歩幅ひとつ分の孤独
掲載日:2025/12/01
イヤホンから流れる曲は、誰にも知られない秘密みたいに
静かに、でも確かに私の胸を揺らしていた。
街灯の光はところどころ欠けていて
足元に落ちる影は細くて弱い。
まるで私の存在みたいに、ふっと消えてしまいそうで。
だけど消えない。
ちゃんと、そこにある。
冷たい夜風が頬を撫でるたび
どこか遠くへ連れていかれる気がして
私は少し早足になる。
フードの中で髪が揺れて
イヤホンのコードが胸元に触れて
鼓動と同じテンポで揺れていた。
誰もいない夜道。
私の足音と心臓の鼓動だけが現実で
音楽は夢みたいに心を包む。
「わたしは儚い」
そう思う瞬間ほど、生きている実感が強くなる。
触れたら壊れてしまいそうで、
だけど壊れずに歩いている。
強くなるためではなく、
ただ前へ進むために。
夜の中、私は淡い光をまとったまま
静かに歩いている。
誰に見られなくても――
私は確かに、美しい。




