五剣と六人
佐久間を撃破した俺と黒瀬パイセンの前に現れたのは謎の男と女だった。
「見るだけで分かる。俺らが倒した奴よりも圧倒的に格上…!」
俺は一歩も動けないままでいた。男の方は首まであるくすんだ青い髪に紺藍の瞳、もう一人は中背まである長い黒髪に赤紫色の瞳。腰元には日本刀の鞘のような物を携えている。そして、共通してかつての中世の貴族の剣士を彷彿とさせるような純白の隊服と金のボタン。加えて、黒いローブのようなものを身にまとっている。俺はその装いに見覚えがあった。
「星衛隊…!」
俺が口を開く前に黒瀬パイセンに答え合わせをされた。
「そーそー合ってるよー」
男が軽い口調で口を開く。
「こちらは片付いたぞ」
「こっちも終わったよ~」
四条パイセンと五十嵐パイセン、内海パイセンが戻ってきた。この様子だと無事、勝ったみたいだ。合流した俺たちに対して自己紹介をするかの口ぶりで男が口を開く。
「俺は星衛隊五剣の一人、蟹座の湊だ。」
「同じく五剣、牡羊座の姫宮。」
「五剣…だと…」
「こりゃあ…えらいこっちゃなや…」
「な…どうして五剣が…」
「うそ…」
黒瀬パイセンと佐久間の表情が更に曇った。四条パイセンたちも明らかに動揺してる。それもそのはずだ。五剣。あんまし頭の良くねえ俺でも知ってる程のビッグネームだ
星の子を所有している政府直属の組織、星衛隊。その中で黄道十二星座の力を持つ五人の剣士が存在する。その名を五剣と言う。星衛隊の中でも別格の力を持つ最強の剣豪集団である。
「んで、そんな奴らが俺たちに何の用があんだよ」
俺は恐怖心を紛らわせる様に強い口調で問う。
「俺たちは君に用があって来たんだよ、桜庭陽翔くん。いや、望遠鏡座って呼んだ方がいいかな?君の”回収”に来たんだよ」
湊が薄ら笑いを浮かべて言う。俺の嫌な予感はまたもや的中してしまったようだ。
「制服についてた仮のGPSには気づいてたみたいだけど、体内に埋め込まれてるGPSには気づいてないなんて、滑稽だね」
「まて、さっきからいったい何の話をしている。陽翔はうちの組織のメンバーだ」
湊の話を遮るように黒瀬パイセンが口を開く。
「あれ?知らなかったの?こいつは俺たち星衛隊の実験動物だよ?」
俺以外は全員驚いたような顔をした。
「実験動物が脱走しちゃったんだから回収しに来るのは当然でしょ?」
湊は相も変わらず俺たちを見下すような目つきと喋り方でこちらに問いかけている。
「だからどうした?陽翔は今となっては俺たち流星軍の一員だ。陽翔を渡すわけにはいかない!」
黒瀬パイセンが啖呵を切る。その言葉に俺は胸の奥底から熱い何かがこみ上げてくるような気がした。その時湊がまた呆れた表情で語りだす
「あっそ。じゃあ全員殺してから奪い返す事にするわ」
その瞬間、湊を纏う空気が更に重くなった。そしてローブで隠されていた腰の後ろに携帯していたであろう2本のロングナイフを抜いた。そして構える。その眼には狂気と殺意が満ちている。
「勢い余って、ターゲットまで殺さないように」
そういって姫宮も刀を抜く。その眼には湊と少し変わってただひたすらに冷徹な殺意が満ちている。
「お前ら!武器を握れ!」
そう言って黒瀬パイセンは2本のナイフを抜いた。そしてその1本を俺に渡した。
「まだ装備を整えられてなかったのに、こんな事になってすまん。とりあえずこれを使ってくれ」
「何言ってんだ…元はと言えば俺が…!」
「だからどうした!もうお前は俺たちの仲間だ!巻き込んでしまったとか考えるんじゃねえ!俺たちを助けろ!!」
俺は申し訳なさで、胸が張り裂けそうだった。俺がみんなを危険な目に遭わせてしまったと思ってたからだ。でも、俺は黒瀬パイセンの言葉に救われた気がする。
「案ずとも、いずれ起きていた問題だ」
そう言って四条パイセンは腰元からレイピアの様な細身の剣を抜く。
「借りはまた今度ゆっくり返してよね!」
「まあ、そもそも星衛隊の奴らも気に食わないしね」
五十嵐パイセンは懐からナイフと炸裂弾のような物を、内海パイセンは背負っていた柄の長いハルバードを手にする。
「助ける…か。非力で能力も弱い俺が。本当に出来るのか?」俺は不安に駆られる。「いや、弱気になるなんて俺らしくねぇな」俺は気合いを入れ直す。
「2対5って訳ね。悪くないんじゃない?」
「いや、2対6や」
そう言ったのは佐久間だった。そしてメリケンナイフを拳に装着する。
「佐久間…」
「勘違いすんなよボケ。田中と中田を見捨てる訳に行かんからや。このままじっとおったら巻き添え食らう気ぃするもんで、ここから離脱する方法を探るだけや。」
「まあ、何対何でも結果は変わらないけどね。」
俺がみんなを助ける。そう強く思うと勝手に力が湧いてきた。そしてやはり俺の戦闘スタイルと言えばこいつを忘れるところだった。
「テレスコピウム。力を貸してくれるか?」
「しょうがねぇなあ」
俺の背後に、大きな蒼白い人型の化身が現れる。一同が化身を見て驚く。
「な…陽翔…!」
「なんや、えらい強い思たわ…」
顔面には望遠鏡の様な筒が正面についており、それが目となっている。存在しているのは上半身だけでその下は炎の様なゆらめきと共に消えている。
「星座の化身の完全顕現…!その領域に到達していたとは!!面白いなぁお前!!」
湊は更にテンションが上がっているといった様子だった。
気合いは十分だ。黄道十二星座がどうした?俺が、俺たちがあいつらを倒す。不思議と負ける気はしなかった。
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