現実は甘くない!?冒険はギルドと共に!
はじめまして、浜坂です!
今回からは、いよいよ冒険者ギルドに到着し、二人は冒険者への一歩を踏み出します。
しかし!
冒険者への道は、そう簡単ではないようで……
「これから、どこ行こっか? 雄大君」
さも当然のように、俺の隣を歩く優花。
――聖剣を、ずるずると地面に引きずりながら。
……いや、まずそれを何とかしようか。
通行人の視線が、ちらちら刺さる。
大丈夫か?
俺まで変な奴認定されてないよな……?
正直、距離を置きたい。
でも――異世界で一人ぼっちは、さすがに心細い。
「……とりあえず、異世界系作品の定番。冒険者ギルドに行こう。情報も集まるだろ。」
俺がそう言うと、優花はぱっと顔を輝かせた。
「うん!私、雄大君となら、どこまでもついていくね!」
そう言って、俺の腕にぎゅっと抱きついてくる。
やわらかい――
いや、いかん。騙されるな、俺。
「……で。その冒険者ギルドって、どこにあるんだ?」
「え?」
優花はきょとんと目を瞬かせ、やがて、ゆっくり首を振った。
「ううん……分からない」
そして次の瞬間、みるみる表情が曇っていく。
「ごめんね……私、雄大君の役に立てなくて。こんなの、彼女失格だよね……」
目が虚ろだ。
今にも消えそうな顔である。
重い。
しかも彼女じゃないし。
とはいえ、俺には見知らぬ人に話しかける勇気なんてない。
どうする……?
――その時、ひらめいた。
「なあ、優花。俺の役に立ちたいならさ、冒険者ギルドの場所を誰かに聞いてきてくれないか?」
「……!」
空気が、一瞬で切り替わった。
「うん!分かった!私、頑張るね!」
さっきまでの沈みっぷりが嘘みたいだ。
優花は満面の笑みで、街の中へ走っていった。
……数分後。
「雄大君!ちゃんと聞いてきたよ!
それとね、地図も貰ってきた!
この街、ノースタウンって名前なんだって!」
誇らしげに差し出される、一枚の紙切れ。
「……すごいな。優花。よくやった」
そう褒めると、彼女はさらに胸を張った。
この子……
意外と優秀なんじゃないか?
いや、俺が無能なだけか。
……まあいい。
生き残れれば、それで勝ちだしな。
◆
冒険者ギルド――異世界転生モノで、多くの主人公たちが最初にお世話になる場所。
誰でも登録でき、仕事や支援を提供してくれる拠点だ。
もちろん、俺たちも例外じゃない。
「こ、怖い……荒くれ者ばっかりだったら、どうしよう……」
ギルドの建物を前にして、足がガタガタ震える。
いや、ここでへこたれてどうする。
異世界生活は始まったばかりだ。
「安心して、雄大くん。変な奴が出てきたら、私がやっちゃうから!」
優花が鋭い目つきで、周囲を睨みつける。
……頼もしい。
いや待て、やっちゃうって何をだ。
別の意味で震えてきたんだが。
俺、これ“保護者”役しないと、下手したら共犯者コースじゃないか?
「……よし。行くぞ」
覚悟を決め、俺はギルドの扉を押し開いた。
◆
「こんにちは!ご新規さんですよね?
受付でしたら、正面の窓口へどうぞ」
中に入った瞬間、金髪ポニーテールのお姉さんが、明るい笑顔で迎えてくれる。
……可愛――
ヒッ。
背後から、ドス黒いオーラを感じた。
「雄大くん、どうしたのかな?」
振り返ると、優花がにこにこ笑っている。
――目は、まったく笑っていない。
「な、なんでもないよ」
一呼吸置き、俺は周囲を見渡した。
思っていたより、ギルド内は整っている。
鎧を着た男、ローブ姿の魔法使い風の女性……
見た感じ、悪人ばかりというわけでもなさそうだ。
……あれ?
なんだか、視線が集まっている気がする。
理由はすぐに分かった。
「ふふ、私たち人気者だね!もしかして、雄大くんの凄い人オーラが溢れ出してるのかも!」
そんなことを言いながら、誇らしげに胸を張る隣の黒髪美少女。
――そりゃ見るだろ。
金色に輝く剣を引きずった美少女がいれば、誰だって二度見する。
とりあえず、視線は無視だ。
これ以上、余計なことが起きる前に――
俺は足早に、受付窓口へと向かった。
◆
「ようこそ、冒険者ギルドへ。
今日はどのようなご用件でしょうか?」
受付のお姉さんは、知的で洗練された雰囲気を漂わせていた。
肩までのボブカットが整えられ、どこか落ち着いた美しさが際立っている。
――隣から、強烈な視線を感じる。
無視、無視。
「えっと、冒険者になりたいんですが、遠くの街から来たばかりで、何も分からなくて……」
アニメやラノベで予習済み。
こう言えば、大抵はスムーズにいくはずだ。
あとは、お姉さんの指示に従うだけ――
「では、登録手続きを始める前に、ひとつ確認させていただきますが……」
「え?……はい。」
受付のお姉さんの表情が、突然凍りついた。
鋭い視線が俺を射抜く。
「床が……」
「え?床?」
俺が驚きながら返すと、彼女は無表情のまま続ける。
「どうしたら、そんなに床をボロボロにできるんですか!?修理費をお支払いください!!」
床を見ると、優花の聖剣が引きずった跡で、
酷く傷ついていた。
うん……これは言われても仕方ない。
「ほら、優花。ちゃんと払えよ。」
ちらりと横を見ると、優花は無邪気な顔をして、
目を丸くしていた。
「え?……私のせい?」
「お前以外、誰がいるんだああああ!!」
俺の声がギルド内に響き渡る。
受付のお姉さんは冷静に言葉を続ける。
「それでは、修理費をお支払いいただけますか?」
冷徹な視線が、さらに鋭くなる。
「あ、彼氏さん?も、監督不届きのため、合わせてお支払いください。」
「俺、関係ねぇだろおおお!!」
思わず叫ぶが、優花の方を見ると申し訳なさそうな顔をしていた。
まあ、確かに「ギルド行こう」って言ったのは俺だけどさ。
「てか……俺たち、金ないんですけど。」
「えと……それは困りましたね。」
受付のお姉さんは苦笑いを浮かべながら言った。
「あ、雄大くん。この剣、売っちゃおうか?絶対お金になるよ!」
「いや、優花。自分が何言ってるのか、分かってるのか?仮にも女神様から貰ったものだぞ!」
声をひそめ、周囲に聞こえないように優花に呟く。
「ごめん……そうだよね。」
一気に、ギルド内の空気が重くなる。
「うーん……どうしたものか。」
その時――
◆
「おい……その剣、まさか――」
低く、驚愕を含んだ声。
振り向くと、傷だらけの鎧を着たベテラン風の男性冒険者が、優花の手にある金色の剣を指さしていた。
「嘘だろ……」
「勇者……?いや、まさか……!」
ざわり、と空気が揺れる。
次の瞬間、周囲の冒険者たちの視線が、
一斉に優花へと集中した。
「え、えっと……」
優花は一瞬戸惑った後――
「……はい! 勇者です!」
なぜか照れながら、しかし堂々と胸を張る。
……は?
気づけば、優花の周囲には人だかりができていた。
俺だけが、見事なまでに蚊帳の外。
いや、待て。
その子、聖剣を引きずって歩く“自称”勇者なんですが。
ガリガリ……と、床を削る嫌な音が響いているのに、もう誰も気にしていない。
お前ら、床の傷が目に入らないのか!?
節穴すぎない!?
◆
「……まさか、勇者様だったとは!」
受付のお姉さんの態度が一瞬で変わった。
先程までの冷徹な表情が消え、今は見蕩れるような笑顔に変わっていた。
「それなら話は別です。今回の件は、無かったことにさせていただきますね!それほど強力な武器をお持ちとは……流石、勇者様ですね。」
「……なっ!」
優花が“自称”勇者?
いや、違うな。
彼女は正真正銘、勇者だ!
「女神様、仏様、そして――優花様!!」
俺は迷いなく頭を下げた。
さっきまでのツッコミや疑念は、全て記憶から抹消だ。
「ちょ、ちょっと雄大くん!顔上げてってば!」
慌てる優花。
だが、口元は完全に緩んでいる。
「あれ?元はと言えば優花が――」
「すみません」
受付のお姉さんが、にこやかなまま続ける。
「彼氏……さん?の分は、別費用になりますので。」
「……は?」
「ご自身で、お支払いくださいね?」
あ、これダメなやつだ。
「何で俺は、いつもこうなんだああああ!!」
こうして、俺は異世界ライフに過度な期待をしないことを、心に誓ったのだった。
読んでいただき、ありがとうございます!
冒険者ギルドに着いても、雄大の波乱はまだまだ続きそうですね。
次回もお楽しみに!




