「例のエレベーター」
ネクタイを結び終えた俺の目に飛び込んだのは、鏡に映ったぐっちゃぐちゃにネクタイを巻いている自分だった。そう、ネクタイの結び方を知らなかったのだ。
「あちゃ~…」
俺は困っていた。よく考えてみれば中学を出たばっかりのガキが、ネクタイの結び方なんて知るわけがないのだ。もういっそこのまま出ていこうかと途方に暮れていた時だった。「コンコン」と誰かがドアをノックした。
「すまない。入っても問題ないか?」
声の主は群青髪の女だった。これから一緒に仕事をしようという人に、こんな情けない姿を見せるのは少し憚られるが仕方ないので、「いいっすよ」とだけ返事をしておいた。「ついでに黒瀬先輩を呼びに行ってもらおうかな」なんて思っていると、群青髪の女が入ってきた。
「悪いな。少し荷物を…」
そう言いながら入ってきたが俺を見て止まった。
「どうしたんだ…?それ」
「いやぁ、俺ネクタイ結べなくて…」
もうこうなってしまっては仕方がないので正直に言った。
「えっと、くr」
「では、私が代わりに結ぼう」
「え?」
「結び方が分からないのだろう?」
「まあそうっすけど…」
「なら私が結んだほうが早いだろう」
そう言うと群青髪の女は俺のネクタイを結び始めた。距離が近い、いい匂いがする。これだけでも思春期真っ盛りの俺にはキツかったが、何よりも俺の目から離れないのは眼前に突き出された双丘であった。遠くから見た感じより数倍大きく感じた。そんな俺の視線に気づいたからかはわからないが、ネクタイを結ぶ速度が早くなった気がする。最後に「今日の任務終わりにでも黒瀬に教えてもらえ」とだけ言って何事もなかったかのように結び終えた。
「ありがとうございまっす先輩」
「構わない」
そういいながら二人とも更衣室を後にした。待っていた黒瀬先輩に群青髪の女が言う。続いて黒瀬先輩が俺の方に語りだす。
「待たせたな」
「いやぁ全然。お、結構似合ってんじゃねえか」
「そっすか?あざまっす」
初対面かつ、これから一緒に仕事をする先輩たちの前なので、黒瀬先輩にも一応敬語混じりの言葉で話す。黒瀬先輩に敬語を使うことに慣れていなかったのと、ネクタイを自分で結んでない事が少し気まずかったが、このまま話を進めてもらうことにした。
「そんじゃまあ全員揃ったことだし、自己紹介から初めっか」
そう言って黒瀬先輩が全員を集めた。
「じゃ、知ってると思うがまず俺から。黒瀬仁。年は18で憑依されてる星座は、ペガサス座だ。この班の班長を任されてる。よろしくな!」
名前と年齢は知っていたが、能力がペガサス座なのは知らなかった。「俺を助けてくれた時に使ってたのはペガサスの能力だったのか」なんて思っていると群青髪の女が口を開いた。
「次は私がいこう、四条凛だ。年は21。憑依されてる星座は定規座だ。よろしく頼む。」
年上だとは思っていたがまさか黒瀬先輩より年上だとは思っていなかったので少し意外だった。定規座という能力も分からない。ただ、その立ち振る舞いからなかなかの強者である事と、胸が大きい事は分かる。
「じゃ!アタシの番だね、五十嵐杏!16歳!よろしくね!あ、一応"星々の祝福"だよ!」
星々の祝福。聞いたことはあるが、実際に会うのは初めてだ。具体的な星座の力は持ってないが、一般人よりも高い身体能力を有する。場合によっては星の子さえも上回る貴重な能力。
「じゃあ、僕だね。僕は内海蒼生16歳。五十嵐さんと同じ星々の祝福だよ。よろしく。」
まさかこのおとなしそうなやつも星々の祝福だったとは、なかなかの衝撃だった。
「それじゃあ、最後はおまえだな!」
そう言って黒瀬先輩は俺の背中をバシッと叩いた。「っと」言葉にならない声が漏れそうになったそのままの勢いで口を開く。
「桜庭陽翔っす!年は15で、望遠鏡座の化身に憑依されてるっす!よろしくお願いしまっす!」
みんなが口々に「よろしく~」的なことを言っている。俺はそんな光景が心底嬉しかった。何だか認められている気がするから。
「じゃ!自己紹介も済んだ事だし、今日の任務を言ってくぞ。つっても陽翔以外はわかってると思うが、いつも通りこのあたりの見回りだ。星河団や星衛隊の連中から一般人や味方を守るのが俺たちの任務だ。気を引き締めていくぞ。他にも詳しい仕事内容とか、組織の事情については見回りをしながら俺が教える。じゃあ時間も無いし早速出動するか!」
そういいながら、黒瀬先輩はエレベーターの方へと歩を進める。俺たちはその後を追う。この組織に入っての初の仕事だ。緊張もするが期待と希望に胸を膨らませながらエレベーターに乗り込む。このエレベーターにはここに来てから結構乗ったが、心なしかいつもよりも狭く感じた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回いつもより短くてごめんなさい!!
ちょっと忙しくて~…(圧倒的言い訳)
次回の更新予定日は11/2(日)です。




