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アーステールの猫  作者: 榛名
黒猫と至聖の剣
16/32

黒猫と至聖の剣 7


ハジャルさんが犯人・・・アーステール様は確かにそう言い切った。

アーステール様の表情に迷いはなく・・・きっとそう確信するだけの理由が充分に揃っているのだろう。

いったいその唇からどんな真実が語られるのか・・・皆の視線がこの2人に集まるのが感じられた。


「失礼ですがアーステール様、さすがにそれは無理がありますぞ」


しかしそんな空気を読めていないのか、渦中の2人よりも先に口を開いたのはダブラール氏だった。


「確かに以前私めもハジャルは腕が立つと言いましたが、ハジャルはまだまだこれからの・・・アレは言わば将来性を買っての事・・・今の時点であの剣聖に勝てるわけがありませぬ」


確かに、その疑問はどうしても付き纏う。

いくら彼に才能があると言っても、相手は現役最強の剣聖。

もし仮に見習い剣士の域を突き抜けた天才だとしても、剣聖を殺せる程の実力足りえるのか・・・


「まぁ・・・それに関しちゃ俺も同感だ・・・こう言っちゃあ悪いが、そこの若造相手にあいつが負けるとはこれっぽっちも思えねぇ」


氏の発言を裏付けるように、サーラーンはハジャルの実力を評した。


「ある程度から上の剣士ってのは、ただそこに立ってるだけでも隠し切れない何かを放ってんだ、剣聖はもちろんアイゼラや気配を殺してるジェイドからもな・・・ハジャルとか言ったか?そいつにはそれがねぇ」


よくわからないけれど、一流の剣士の間でだけ通じる何かがあるらしい。

ハジャルさんにはそれがない、つまり彼は弱いと断言しているようなものだけど・・・ハジャルさんもそう言われて黙っていられるような性格ではなく・・・その目に険呑な光が宿った。


「ちょっと待てよ・・・俺がそんなに弱いって?」

「ああ、実際にこの場でやり合ってみても良いんだぜ?」


そう言いながらサーラーンが曲刀に手を掛ける・・・またさっきの感覚・・・殺気が放たれた。

ハジャルさんも彼から間合いを取り、腰の剣に手を伸ばすが・・・その額に浮かぶ汗から彼が気圧されているのが察せられた。

対するサーラーンの顔は涼しげで、強者の余裕が感じられ・・・って、そんな場合じゃなかった。


「や、やめてください! なにも今2人が戦わなくたって・・・」

「そうか?・・・俺は気になるが?」

「私も・・・むしろ私が相手をしたいくらいで・・・」


剣士達はすっかりハジャルさんに興味を持ってしまったらしい。

彼にそれだけの実力があるのかどうか・・・たしか彼が犯人かどうかの話だった気がするのだけど。

今はそんな事など関係なく、純粋に剣士としてその技を見たいという気持ちが勝ってしまったのだろうか。


でもこの人達が動いてくれないとなると、他に止められるような者はなく。

今は目の前の戦いを見守るしかない・・・そう思われた最中、一触即発の2人の間に割って入ったのは・・・


「はぁ・・・もう、そういうノリは勘弁してくれないかしら」

「アーステール様?!あ、危ないです!」


さっきサーラーンに斬られそうになったのをもう忘れたのか。

アーステール様は平気な顔をして、2人が構える中間地点に立ち止まった。


「嬢ちゃん、止めないでくれ・・・本当にこいつが剣聖に勝てるだけの腕があるのか・・・試す必要はあるだろう?」

「ないわよ、そんなの」

「ないって、お前・・・」


あっさりと即答した、アーステール様の言葉は2つの意味で捉えることが出来た。

ハジャルさんの剣の腕に対してか、それを試す必要に対してか・・・どっちかと言うと前者に聞こえるけど。


「より正確に言うと、関係ない、ね・・・彼の実力は、彼が犯人である事とは関係ないの」

「「関係ないって、お前?!」」


相対する2人から上がった声が綺麗に重なった。

ある意味で、また剣士の誇りを傷付けたんじゃないだろうか・・・しかしそんな2人の反応など意にも留めず、アーステール様は言葉を続けた。


「だってそうでしょう? そんな事は最初からわかっていた・・・剣聖は『殺された』のよ?」

「「???」」


・・・おそらく、この場の全員が同じ反応をしただろう。

アーステール様が何を言ってるのか、全くわからない・・・さすがに本人も自分の言いたい事が伝わっていないと察したようで、数秒考えを巡らせた後・・・


「だからね・・・剣聖は、殺されたの・・・相手の実力だとか関係なく、自らの意志でね・・・一番強い人がたったの一撃で殺されるなんて、それ以外にはないでしょう?」


アーステール様なりに噛み砕いて説明をしたつもりなんだろうけれど、まだこの場の全員には伝わり切らない様子。

私もなんとなくわかったつもりではいるんだけど・・・ちょっと自信がないので、質問してみる事にした。


「え、ええと・・・それは、自殺・・・みたいな事ですか?」

「まぁ・・・似たようなものね」


そう言ってアーステール様は頷いた。

まだ理解は出来ていないけれど、ようやく話が見えてきた気がする。

それでなんとか必要最低限の事は全員に伝わったとみて、アーステール様はそこから話を続けた。


「話は遡るわ・・・剣聖レアシオンが最初に優勝した武術祭・・・当時アズラークという男がいたのを覚えているかしら?」

「名前程度ですが・・・昔耳にした事があります」


そう答えたのは武術祭の参加者としては古参になるアイゼラさんだった。


「剣の王アズラーク・・・レアシオンが現れる前は彼が王者として君臨していたとか」

「ええ、『剣聖が最も苦戦した相手』の1人として今も名前が上がってくるみたいよ」


そう言われてみれば・・・街で聞いた噂話の中に、その名前があった気がする。

実際の所、たくさんある剣聖の武勇伝の一部に過ぎず・・・私は気にも留めなかったけれど・・・


「へぇ・・・昔の話って事は、今は引退して田舎にでも引っ込んでんのか?」

「死んだわ・・・剣聖との試合でね」

「・・・そうか」


死んだと聞いたサーラーンの反応はあっさりとしたものだった。

試合と言っても真剣勝負だ、死者が出る事は別に珍しい話ではないのだろう。

たしかアイゼラさんも、剣聖との試合で死にかけていたし・・・


「アズラークには1人息子がいたらしいわ、よく試合の応援に来ていたとか・・・生きていれば今頃はちょうど18か19・・・」

「・・・!」


その年齢を聞いて、ハジャルさんを連想しなかった者がこの場にいただろうか。

ハジャルさんは、ちょうどその年齢に見える・・・その彼が犯人という事は、この事件は・・・


「剣聖は自らを暗殺しに来たジェイドさんすら殺さなかった、アイゼラさんに重傷を負わせた時は酷く動揺してたみたいね・・・きっとアズラークを殺してしまった時の事が、その自責の念が彼の中に残り続けていたんでしょう・・・そこへ仇討ちに燃える彼の息子が現れた・・・」


それで、剣聖は『殺された』・・・自らの意志で、わざと致命傷の一撃を受けて・・・彼に仇討ちを果たさせた。

誰よりも強く、剣の頂に上りつめて、剣聖と呼ばれるに至った人物の・・・それが最期となったのか。


「そんな・・・そんなわけあるかよ!」


そんなアーステール様の語った推理を否定する声を上げたのは、仇討ちを果たしたと思われるハジャルさんだった。


「あいつはただの卑怯者だ!八百長で勝って、それで持て囃されてただけの!俺の方が、親父の剣の方が強かったんだ!」

「悪ぃが、剣聖の実力は本物だ・・・あいつは絶対に八百長なんかしない」


八百長と言われても、今回ばかりはサーラーンも怒りはしなかった。

今はただ感情をぶつけるハジャルさんに憐れむような眼差しを向けながら、はっきりと八百長は否定する。


「嘘だ、あの日だって親父は朝から体調を崩していて・・・あいつは前の晩の食事に何か盛りやがったんだ」

「・・・?!」

「体調さえ万全だったら、親父が負けるもんか!何度だって言ってやる、剣聖はただの卑怯者だ!」


あの剣聖がそんな事をするとは到底思えない。

おそらくは、たまたまその時アズラークが体調を崩していただけだろう。

しかしそれが勝敗を分かち・・・アズラークの命を落とす結果に繋がってしまった。


ひょっとしたら剣聖はそこまで気付いていたのかも知れない、相手の調子がおかしいと。

だからこそ、その時の事でいつまでも自分を責め続けて・・・

ならば彼の息子による仇討ちは、剣聖自身にとっても救いになったのかも知れない。


「・・・その事なんだけど、ちょっといいかしら?」

「?」

「いえね・・・その試合のあった武術祭の頃にも投票券があったんだけど・・・」

「?!」


その言葉を聞いた瞬間、ダブラール氏の顔色が・・・血の気が引いたように・・・なんかブルブルと身体も震え出して・・・

投票券といえば、たしかその年はそこそこの利益が計上されてきていたはずだけど・・・


「今の剣聖ほどじゃないのだけど、アズラークって人にも結構人気が集まっていて・・・」

「当然だ、親父は強かったからな・・・あんなやつよりもよっぽど・・・」

「それに対して、当時の剣聖って本当に無名なのよ・・・彼の投票券が買われるようになったのも翌年からで・・・つまり」

「つまり?」

「証拠はないのよ、証拠は・・・でもね」


そう前置きして、アーステール様は核心に触れた。


「もしあの時の試合で八百長があったなら・・・ずいぶん稼いだんじゃないかなって、ダブラールさん」

「いや、私は・・・その・・・き、記憶が・・・なにぶん、昔の事で・・・」


一歩、また一歩とダブラール氏は後ずさりながら・・・何か・・・ちょっと苦しい、言い訳めいたものを口にしていた。

そんな彼の姿を見て、サーラーンは唇の端を歪ませた。


「そうかそうか・・・じゃあ、思い出させてやらないといけないなぁ!」

「ひ、ひぃぃ!」


とうとう背を向けてこの場から逃げ出そうとしたダブラール氏の前に、一振りの剣が突きつけられた。


「ダメですよ、サーラーン・・・この中で当時の事を一番知っているのは私なのですから・・・」


驚くべき速度・・・先程サーラーンが見せた高速の踏み込みに勝るとも劣らない速さで。

ダブラール氏の前方にアイゼラさんが回り込んできていた。


「あ、あんな事になるとは思わなかったんだ!・・・し、新人が勝てば、今後の武術祭が盛り上がると思って・・・」


生命の危機を感じた彼は思わず口走っていた。

その内容は彼が八百長を仕掛けた犯人だと自白するようなものであり・・・それを聞いたアイゼラさんの顔が、顔が・・・


「ざっけんなよテメェ!!」

「ふぐぅっ」


ダブラール氏の丸々としたお腹の真ん中に、まるで突き刺さるように・・・アイゼラさんの右脚が食い込んだ。


「結局のところ!全部!テメェのせいか!ああン!」


その神速で蹴り飛ばした先に回り込みながら、アイゼラさんは蹴りを放ち続けた。

それはまるで球技のように・・・ダブラール氏の身体がボールのようによく弾んで・・・

まるで別人のように豹変したアイゼラさんの口からは、口汚い罵りの言葉が次から次へと・・・なんか教育上よろしくない言葉も多い。


「あ、あのー、アイゼラさん?・・・」

「・・・ああ、申し訳ありません・・・ちゃんと殺さない程度の手加減はしてますので」

「そ、そうですか・・・」


その言葉に嘘はないのだろう・・・手に持ったその剣は振るわれる事なく。

先程からダブラール氏を痛めつけている足蹴りの方も、派手な見た目程の威力は出ていないようだった。

でもその言葉遣いの方は、ちょっと・・・アーステール様も一応はまだ子供なので・・・


「出来れば、もうそのくらいにしてもらいたいんですけど・・・彼には伯爵家からも色々と追及しないといけませんし・・・」

「そうですか、では仕方ありませんね・・・チッ」


なんか舌打ちの音が聞こえた・・・こわい。

こ、これがアイゼラさんの本来の・・・取り繕わない姿なのだろうか。


「このダブラールさんには後でエリーザお姉様から、それはそれは厳しい処罰が下されると思うから、そこは安心して良いわ」


何が安心なのかは、ちょっとわからなかったけれど・・・その言葉でアイゼラさんも少しは留飲が下がってくれている事を願うばかりだ。

ダブラール氏には余罪もありそうだし、親族の中でも苛烈な性格のエリーザ様から相応の裁きが下されることは間違いないだろう。

それよりも問題は・・・


「問題は、こっちの殺人犯よね」

「ふん・・・好きにしろ」


八百長の犯人が別にいた事で、ハジャルさんは少なからず衝撃を受けているようで・・・強がったその声にも力はなかった。

サーラーンが近付いて来ても彼は棒立ちのまま、無防備な姿を晒していた。


「おい小僧、お前はまだ剣聖が卑怯者だって思うか?」

「わかんねえ・・・わかんねぇよ・・・でも・・・」

「でも?」


ハジャルさんは自分の剣に視線を向けた。

古めかしい意匠の施されたその剣は、一見すると使い古された安物にも見える。

でもおそらくは・・・かつては最強の名と共に振り上げられていた物なのだろう。


「あいつは最後に俺の剣を褒めたんだ、親父から教わった技を・・・」


剣聖の最後の言葉・・・それは直接戦った彼への敬意から出た言葉か。

それとも、彼の剣の中に見たのかも知れない・・・かつて戦った、もう再戦の敵わない好敵手の姿を。


「あの時は命乞いで吐いた嘘だと思った・・・けど・・・今は・・・くそっ!俺は何であんな・・・」


ここに至って彼はようやく気付いたのだ、自分のやってしまった事を・・・

あの時交わした剣聖の刃にどんな思いが籠められていたか・・・今はもうそれを確かめる術もない。


「サーラーン、俺は剣聖を殺した・・・あんたにとっても憎い仇だろう、今ここで俺を斬ってくれ」

「・・・」


その罪に罰を・・・断罪を求めるハジャルさんに、サーラーンは何も言わないまま背を向けた。


「お、おい・・・待ってくれよ」


呼び止めようとする彼を無視したまま、サーラーンはアーステール様の元まで来ると横柄に告げた。


「嬢ちゃん、悪いが今回の剣聖殺しは・・・迷宮入りだ」

「えっ・・・」


迷宮入り・・・それは事件が解決しないまま終わる事を意味する。

いくらサーラーンが異国の出身だとしても、その意味を知らずに使っているとは思えない・・・でも事件の真相は、もう明らかで・・・


「嬢ちゃんは頭良いな、本当によく出来た推理だった・・・だが、やっぱりこんな奴の腕じゃあ剣聖を殺せねぇよ・・・この俺が認めない」

「サーラーン・・・あんた・・・」

「せっかくだ、ハジャル・・・よく見ておけ」


そう言った瞬間・・・サーラーンの姿が・・・2人に?!

次の瞬間、駆け抜けた疾風がハジャルの全身のあちこちを小さく切り裂いた。


「・・・こ、これは・・・」

「俺が剣聖を倒す為に編み出した技だ・・・次にお前にこいつを見せる時は手加減はなしだ、わかるな?」

「・・・サーラーン」

「その剣で剣聖に勝てる・・・そう思った時、挑んで来い・・・次の剣聖になった俺が試してやる」


そう言ったサーラーンは陽炎のように揺らぐと、一瞬にしてその姿を消した。

陽炎の剣士サーラーン・・・その宣言通り、数年後に彼は剣聖と呼ばれる事になる。


「サーラーンだけでは・・・ない」


これまで全く気配を感じさせなかった男、ジェイドは相変わらず話すのが苦手なようで・・・


「来い・・・待っててやる」


その一言だけを残して、まるで周囲と同化するようにその姿を消していった。

見えざる射手ジェイド・・・表舞台に出た彼の技は、これから多くの観客の目を惹いていく事だろう。


「私は・・・あの2人のようには割り切れませんね」


そう言ったアイゼラさんにも、もう殺気は感じられなかった。


「あの人を殺した貴方が憎い・・・でも、あの人自身の意志でもあって・・・それを尊重したい気持ちもある」


そう語る彼女の表情は、寂しげに憂いを帯びて・・・先程のような怒りはすっかりなりを潜めていた。

今そこにあるのは大切な人を失った痛みと、残された遺志との葛藤・・・その複雑な心境を思うと胸が苦しい。


「だから、今は保留とします・・・ですが次の武術祭までには、きっと・・・」


次の武術祭・・・その時に彼女がどんな結論を出すのかはわからない。

でもきっとそれは剣士として出す結論、やはり剣を以って語られる事だろう。


「その時まで腕を磨きなさい、その剣を褒めたというあの人の言葉を裏切らぬように」


そう言って彼女も立ち去っていった。


「あーあ、誰かさんのおかげで迷宮入りになっちゃった」


そう語ったアーステール様は、たいして残念そうには見えない。

むしろ面倒な事から解放されたと言わんばかりのさっぱりとした表情だ。


「にゃーあ」


主の真似をするようにサフィールが鳴いた、そして身体を長く伸ばして伸びをした。

こんな複雑な事件も、猫にとってはどうでもいい事なんだろうな・・・その気楽さが羨ましい。

ハジャルさんはまだ気持ちの整理が出来ていないようで・・・まだ思い悩んでいるのだろう、難しい顔をしていた。


「・・・悪かったな」

「別に・・・私としては、もうどうでもいい事だもの」

「アーステール様・・・さすがにそれはちょっと・・・」

「いいのいいの、もう私達がこの街にいる理由もないんだから」


運営責任者であるダブラール氏がこんな事になっては、もう武術祭の続行は難しいだろう。

今年の武術祭は中止、下手をすれば来年の開催があるのかどうかも怪しい。

『お役目』もこれまでという事になる・・・私達もホテルに戻って帰りの支度を始めるべきだけど・・・


アーステール様は最後にもう一言だけハジャルさんに伝えた。


「それに・・・どうせその剣が教えてくれるんでしょ?貴方達ってそういう生物よね?」

「・・・!」

「ほらやっぱり・・・本当にそういうノリは苦手だわ、行こうソアレさん」


そのまま踵を返すと、迷わず出口へと歩き出した・・・相変わらず歩く速度が速い。

サフィールもその後に続く・・・モタモタしていると私も置いて行かれてしまいそうだ。


「もう、アーステール様!・・・あの、ハジャルさん・・・何と言えば良いか・・・その・・・」

「いや、もう大丈夫だ・・・ふ・・・たしかに俺は、そういう生物だな」


そう語るハジャルさんは、どこか吹っ切れたような、涼しい顔をしていて・・・

きっとそれが彼本来の顔なのだろう・・・なんとなく私にはそう感じられた。




結局この事件の真相は表に出る事はなく・・・サーラーンが言った通りに、この事件は迷宮入りとなった。

しかし、その後のサーラーンの快進撃を受けて・・・人々の間ではとある噂が囁かれる事になる。


剣聖とサーラーン・・・誰にも邪魔されない場所で、2人だけの決闘が密かに行われたのだ、と・・・


サーラーンがそれを否定することはなかった、文句のある者は剣で語れ・・・彼らしいその態度には賛否両論が巻き起こる。

しかし堂々と真っ向から挑戦者を打ち倒す彼の姿は、新たな剣聖として多くの人々に受け入れられていった。


『真実はその剣だけが知っている』・・・この事件はそんな枕詞と共に、様々な説が人々の間で語られる事になっていく。


この事件の真相を知るものはごく僅か・・・その誰もが、それを語る事はなく。


そして数年後、新たな剣聖に挑む若き挑戦者が脚光を集める事になるのだけど・・・それはまた別の話。



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