超本気
廃工場で、湊に向かっていくのは五十嵐、内海、そして桜庭だ。その傍らには、左胸の上から右脇腹まで切り裂かれ、血だらけの黒瀬と、同じく黒瀬とは逆角度の裂傷を負った佐久間がいる。
「立てるか?黒瀬」
「あぁ。立てねえほどじゃねえ」
黒瀬は四条の肩を借りながらゆらりと立ち上がる。
「とりあえず離れるぞ。」
「あいつは…佐久間は…」
「心配すんな。俺はまだ一人で歩けるわ」
「へっ…そうかよ…」
そしてそのまま湊から距離を取った。一方で真っ先に湊に向かって行ったのは五十嵐だった。
「さっきの感じだと火薬系は通じない…それにこの位置で爆発させるとアタシたちの被害も計り知れない。まずは黒瀬先輩らが離脱する隙を作る…!」
五十嵐はこの状況でも冷静に頭を回していた。五十嵐が懐に手を入れる。そして何かを地面に撒いた。湊は勿論反応する。
「また爆弾?いや、火薬の匂いがしないな…これは…撒菱か!俺の能力じゃ払いのけるのは面倒だな…まあ、飛び越えたらいっか。」
湊はそれを飛び越えて対応しようとした。が、そこには内海が待っていた。
「賭けは僕の勝ちだね。」
「へえ…」
内海は跳躍しながら既にハルバードを振りかぶっていた。そのまま湊に向けて振り下ろす。湊はなんと、それを片腕で受けた。本来なら真っ二つになる威力だが、湊は後ろに飛ばされただけだった。
「硬い…!まるで岩…!けど、手応えはあった」
内海はあまりの硬さに驚いていた。次の瞬間だった。
「バチィ!!」内海の体から血飛沫が舞った。内海の攻撃を受けたはずの湊と目が合った。
「は…?」
内海は何が起こったのかも分からないまま地面に叩きつけられた。
「蒼生!!」
「内海パイセン!!」
「がはァ!」
内海が激しく吐血する。叩きつけられた勢いでダメージが増している。その中でも桜庭は焦りながらも思考を巡らる。
「あいつの能力、少なくとも一つは斬撃。それも不可視かつ飛び道具…。あとは、あの耐久だな…俺でも分かる。内海パイセンのあの一撃はそう簡単に受けられるもんじゃねえ…何かからくりが…!!やべえ!」
その瞬間、桜庭は何かを察知した。
「伏せろパイセン!!」
「…!?」
突然叫んだ桜庭に驚きつつ、五十嵐が緊急で伏せる。それとほぼ同時。後方、離れた位置の壁から衝撃音が鳴った。振り返ると壁には斬撃の痕が刻まれている。
「危なかった…桜庭君が指示を出してなきゃ、アタシも斬られてた…」
「五十嵐パイセン。アイツの斬撃は不可視の弾幕だ…目ぇ逸らしたら一発アウトだぜ…!」
「うん…分かった」
「五十嵐パイセン。内海パイセンを安全な場所まで運んでくれ。俺一人であいつを足止めする…」
「本気で言ってる…?」
「本気と書いて超本気だぜ?」
「迷ってる時間は無ないね…」
五十嵐の決断は、
「蒼生!立って!」
「ぐぉ…」
五十嵐が内海を無理矢理立たせる。
「おっと、」
「させるかよ」
湊の追撃を桜庭が先制して潰す。
「来るぞ」
「ほいよっ」
湊の斬撃はテレスコピウムの掛け声と共に躱す。
「一人で足止めするじゃないの?」
「悪ぃなコイツは人じゃねえからノーカンだ」
「屁理屈め」
「まずはこいつの能力を看破しねえと。どうしようもねえ…」
湊は再び思考を巡らせる。その時だった、テレスコピウムが口を開いた。
「陽翔。よく聞けこいつの能力は斬撃とガードだ」
「!?」
テレスコピウムは望遠鏡座の化身。他の星座の能力もある程度は把握している。桜庭はその事を知らない。わけも分からないまま桜庭は耳を貸す。それは紛れもない。信頼。
「一つは斬撃を飛ばす能力。モーションも無く斬撃自体も不可視。だが、クールタイムがある。」
「何秒?」
「わからん。もう一つは自身を硬化させる能力だ。あらゆる攻撃を無効化する。だが同じくクールタイムがある。」
「これも時間はわかんねえか?」
「ああ、だがな」
「 」
「…なるほどな」
「何をぺちゃくちゃと、喋ってるのかな」
湊の斬撃が飛ぶ。
「跳べ!」
「しゃあ!」
連携は抜群だ。その勢いのまま距離を詰める。
「来な」
「おらぁ!!」
湊はロングナイフで応戦する。桜庭は一本のナイフだ。テレスコピウムも殴り合いで参戦する。状況は2対1だ。そしてこの戦闘はより苛烈を極める事となる。
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次回更新予定日は12/28(日)です。




