真説 竹取物語 第零章
昔、昔、とある宇宙に…。
キミにも見える
夜空にキラキラ輝く
あの星たちのどこかに
キミの住むこの地球に
ソックリな惑星がありました。
その星には
カグヤという名前の
心の優しい
美しい少女が住んでいました。
彼女の髪と瞳の色は
ブラックホールのように黒く
白色矮星のように
真っ白な肌をしていました。
カグヤは両親と一緒に
幸せに暮らしていました。
お父様は天文学者。
お母様は歴史を教える先生でした。
カグヤは一人っ子でした。
彼女はキラキラ輝く
夜空の星を見ることが
大好きでした。
あのたくさんの星の中に
私たちの星に
ソックリな星もきっとあるはず。
そしてそこには
私たちにソックリな
ヒトたちがが居るはずよ。
そしてそこからも
私たちのことを
きっと見ているはず。
キラキラ光る星を見上げて
彼女はそんな事をよく考えて
いつもワクワクしていました。
夜空に輝く星の中でも
彼女の一番のお気に入りは
キラキラ青く光る
ガイアという星でした。
カグヤが、13才になったある日のこと。
夕食後にいつものように
望遠鏡でガイアを眺めていると
キラキラ輝くナニかが
強いピンクの光を放ちながら
コチラに向かって
落ちて来るのが見えました。
彼女がずっと望遠鏡で
光を追いかけて見ていると
それは彼女の家の
裏山に落ちたようでした。
翌朝彼女が
裏山の様子を見に行くと
そこに流れている
川のせせらぎの上流から
大きなピンク色の
まあるいカプセルが
ドンブラコ、ドンブラコと
流れて来ました。
それは彼女の目の前の
岸に流れ着いたので
彼女は思わず近付いて
触ってみました。
するとピンクのカプセルは
まるで桃のように
真ん中から半分に割れて
中からハダカん坊の
10才くらいの男の子が現れました。
男の子は自分のことを
モモタロウです
と自己紹介しました。
そして
ボクは鬼退治に来ました。
鬼はどこにいますか?
とカグヤに尋ねました。
カグヤは彼に
答えました。
ごめんなさい。
この星に鬼はもう居ないのよ。
それはどうして?
とモモタロウが尋ねました。
何故なら
このワタシが
全て倒してしまったから。
そうカグヤは
正直に答えました。
じゃあキミが
今はこの星で
最強なんだね?
とモモタロウが尋ねました。
どうやら
そのようね。
とカグヤは答えました。
じゃあ
ボクと勝負して下さい。
とモモタロウが言いました。
いいですよ。
でも…。
でも…何ですが?
とモモタロウが尋ねました。
まず服を着て下さい。
とカグヤは
頬を赤らめて言いました。
ああ、これは失礼。
そう言って
モモタロウは
カプセルの中に仕舞ってあった
ズボンを履いて
シャツを着ました。
そしてその後すぐに
砂利だらけの河川敷で
二人は対決のために
向き合いました。
カグヤの家には
家族の決まりが有りました。
それは相手が誰であっても
勝負を申し込まれたら
必ず受ける
というモノでした。
そして勝負が済んだら
勝ち負けに関係無く
その相手とお友だちになる
というモノでした。
それからソレが
もしも異性だった場合は
必ずお付き合いして
最後は二人で幸せに
暮らしなさい
とも言われていました。
それは昔、昔から
彼女の家に伝わる
とても古い書物
シュウカンショウネン◯ャンプに
描かれている
厳しい掟でした。
カグヤはずっと
新しい友だちが欲しかったので
喜んでこの勝負を受けました。
今回は手加減して
上手に戦わなくっちゃ。
彼女はそう思いました。
しばらく友だちが居なくて
寂しかったもの。
だって前回の
キンタロウさんの時は
私がうっかり
チカラを入れ過ぎて
息の根を止めてしまったから。
キンタロウさんたら
今までにどんな野獣と戦っても
負けたことがない
なんて言うんだもの。
ついつい本気を出してしまった。
それでせっかくの
友だち作りのチャンスが
台無しになってしまったもの…。
では、参ります!
モモタロウは礼儀正しく
そう言って
カグヤに挑みかかって来ました。
三分後
そこに立っているのは
カグヤだけでした。
全身キズだらけのモモタロウは
砂利の上に
仰向けになって倒れていました。
もしもしモモタロウさん
まだやりますか?
カグヤはそう尋ねたけれど
彼の返事は無かったのです。
ああ、またやってしまったわ。
カグヤは涙を流しながら
モモタロウを
砂利の下に埋めてあげました。
彼女がふと振り返ると
そこら中に
今までの対決相手を埋めた跡が
何百という数になっているのでした。
ああ神様
どうか次は
もっと強い友だち候補が
やって来ますように!
そう願うカグヤなのでした。
それとも
もうこの広い宇宙には
私より強い
殿方は居ないのかしら
もしもそうなら
カラダを使って
直接戦うのを止めて
ナニか別の方法
例えば頭脳戦で
勝負することも
選択肢に入れておかなくっちゃ。
そう反省するカグヤなのでした。
そんな毎日を過ごしていたある日
17才になったカグヤは
両親に呼ばれました。
もうすぐ空から
大きな隕石が降ってくる。
お前だけでも逃げなさい。
とお父様が言いました。
脱出用のカプセルが
屋上に一つだけあるの。
その中で
カラダの成長を退行させれば
どんなに遠くの星にも
たどりつけるのよ。
とお母様が言いました。
ごめんなさい。
寂しい思いをさせるわね。
お母様は重ねて言いました。
カグヤは
そんな優しい両親に
名残り惜しい
気持ちを持ちながらも
たった一人で
キラキラ黄緑色に輝く
細長い脱出用カプセルに
乗り込んで
お空に青く輝く
ガイアを目指して
出発しました。
…この話の続きが知りたいキミは
近くの図書館か本屋に
行くと良いでしょう。
その後のカグヤの人生を知ることが
きっとできるから。
ちなみに
彼女の故郷の星の名はニビル。
今はもう夜空に輝いてはいません。
地球のヒトたちはソレを
アステロイドベルトと
呼んでいます。
…以下、竹取物語に続く。
この物語を読んでくれた小さなお友だちへ。
文章のところどころに難しい言葉が書いてあるかもしれません。
分からないことは、近くのオトナのヒトにききましょう。
オトナのヒトが居なければ、国語辞典を使いましょう。
ボクもそうやってたくさんの漢字を覚えました。
では、キミの健闘を祈ります。




