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閑話:侯爵夫妻のささやき

 オズワルドとマリーは、広間の椅子に腰掛け、窓の外の庭を眺めていた。

「……まさか、あの子が本当に我々の孫だったとはな」

「ええ、十字の痣を見たときは驚きましたわ。でも、ここまで落ち着いて堂々としているとは……」

 マリーは苦笑しながら言った。

「それにしても、あの子、いきなり現れた孫とは思えないくらい落ち着いてますね。昔の私たちとは大違い」

「昔の私たちって……それは余計じゃないか、マリー」

「余計じゃありませんわ。オズワルドも、若い頃は庭で転んでばかりでしたものね?」

 オズワルドは苦笑し、杖を軽くつきながら答えた。

「……そうだな。あの頃の私は、転ぶだけで城中の騒ぎになったものだ」

「転ぶだけで騒ぎになるなんて、何だかほほえましいですわね」

「ほほえましい……か? いや、今思えば、ただのドジだったのだが」

 しばし沈黙が流れ、オズワルドがぽつりと口を開いた。

「……カイトに言われたように、庭の散歩でもするか?」

「そうですね。あなたの手で、立たせてもらえますか?」

 二人はゆっくり立ち上がり、手を取り合って庭に出る。

 秋の陽光が柔らかく差し込み、落ち葉が風に舞う。互いの足元に気を配りながら歩く時間は、孫のことを考える静かなひとときだった。

「……あの子の瞳には確かな決意がある。守る価値があるのだろう」

「ええ。今日の庭の穏やかさを楽しむこと。それが、今の私たちにできる最良のことですわ」

 オズワルドが小さく笑った。

「しかし、カイトがあの従者としての生活を選ぶとはな……まるで我々の血筋を忘れているようだ」

「忘れてはいませんわ。むしろ、家族としての重さよりも、自分の選んだ日常を大事にしているのでしょうね」

 庭の香りと光に包まれ、オズワルドとマリーは、孫が屋敷で過ごす日々を想いながら、ただ静かに時間を愛でた。


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