「覚悟」
11/7 11:48 矛盾点を修正しました。
俺の名前は桜庭陽翔。俺は今、面接室に向かっている。どこのって?そりゃあ流星軍のだ。あの日、中学の卒業式を終えた俺は、制服を近くのコンビニで着替えた後、一目散に駆け出した。この国の星の子は全員普通の子供と同じ様に中学生までの教育を受けさせる義務がある。でもその後、政府お抱えの軍隊「星衛隊」に入ることも同時に義務付けられている。安定した職に就けるならそれでいいだろって?確かに一部ではそういう意見もある。だが、星衛隊はあまりいいところではないらしい。それに、30年前から始まり、その後27年も続いたあの地獄のことを知れば、とてもじゃないが政府を信用するなんてできるわけがない。まあそのせいで政府にも追われてるし、星河団の奴らにも危うく殺されそうになったしな。黒瀬さんが助けてくれなかったら今頃俺はここにいない。あれだけ軽口叩いてはいたが、きちんと感謝はしてる。「さて、そろそろだな。あれ?手前から数えて2番目の部屋って言ってたっけ?3番目の部屋って言ってたっけ?うーん…とりあえず入ってみるか。」
「失礼します!!!」
「誰だお前は!!!」
どうやら違ったようだ。気を取り直して3番目の部屋に入る。
「失礼します!!!」
中に入ると中年ぐらいの男がたばこをふかせながら明後日の方を見つめていた。赤っぽい茶色の短髪で、目の下にはクマが浮かんでいて、無精ひげが生え散らかっていた。そこだけ聞くとただの社畜みたいなおっさんに聞こえるだろうが、俺の目を引いたのはそこではなかった。右目には眼帯をつけていて、右側の額から頬にかけて大きな傷のようなものがあった。それに加えてガタイが異様にゴツいのだ。その風体からは多くの戦場を戦い抜いてきたのが、容易に想像出来た。
「お前が桜庭陽翔か?」
面接の開始だ。目の前の人に圧倒されてはいけない、俺は気持ちを入れ直して質問に答える。
「はい、僕が桜庭陽翔です!」
「合格。」
「はい、え?」
「合格だ。」
「え、まだなにも」
「いやさぁ、うちも結構人手不足なのよ」
「はあ…」
「そもそも星の子のほとんどは政府に所属してるし、最近星河団もどんどん団員を増やしてるし、もう正直言って星の子なんて喉から手が出るほど欲しいのよ」
「そうですか…」
「素直そうでいい子そうだし、君さえよければ今日から入ってよ。」
見た目とは裏腹の気の抜けた声と砕けた喋り方に俺は拍子抜けした。しかも、こんな簡単に入れるなんて、何だかめちゃくちゃ気合を入れて面接に臨んだのが損をした気分だ。そんな風に考えていると、男がまた軽い口調で話し出す。
「自己紹介がまだだったな。俺は流星軍第二部隊隊長 小野だ」
「第二部隊?」
「ああそうだ、流星軍はまずいくつかの部隊に分けられる。そして、そこからさらにそれぞれの班に分けられるんだ」
「そうなんですね」
「ちなみに君を助けた黒瀬は第二部隊C班の班長だ」
「黒瀬パイセンって結構偉い人だったのかぁ」なんて思いながら、適当に相槌を打つ。
「そうだ、これをやってもらわないと」
そう言って小野隊長が箱から取り出したのは水晶玉のようなものだ。
「これに手をかざしてみるんだ」
俺は小野隊長に言われるがまま少し前に出て、怪しげに光る水晶玉に手をかざす。すると水晶玉に、縦方向に並ぶ5つの光と、その光を繋ぐ線が現れた。それはまさしく、星座であった。俺はこの星座に見覚えがあった。
「お、これは…何座だったっけ…?」
小野隊長が俺に聞く。
「望遠鏡座だった気がします」
それを聞いた小野隊長が、ハッとした表情で話し出した。
「そうそう!望遠鏡座!ってことは、桜庭くんは、望遠鏡座の化身に憑依されてるだろ?」
「はい、そうですね」
望遠鏡座が映った時に大体の予想はついていたが、これはどうやら憑依している星座が分かる道具のようだ。
「この道具は、手をかざした奴に憑依している星座が分かる優れものだ。うちの組織の奴が作ったんだ。なかなか便利だろ?」
「使いどころがピーキーすぎるんじゃないか?」とも思ったが、胸の内にしまっておく事にした。
「よし、これで面接はほとんど終わったな。」
小野隊長がそう話す。俺もすっかり流星軍に入るつもりだったし、このまま面接が何気なく終わると思っていた矢先だった。
「それじゃあ桜庭。最後の質問だ」
「はい、」
「お前は人を殺す覚悟があるか?」
そう俺に問う小野隊長の雰囲気は、さっきまでのちゃらけていた感じとは打って変わって、最初に感じた、強者の纏う雰囲気そのものだった。その威圧感に気圧されている俺に対して、小野隊長は話を続ける。
「知っての通り、我々流星軍は、星河団に加えて政府の連中とも敵対している。そしてそいつらから、日夜命を狙われている。手段を選ばないあいつらから周りの人を、そして自分を守るためには、こちらも手段を選ばない事が必要になってくる。お前にその覚悟はあるか?」
俺の答えは決まっていた。
「こんな狂った世界で、人を殺せない人の方が珍しいですよ。俺はやって見せます。この世界で生き抜くため、そして、流星軍の為に」
その答えを聞いた小野隊長は、少し笑って答えた。
「改めて言おう。合格だ、桜庭陽翔。ようこそ、流星軍へ」
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