表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔性の焔  作者: あけぷぅ
1/14

魔性の焔 1

 この話は暴力表現が含まれます。文才が無いので過激かわかりませんがご注意ください。苦手な方はお勧めしません。ご都合主義です。苦手な方はご注意ください。

 この男は何を言っているのだろう。サエは自分の顔から血の気が引いていくのが分った。狼狽える唇からは思考に反した言葉が出る。

「今、何とおっしゃったのですか」

 聞かずとも、分っている。聞かずとも、この男が何を言ったか分っている。

「サエ、お前は私のところへ嫁ぐことと決まった」

なんと、愚かな。この村が、この村の娘の誰しもが絶望している中、私だけが生き残れと、この男は言っているのか。

「今年の贄は私だと、決まっているはずではありませんか!!」

「今年はトジの娘が行く」

「何を馬鹿なことを!!彼女は隣村に嫁ぐと決まっているではありませんか!!そうでなくとも、この村の娘は速く外へと出さねばいけないというのに!!なぜ!!」

「もう決まったことだ」

 冷ややかに、けれどこの男の言葉に高慢さと優越を滲ませた色が浮かんでいた。

「納得できません」

「決まったことだ」

 サエはこの男の利己に絶望を覚え、顔を覆う。そんなサエに男は欲望のまま腕を伸ばす。が、外から声がかかり腕が宙で止まる。

「何だ」

「トジが出て行きました」

「一々報告に来るな、捕らえろ」

 男の横を、サエは足早に通り過ぎ、部屋を出ると全力で走り出した。

「さえ!!まて!!」

 顔は悪くないが高慢で不遜で、好いてもいない男の言い成りに誰がなるものか。サエは怒りのまま森の社の奥へと駆け込んだ。ここなら誰も来ない、誰も知らない。贄送りの日までここで過ごし、途中でカノエと入れ替わればいいことだ。

 唇から血が零れ落ちても気付かずに、怒りのまま噛み締める。自分以外の者が贄になるなんて、許しはしない。今のサエを見た者は恐らく誰もが口をそろえて言うだろう。


 鬼女だと。




黄昏刻が来る前に、大きい木々に囲われた道はどこよりも早く薄暗くなっていく。カイは整備の行き届いていない道を馬に乗りながら、この馬をどう処分するかを考えていた。

 村を捨てるときに一頭連れてきてしまった馬は、暫く足に使っていたが、どうやら馬があるだけで裕福と見られるのだろう。立ち寄る村々で、馬目当てに襲われたり、勘違いを起こして村に引き止めようとしたりと、おちおち休んでもいられない。

 都から東へ、随分長いこと下ったが未だ地の果てまで着きやしない。今日は野宿がいいかと考えていると、複数の悲鳴が近くで上がり、馬の足を止めた。と直ぐに、初老の男と歳若い娘が飛び出してきた。カイは嫌な予感が走り顔をしかめる。

 だが、彼らはカイに気付かず、追ってきた男達に押さえ込まれてしまった。カイはさらに顔を歪めるハメになる。男達は抵抗もできない二人を殴り、蹴り、それは執拗な行いだった。

「おい」

近くに人がいたのをようやく気がついたのか、一瞬だけ暴力が止まる。

「村の掟を破ったのか」

カイの質問に驚いて男達が戸惑う。

「それなら俺は口出しできねぇが、人のいない所でやれよ、胸糞悪りぃな」

群がっていた男達は、動かなくなる。正しくは本当に動けなかったのだろう。

「た、……大変失礼した。……この者たちは確かに、掟を破ったが」

くっと、カイは喉を鳴らす。

「随分、口の綺麗なことだ。お前らの村はでかいのか?」

「……ええ、この付近では一番に」

「じゃぁ丁度いい。この馬を買ってくれ。詫びるつもりがあるなら、言い値で買えよ」

 二人に対しての暴力が止まり、逃げないようにと頑丈な縄で身体を縛られていく。

 カイは馬を降り、男達の後ろから着いていく。罪人の横を通り過ぎるとき、ご愁傷様と呟けば、男も女もむせび泣いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ