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第五十八話:猛将の復帰と、王との謁見

 カイトへの「陣中見舞い」から帰宅したグランヴィル侯爵邸。オズワルドの瞳には、かつての隠居生活にはなかった、鋭くも活力に満ちた光が宿っていた。

「……カイトの奴、目立ちすぎだなどと困り顔をしておったが、あやつの才をこのまま腐らせておくのは国家の損失だ。それに、儂もただの老人として甘えてばかりでは示しがつかん」

「ええ。カイトさんの素晴らしさを、もっと皆様に知っていただくべきですわ。……ふふ、まずは王都の空気を少し動かしましょうか」

 マリーの言葉に頷き、オズワルドは即座に登城を決意した。


 王宮の謁見の間。玉座に座るのは、この国の統治者、アルフレッド・ゼ・リスタニア国王。彼は五年ぶりに現れた老臣の姿に、驚きを隠せなかった。

「久しいな、オズワルド。いつ以来だ?」

「……五年前の新年の挨拶以来かと存じます、陛下」

「膝を悪くしていたと聞いていたが……その足取り、病み上がりとはとても思えんぞ」

 オズワルドは不敵に笑い、一歩深く踏み込む。ドォン! という重低音が石畳に響き渡り、細かなひび割れが走った。

「おお……凄まじいな。一体どんな魔法を使ったのだ?」

「魔法ではございません、陛下。優れた治療師を見つけましてな。お陰で儂の膝も、マリー腰も、長年の痛みから解放され……今では少女のように跳ね回っております」

「あの方もか……。それは結構。で、猛将が王宮に現れたということは、隠居を止める気になったのか?」

 オズワルドは姿勢を正し、王を見据えた。

「はい。アカデミーの剣術指南を拝命したく存じます。病明けの体慣らしにはちょうど良いかと」

「……あそこには我が第一王子も通っておる。貴殿が指南に就くなら、これほど心強いことはない。許可しよう。側近に手配させよ」


 話を終え、立ち去ろうとするオズワルドに王が声をかける。

「……オズワルド。その治療師は、それほどの腕なのか?」

「推測ですが、人体の理を極めておりますな。迷いなく、的確に『歪み』を正してくれます」

「……ならば頼みがある。我が母、王太后も腰を痛めて久しい。その治療師を連れてくることは可能か?」

 オズワルドは一瞬眉を動かす。カイトを静かにさせておきたかったが、王室との縁を結ぶ好機でもあった。

「……畏まりました、陛下。必ずや、その治療師を連れて参りましょう」


 屋敷に戻ったオズワルドは、出迎えたマリーに事の顛末を話した。

「カイトには少し悪いが……これで卒業後、儂以上の後ろ盾を得ることになるだろう。王太后の腰を治せば、国王陛下もカイトを無下にはできん」

「さすがはあなた。愛のムチ、というわけですわね」

 マリーは楽しげに微笑んだ。自分たちの孫が、その腕一本で国の中枢へ駆け上がる未来を思い描いて。

 その頃、学園の寮で紅茶を淹れていたカイトは、不意に背筋に走った冷気に首を傾げる。

「……何か、嫌な予感がする」

「どうしましたの? カイト。私の顔に何かついてます?」

「いえ……クラリス。ただ、これから少し忙しくなるような気がするだけ」

 カイトの知らぬところで、彼の「最強の従者」としての運命は、さらなる巨大なうねりへ巻き込まれようとしていた。


「……オズワルドはんの孫愛はすごいけど、マリーはんの愛もおそろしいわ……」

 屋敷の天井裏からのぞくランバが呟いていた。

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