星彩解放
11/16 23:45 誤字と書き漏らしを修正しました。
黄道十二星座。牡羊座、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座、天秤座、蠍座、射手座、山羊座、水瓶座、魚座。この12の星座の総称である。黄道とは天球上における見かけ上の太陽の通り道である。その黄道、太陽の軌跡上にある星座たちを黄道十二星座と呼ぶ。黄道十二星座の力を持つ者は皆一様に、他の星の子とは一線を画す力を有する。
廃工場では五十嵐と内海が田中と相対していた。
「やああ!」
五十嵐が低い姿勢のまま打ち上げるように拳を打つ。田中は腕を交差させそれを受ける。
「ぐっ…」
田中の腕から鈍い音が鳴り、低い声を上げる。
「蒼生!」
「ふんっ!」
五十嵐の呼び声に合わせて内海は背後から拳を振るう。田中はかろうじて躱すが、その先にも五十嵐が蹴りを置いている。
「おらぁ!!」
「ぐおあぁ...!」
田中は錆びれたトタンの壁を突き破って激しく外まで吹き飛ばされた。田中は地面に這いつくばって咳き込んでいる。
「げほっ...ごほっ...」
田中の正面から五十嵐と内海が歩いて現れる。それと同時に田中もゆらりと立ち上がる
「あたしたちをここに飛ばした能力、使ってないって事は、色々条件があったり、代償が大きかったりすんだろ?」
「教える義理は無い...」
「あっそ。まあいいけど」
五十嵐は冷たく返す。
時、少し遡り。桜庭、黒瀬は佐久間と対峙していた。
黒瀬は思考を巡らせている。
「さてどうするか。こいつの能力が自身の防御力を上げるだけならゴリ押しできなくもないが、もし能力の無効化ならかなり厄介だ。盾座…十二星座じゃないということは、ダメージの無効化みたいな大した能力ではないか…」
黒瀬が鋭い目をしながなら構える。
「とりあえず探るしかないな…」
佐久間は2回ほど軽くジャンプをしてから、つま先を地面にトントンしている。
「ほな行くで」
佐久間が右腕を振り上げながら突っ込む。
「なら正面から行くか!?」
黒瀬が真正面から迎え撃つ。
佐久間の右拳と黒瀬の右脚が激しく衝突する。
「クッ...」
表情を歪めたのは黒瀬の方だった。だがそんな事は意返してない様子に今度は殴り合いの応酬が始まる。スピードは黒瀬の方が上。だが佐久間には一切ダメージが入っていない。
一方桜庭は助太刀のタイミングを伺っていた。
「早すぎて着いていけねぇ...!」
桜庭が目を凝らして見る。
「攻撃の隙間を探す...よく見ろ...!見るしかねぇ!」
そして桜庭は見た。黒瀬が蹴りを入れるタイミングを。佐久間が後ろに飛ばされる。その時桜庭は...
「ふんっ!!!」
「...っ!?ぐぉあ!!」
その時桜庭は既に背後にいた。それは佐久間にとって完全な不意打ち。佐久間に初めてダメージが入る。佐久間が黒瀬がいた方に吹っ飛ばされる。
「ゲホッ...なかなかなるやんけ」
桜庭は確実に黒瀬が蹴りを打つより前に動き出していた。その事実に黒瀬、そして桜庭陽翔本人が驚いていた。
「陽翔...お前...」
黒瀬の動揺を遮るように佐久間が起き上がりながら蹴りを打つ。黒瀬は避けながら互いに距離をとる。
「チッ...!反応出来ひんかった。次は見切ったる!反応を見るにまだ俺の能力には気づいてへんやろ。気づかれる前に畳み掛ける...!」
佐久間の所有する盾座の能力は、発動すると本人は1/3秒間あらゆる攻撃を無効化する。 1/3秒間の間で攻撃を無効化しなければ60秒間のクールタイムが発生する。無効化を発動させることが出来ればクールタイムをリセットする。理論上は全ての攻撃をノーダメージで受け切る事が可能な能力である。
「まだまだこっからやろ!!」
再び佐久間が距離を詰める。
その時黒瀬は心の内でこう考えていた。
「陽翔が魅せてくれたんだ...俺もさすがに本気出さねぇとな」
その時、黒瀬が口を開く。
「見てろよ陽翔...これが俺の、黒瀬仁の、最高出力だ!!」
桜庭は何が起きているか分からないという様子で黒瀬の方を見る。
黒瀬が唱える。
「星彩解放 昇翔室宿」
その時黒瀬の背中に白く輝く翼のような物が生えた。そしてそのまま2回空を蹴り、上空に駆け上がる。
そして佐久間を見下ろす。
佐久間はそれを見て口角が上がっていた。
「そのレベルに到達しとったとはのお!」
「星彩...解放...?」
星彩解放。己の星座の力を極限まで解放する、星の子の中でも上澄みしか使えないまさに奥義である。使用者は体の一部にその特徴が現れる。
黒瀬仁の星彩解放昇翔室宿は高く舞い上がり、自身を雷の矢とし、相手に超高速で突撃する。
「黒瀬っちゅうたか!?おもろいやっちゃ!!かかって来い!!!」
佐久間が構える。
辺りが激しく光り、衝突音が轟く。そして土埃が舞った。
次の瞬間、地面には佐久間が横たわっていた。黒瀬は余裕そうな表情を浮かべたまま片膝と拳を地につけていた。その状態のまま佐久間が口を開く。もう佐久間は立てない状態で、勝負は付いていた。
佐久間はタイミングを合わせることが出来れば、黒瀬の攻撃を防ぐ事は出来た。事実佐久間は見切ろうとしていた。だが佐久間が能力を発動するより先に、黒瀬の攻撃が佐久間に届いていた。紙一重、一瞬の勝負だった。
「2つ質問や」
「なんだ?」
同時に黒瀬の翼が消える。
「何で俺の能力がわかったんや」
「陽翔の不意打ち、防げてなかったろ。つまりオートで発動する能力では無いってことは分かった。後は勘だ。当たればラッキーって感じ」
「ふーん...2つ目の質問」
「何で最後手加減したんや」
「殺さない程度にするっつったのはそっちだろ?」
それを聞いた佐久間は少し微笑んだ。
「俺の完敗やな」
佐久間は満足気な表情で仰向けに倒れている。
桜庭は疲れた表情でため息をついた。それは安堵のため息でもあった。
が、桜庭の目が不穏な空気を捉える。
「...!!」
「あいつの比じゃない雰囲気!何かヤバい!黒瀬パイセンに伝え...!」
「あれ?お取り込み中?」
黒瀬と佐久間の奥から声が聞こえた。視線の先には、明らかに只者では無い、そして、圧倒的な威圧感を持った男と女がいた。
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次回の更新予定は11/23(日)です。




