散歩の九百九十二話 王妃様の説明と謁見での処分内容
すると、控室に王妃様が姿を現しました。
令嬢は慌てて車椅子から立ち上がろうとしたが、王妃様はニコリと微笑みながら手で制しました。
「王妃様、この度は我が家が大変なご迷惑をおかけし本当に申し訳ありません」
「そなたの謝罪を受け取ろう。家族の罪を把握し、止めようとしたそなたの行為は真似できないものじゃ。こうして話が出来る程回復し、妾もホッとしておる」
王妃様は、令嬢の一連の対応を評価していました。
贖罪の気持ちを持ち、こうして謝罪するのはとても印象が良いことです。
「詳しいことは謁見時に話すとするが、そなたの身分は貴族令嬢のままじゃ。教会にもそのまま所属となる」
「あの、家族が大罪を犯したのに私だけ寛大な処分でいいのでしょうか?」
「逃走を図る家族を止めようとしたのは、大きな評価と言えよう。更に、使用人から信頼を得ておる。それだけで、そなたの人柄がよく分かるのじゃ」
王妃様の言葉に、僕達も頷きました。
だからこそ、わざわざ王妃様が控室に来て事前に話をしてきたのでしょう。
そろそろ謁見の時間になるので、王妃様とスーは控室から出て行きました。
僕たちも、車椅子に乗った令嬢と共に謁見の間に向かいます。
因みに、引き続きシロが車椅子を押します。
「あの、私は……」
「今日は、車椅子に乗ったままで良いことになっています。過去にも同様の例があったそうですよ」
謁見の間に集まっている閣僚も、僕の説明にコクリと頷いていました。
何が何でも膝をつかないといけない訳ではなく、状況に応じて臨機応変に対応しないと。
そして、僕たちも定位置に着いて頭を下げると、程なくして陛下と王族が入場してきました。
「一同、面を上げよ」
陛下の声で、僕たちは一斉に顔を上げました。
直ぐに、王太子様が今回の件について話をします。
「王都で発覚した闇賭博場問題並びに聖教皇国への不正送金について、教会聖騎士団と共に合同捜査を行っている。現在までに発覚した内容にて、暫定の処分を発表する」
普通なら捜査終結後に処分を発表するのだけど、今回は捜査が長期間するのが確定済みです。
なので、確定している罪で仮処分を行います。
「ホルツ子爵は、当主強制交代の上で全ての貴族権限を剥奪する。嫡男は、廃嫡の上で同じく全ての貴族権限を剥奪する。子爵夫人も、全ての貴族権限を剥奪する」
爵位や貴族権限に関するものは、既に仮処分で停止となっています。
今回は、正式に全ての権限などを剥奪すると発表されました。
「ホルツ子爵家当主を、シャーリーとする。なお、捜査終結後に改めて処分を通達する」
「この度は、我が家が大変な罪を犯し、深く謝罪いたします」
そして、令嬢ことシャーリーさんが車椅子に乗ったまま深く頭を下げました。
陛下も満足そうに頷き、これで謁見は終了となります。




