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最近忙しくて、久々の投稿です。
もう少しこまめに上げて行きたいですw
それから一週間後、2人は結婚式をあげた。
身内だけの小さな式だ。公爵家にはいささか、ささやかすぎる事にシエラの身分が影響していることは言うまでもない。
それにしても、ハルミオンが望んでいたのは本当に、形だけのお飾りの妻だったらしい。
「旦那様、昨夜もお帰りにならなかったのですね!ひどいですわ!!」
わかりやすくプンプンしているのは、シエラの侍女となったエリーだ。
2つ年下の彼女にシエラは随分と懐かれたようで、今日もシエラの味方をしてくれる。
ハルミオンとは、式から1週間がたったものの、あまり会話らしい会話をしていない。
それどころか、仕事がると言って、夜も殆ど帰ってこない。
「そうね…。でも、仕方ないのよ」
契約だもの。そう言って微笑むシエラは、同性のエリーから見ても可愛い。それなのに…
「…旦那様の女嫌いも相当ですわね」
「え?」
呆れたようにため息をついたエリーに、シエラは思わず声を漏らす。
『愛情を期待するな』というのは、何か人に言えない恋でもしているのかと勝手に想像していた。相手が既婚者だとか。
もしくは、結婚後も遊びたくて束縛されたくないとか。
それを述べると、エリーはまさか、と笑った。
「相当な女嫌いですよ。この屋敷には女性の使用人は、数える程しかいません。それも年輩の方々ばかりです。私は、母も使用人として働いていますし、ちょっと例外なんです」
確かに、女性の使用人はあまり見かけない。形ばかりの夫婦ではあるが、こうも避けられていると少し気になる。
母も古参の使用人であるエリーは屋敷のことには詳しいらしい。
「私も聞いた話なのですが…」
誰も聞いていないとわかっていながらも自然とエリーは、声を潜めて話し始める。
「旦那様のご両親が、既に亡くなられているのはご存知ですよね?」
「ええ、知ってるわ」
ハルミオンが小さい頃に母親が病で亡くなり、父親も数年前に病で亡くなったと聞いていた。墓も王都の外にあるため、挨拶もよい、と。
「奥様…旦那様のお母様は、実はまだ生きておられます」
「!?」
「おそらくですけれど」
「どういうことなの?」
「それがですね…」
要するに、こういう事らしい。
ハルミオンが8歳の頃、母親はいわゆる愛人と共に駆け落ちしたのだという。ハルミオンの母親は、現王妃の妹ということもあり、前公爵であったハルミオンの父親と国王が外聞をはばかって、病死としたのだという。
「この屋敷では暗黙の了解ですけどね、旦那様のお母様の事は」
「駆け落ち…」
シエラは眉をひそめる。
「ええ、何でも奔放な方だったらしく、旦那様の女嫌いも、多感な時期に母親に裏切られたということが、大きいみたいです。最も、旦那様の場合、それだけでは無いでしょうけれど」
「どういうこと?」
「あの御容姿で公爵様ですし、女性がそれはたくさんい寄ってきます。社交界デビューが14歳の時ですし、トラウマになってもおかしくないですわ」
…貴族の女性にはあったこと無いが、わかる気がする。花園にも様々な人がいた。 容姿や家柄が全てだと言い、目的を達成するためには何をしても構わない。そんな人が、貴族の中にもいるのだろう。
そう言うタイプは、シエラも苦手だった。
今思えば、『愛を期待するな』そう告げたハルミオンの瞳は、少々揺れていた気がする。ただ冷たいだけの人間では無いのだろうか。