表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/119

第五十二話:銀狼のメイドと、揺れる主従の絆

 「婚約の予約」を済ませ、甘い日常が加速するかと思われたカイトとクラリス。しかし、そこに立ちはだかったのは、人型を覚えたルーヴ――完璧な刺客だった。

 ある朝、クラリスが目を覚ますと、リビングから香ばしい紅茶の香りが漂ってきた。

「あら、カイト。今日は早いですのね……って、ええっ!?」

 そこにいたのはカイトではなかった。

 銀髪を完璧なシニヨンにまとめ、黒と白のコントラストが美しいメイド服に身を包んだ人型ルーヴだ。

 彼女は無駄のない動きで朝食を整え、カイトの横で優雅に立っている。

「おはようございます、クラリス様。主の目覚めに合わせて、最適な温度で茶を淹れました」

 ルーヴの姿は驚くべきものだった。

 顔立ちは絶世のクールビューティー。そして特徴的なのは「手」だ。肘から先だけが白銀の毛に覆われた狼の手でありながら、薄い磁器のカップを羽毛のように軽く、精密に扱っている。

「……ルーヴ、なぜメイド服を?」

カイトの負担を減らすためだ。我は主の影であり、矛であり、これからは『盾としての給仕』も担う」

 カイトが朝食を運びながら少し困ったように付け加える。

「……教えたら、一晩で完璧にマスターしちゃいまして。そこらのプロの侍女より手際いいんですよ」

 その言葉に、クラリスの心に激しいアラートが鳴る。

 ルーヴの献身は止まらない。学園への移動中も、彼女はカイトの半歩後ろを歩き、完璧な所作でクラリスの荷物を持つ。

 廊下を通るだけで生徒たちが足を止め、ため息を漏らすほどだった。

「見て、あのメスチノ家の新しいメイド……なんて美しいのかしら」

「カイト様とお似合いだわ、まるでおとぎ話の従者コンビね」


 放課後、自室に戻ったクラリスはカイトに詰め寄る。

「なんですの! あの完璧なメイドっぷりは! 廊下での噂、聞きましたわよ!? 『お似合いの二人』ですって!? カイトの隣は、私の定位置ですわ!」

 モルフォーラが彼女の髪で激しく羽ばたき、緊張を強調する。

「……クラリス、落ち着いて。彼女はただ、俺を助けようとしてるだけだ……」

「それが困りますの! そんな完璧な美人が隣にいたら、私の影が薄くなっちゃう! 私だって、カイトのために何かしたいんだから!」

 悔しさと焦燥で顔を赤くするクラリス。背後でルーヴは狼の手で器用にリンゴの皮を剥きながら、銀色の瞳を細める。

「……クラリス様。主の隣に立つには、相応の『能力』が必要だ。今の貴女に、何ができる?」

「なっ……! せ、宣戦布告ですのね!?」

 カイトは二人の火花を横目に、天井裏からランバが投げ寄せた「旦さん、修羅場やな」というメモを無言で握りつぶすのだっ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ