの【ナイトスーカー】の一撃は

虚空を切り裂き、剣を構え直すより早く

【源五郎】の居合一閃が煌めいた。

腹から血飛沫をあげ倒れ伏す【ナイトストーカー】。

同じ手でやられるとは星一朗もまだまだ青い、と悦郎は思っていた。


「その話、本当なのか!?」

「竜二さんと彼女が話していたのは事実だが、

 妙な男の話かどうかは知らん。

 何せその話をオレは聞いていないからな。」

「なに!?

 だってさっき話を……。」

「オレは聞いたなんて言っていないぞ、見たとは言ったがな。」

「ぐぬぬぬぬぬっ!」


 これから一時間、同じようなやり取りを繰り返し勝負は五分。

当初の目的であった【ブシドーブレード弐】での決着が

見込めないと判断した二人は次なる舞台を捜し、

ゲームソフトを探しに行った。

次なるステージの為に。



続く!

ゲームソフトの選定は作者個人の独断とプレイ経験で決定しています。

一部偏ってしまう事もありますが、何卒ご了承ください。

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