表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/95

22.リクドーコレクション

「いやあ、まさか雷電かかってると思わへんかったから、ビリビリしびれてびっくりしたわ」


腰に手を当てて、極楽鳥はへらっと笑った。


「驚かせて申し訳ない。僕はソルト……だけど、皆、佐藤と呼んでいる」


砂糖さんは虎徹から降りると、ぽてぽてと極楽鳥に近づいた。


「で、ヤクシャはカイ。水色の髪のリョースがフォールンエンジェルセイマキョー君こと、伊達君で、シルクハットの彼がオクト君だ」


こちらを振り返りながら砂糖さんは、一人ずつ名前をあげていく。


「丁寧にどうもー。もう分かってる思うけど、俺はロクや。よろしく」


羽のついた帽子を手に取ると、ロクは方足を引いて恭しく頭を下げた。

言動の一つ一つがどうにも芝居がかっていて嫌みったらしい。

けれど、同じ苦境に立たされた、何人いるかも分からない仲間なのだ。仲良くやっていかなくては。

挨拶に行くために虎徹から降りようとすると、肩をぐっと掴まれた。


「どうも気に食わない。気をつけて」


そっと耳に吹き込まれた言葉に、私はちらっと背後に視線をやった。

カイは眉を寄せて、極楽鳥ことロクを睨みつけていた。

刀を弾いたことをまだ気にしているのだろうか。

でも、私だって蝙蝠傘を投げてノスフェラトゥに命中させることが出来たんだし、服装の趣味はともかく、強そうなコアトールカなる騎獣に乗れるほどのレベルの人なら、やろうと思えば出来るんじゃないのだろうか。何事もなせば成るものだ。


「まあまあ、貴重な仲間じゃない」


 ぽんぽんと腕を叩くと、カイはむっとする。

 分かっている。私がレベル1の裸族のラッキーボーイだから、心配しているのだということぐらい。


「ちゃんと気をつけるから」


 そう言葉を付け足すと、ようやく納得したらしいカイは、アイギスを解除して自身も虎徹から降りた。

 ロクの方へと歩き出せば、刀が飛んでいった方向に時折目をやりながら、伊達も後をついてくる。


「カイです」


 ロクの前に来ると、私を隠すようにして、さっと一歩前へ出たカイが、会釈程度に頭を下げた。


「えーと、色々あって伊達になりました。よろしくお願いします」


 いったん刀への未練を振り切った伊達が、ぺこりと挨拶をする。


「オクトです。レベル1の新参者です。よろしくお願いします」


 ささっと、カイの背後から体を横に滑らして、ロクに笑顔を向ける。

 最初が肝心だ。


「ああー、よろしくー」

「はいはい。よろしくなあ」


 等と、カイと伊達の挨拶にへらへらと答えていたロクは私を見るなり、目を見開いた。


「あんた………」


 うん、もう、分かってますから。だから何も言わないで!


「はは、えーと、成り行きでこんな格好してますが、断じて私の趣味では……」


 私は体を隠すように蝙蝠傘を広げながら、視線を落として言い訳を始める。

 その落とした視界にロクの派手な羽飾りがふわりと入り込んだ。

 地面すれすれの位置をふわふわと揺れる羽に、え? と思って顔を向ければ、ロクは膝と手をついて四つんばいになってうな垂れていた。


「なんて、ことや………俺はまちがっとったんか……。派手にするばっかりで、基本を見落とし取ったわ。くそっ、俺の負けや!」


 ロクはがばっと頭をあげて立ち上がると、食い入るように私を見つめた。


「オクト言うたな。あんたのセンスには脱帽したわ。俺の完敗や! けどな、次は負けへんからな!」


 ぎらぎらと光る挑発的な目でロクは私にびしいっと指を突きつけた。

 何言っちゃってるんだ、この人。


「いや、どっちかってーと、負けたいんで……、つか、次があったらかなり嫌かなーなんて……」


 一歩、体を引けば、ロクはずずいっと二歩進んで距離を詰める。


「なんや逃げるきか? 今から弱腰でどうすんねん。あ? それともあれか? 俺やったら勝負にならへんって、言いたいんか?」


 えーと、どうしよう? と隣に立つカイに視線で伺う。

 と、ふいっと目をそらされた。

 あ、逃げやがったな、このやろう。

 そんな私たちのアイコンタクト中にもぐいぐいと詰め寄ってくるロクに、私はふるふると胸の前で手を振ってみせた。


「そんな、滅相もない。私なんて黒一色で纏めただけですから。ロクさんの素晴らしい原色使いにはとても及びません、ええ本当に、全く及ぶ気がしません………その素晴らしい配色のマントはリバーシブルですか?」


 つっと真紅と紫の痛々しいマントを指差せば、ロクはぱあっと満面の笑みを浮かべた。


「おっ、あんた分かるんか。この色のバランス。なんや、兄ちゃん、ええ奴やん。悪かったなあ、絡んで。よろしくなあ」


 今泣いた烏がもう笑う。子供のように、ころっと態度を変えたロクは、蝙蝠傘を持った私の手を掴んでぶんぶんとふった。

 なんかもう色々とついていけない………

 カイの言うとおり、確かに気をつけたほうがいいのかもしれないと、恐らくカイとは全く違う意味で思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ