「初めまして」
合格だと言われた俺は、割と嬉しかったように思う。本心では「まあ合格だろうな」とは薄々思っていたが、やはり正式に合格を貰ったのは嬉しかった。勢い良く返事した俺を温かい目で見る小野隊長が俺に言う。
「そういや、桜庭くんはまだ15だよね?親御さんに言って来た方がいいんじゃない?」
その言葉を聞いて、俺は特にこれと言った感情は湧かなかった。自分に両親が居ないのは昔の事からで、それが俺にとっての当たり前の事だったから。
「俺に両親はいねーです。物心がついた頃には既に施設に居ました。それからずっと今の今まで政府の施設で育てられてました。」
「そうだったか、なんだか悪いことを聞いちまったな」
「いえ、もうこれが俺にとっての当り前ですから」
それを聞いた小野隊長はなんだか複雑な表情をした、小野隊長は間違いなく良い人なんだと、そう心の中で確信した。それと同時に小野隊長が話を進める。
「まあ、とりあえず黒瀬が外で待ってるから合流してくれ。出動待機室に第二部隊C班のメンバーもいるはずだからそこまで黒瀬に案内させる。C班のメンバーと顔合わせしたら、早速だが見回りに行ってもらう。今日からお前は、流星軍第二部隊C班の桜庭陽翔だ。よろしく頼むぞ」
それを聞いた俺は、不思議と胸が熱くなって、なんだか誇らしい気分になった。と同時にこれから始まる新たな人生にワクワクしていたようにも思う。
「こちらこそ、よろしくお願いします!!」
「あ、あとこれが制服ね。」
「ありがとうございます!」
新品の匂いがするスーツの制服も流星軍の一員になれた証がして嬉しかった。
「失礼しました」
外に出ると近くで黒瀬先輩が待っていた。
「その様子を見る感じだと、合格したみたいだな」
「おう!無事合格貰って、今日からパイセンと同じC班に配属だってよ」
「なるほどな。じゃ、これからよろしくってわけだ」
黒瀬先輩のスマホが鳴った。黒瀬先輩が数秒画面を見た後、再び歩きながら話し出す。
「これから何すんのか、小野隊長から聞いてっか?」
「ああ、バッチリ聞いてるぜ」
「なら話が早いな、今からあいつらに合流する。ちょっと変わったやつも多いが、悪い奴らじゃねえから安心していいぞ。」
そんな感じの話をしながら、エレベーターに乗り込む。会話の続きはエレベーターの中で繰り広げられた。
「このエレベーターで、直接出動準備室まで行く。心の準備はいいな?」
「押忍!」
「そういや陽翔。お前は、何の星座の能力が使えるんだ?」
「望遠鏡。大して強い能力じゃねえよ。遠くの物を観察できるだけだ。わりーなパイセン。星の子だって聞いて、期待したかもしれねえが俺の強さは、そこら辺の一般人ぐらいだぜ」
そう。俺の望遠鏡座の能力は遠くの物を見るだけ。その程度だ。政府の組織での戦闘員になるための”教育”のお陰で、ある程は戦闘の術が身についてはいるが、そこまで強くはない。そして、この世界において俺は自分が弱いことを知っている。だから俺は逃げる事を選んだ。
「望遠鏡か、あんま聞いたことないけど、使い方によっちゃあ十分強そうだぜ」
黒瀬先輩のこの言葉は意外だった。小野隊長然り、流星軍の人たちには、何かと優しくて、本当に嬉しかった。
「それに、俺はお前の命の恩人だけど、お前も俺の命の恩人だからな。」
俺はどういうことか分からなかった。キョトンとしている俺を尻目に黒瀬先輩が話を続ける。
「あの赤髪と戦ってる時に、俺の後ろから斬撃が飛んできただろ?陽翔がそれに気付いていなかったら、俺は今頃あいつにやられてたさ。多分お前はあの時、無意識に能力を使ってたんじゃないか?」
言われてみて確かにと思った。確かに俺は咄嗟に奴の攻撃から、自分と命の恩人を守るために能力を使ったのかもしれない。そう考えたら、何だか自分の能力が誇らしく思えてきた。そんなこと考えていると、黒瀬先輩の「着いたぞ」という言葉とともにエレベーターが到着した。期待と緊張が入り混じる中、ゆっくりと扉が開いていく。
扉の先には、スーツを着込んだ、女が2人と男が1人いた。一番手前の明らかに一番強そうな女は遠目では黒髪のセミロングだが、毛先の方に向けて真ん中辺りから群青色。加えて真後ろで、細めの一つ結びになっていた。もう一人の女は金髪ロングにローズピンクのメッシュが所々合計4箇所散りばめられていた。男のほうはぱっと見根暗そうな感じで、淡い紫、俗に言う藤色っぽいマッシュだ。
黒瀬先輩がエレベーターから降りながら、前方の3人に向けて話し出す。
「やあやあ、お疲れみんな!調子はどうだ?」
すると群青髪の女が黒瀬先輩に言う。
「横にいるのが新人か?随分と若そうだが」
どうやら既に、俺がこの班の新人だということは知っているらしい。おそらくどこかのタイミングで、黒瀬先輩が連絡を回していたのだろう。
「そうそう、この子が新人の星の子だよ。」
「へー!面白そうな子!」
「…」
金髪の女はテンションが高いが、紫髪の男はひたすら無言だ。黒瀬先輩が続けて喋る。
「じゃあまず、この子には先に制服に着替えてもらって、それから自己紹介して、本日の見回りに行く感じで」
その後黒瀬先輩が俺に語りかけるような感じで言う。
「右の更衣室で着替えて来てくれ」
「うっす」とだけ返事をして俺は更衣室に入った。期待と緊張の入り混じる中、新品のスーツに手を通す。ネクタイを結び終えた俺は、衝撃的な光景を目にした。
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