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閑話:ガリアント子爵の街

 事件が終わり、街に再び日常の気配が戻る頃。

 ジークムント伯爵は、手を頬に当て、少し項垂れていた。

「こんなはずじゃなかったんだがなぁ……。メスチノほどじゃないにしろ、この街はもう少し栄えていたはずだった。クラリスにはいつもとは違う街で楽しんでもらおうと思っていたのに……」

 それを聞いたクラリスは、軽やかに近寄り、伯爵の頬にそっとキスを落とす。

「お父様、私のためにありがとうございました」

 予想外の行動に、ジークムントは目を丸くしてテンションが上がる。

「お前……おおっ、クラリス!」

 クラリスは笑みを浮かべ、キラリと目を輝かせた。

「この旅のおかげで、カイトのグレートウルフをモフれましたし、私は満足です」

 伯爵は肩を落とす。

「……そこはカイトが出てくるのか……」


 少し間を置き、ふと父が口を低くする。

「で、先の話、もしカイトがいいといったら、どうするのだ?」

 クラリスは視線をそらさず、真っ直ぐに答える。

「それはカイトが受け入れたら考えます」

 ジークムントは微かに笑みを浮かべ、納得したように頷く。

「その様子では、嫌ではないようだな」

「はい、嫌ではありません」

 伯爵は少し照れくさそうに肩をすくめる。

「儂が勝手に言ったこと、気にはしていたのだ」

「私は貴族の娘。家のために嫁ぐのは当たり前なのは覚悟していますわ。嫌じゃない男の話が出るだけ、むしろ幸運だと思います」

 それを聞いたジークムントは、少し目を潤ませ、微笑んだ。

「そうか……。お前も大人になっているのだな」

 クラリスは、軽く笑いながら、視線を遠くの街並みに向ける。

「いつまでも子供ではいられませんから」

 父と娘。静かな夜風の中で交わされた言葉は、事件の余韻と共に、二人の心にしっかりと刻まれていた。


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