散歩の九百八十六話 ある司教の名前が出てきました
執務室を捜索すると、直ぐに各闇賭博場や犯罪組織とのやり取りを示す書類が見つかりました。
どうやら、随分と悪どく稼いでいたみたいですね。
しかし、執務室からはお金の類は出てこなかったので、逃走する際にお金を持ち出した可能性が高そうです。
そして、ある司教の名前も記載してある書類が出てきました。
この司教の名前は大教会でも聞いたことがないし、詳しくは調査を待たないといけません。
とりあえず、わかった内容を通信用魔導具で逐一報告します。
「シュン、待たせたな」
「すまない、ずっと対応させて」
ちょうどガンドフ様と副団長が執務室に入ってきたので、この司教の名前を確認しましょう。
「副団長様、この司教の名前を知っていますか?」
「うん? どれどれって、やはりそうだったか……」
副団長は、妙に納得したようにウンウンと頷いていました。
どうやら、心当たりがあるようです。
「簡単に言うと、この司教は来年聖教皇選に出馬予定の枢機卿の金庫番だ。以前からその謎の資金力に疑問を持たれていたが、まさか犯罪を犯したお金を集めていたとは」
副団長も、溜息をつきながら通信用魔導具で各所に連絡していました。
この司教は聖職者とは思えないレベルの豪遊をしていたけど、資金力に物を言わせて発言力もあったそうです。
「恐らくだが、聖教皇国では犯罪を犯さずに他国で犯罪を犯していた可能性がある。その辺も含めて、聖教皇国側に調査を依頼した」
後は本国の対応待ちだと副団長が話をしたが、その聖教皇国には僕たちも来年行くから凄く気になる話です。
何にせよ、暫く調査待ちですね。
「ここまでの証拠が出揃えば、あの司祭も言い逃れはできないですね。後は、あの女性の回復待ちですね」
「そうだな、あの司祭のことよりも令嬢を気にかけないとならない。スーに頼んでいるが、シュンも明日も治療の為に様子を見に来てくれると助かる」
ガンドフ様も、物的証拠が溜まっている司祭よりも女性のことを気にかけていた。
何れにせよ、今日の捜索はこれで終わりで明日から再開ですね。
「明日になれば、そのお姉ちゃんとお話出来るかな?」
「きっとお話出来ると思いますよ。シュンさんとアオちゃんが治療したのなら、きっと大丈夫ですよ」
「そーだよね。シュンお兄ちゃんとアオなら、きっと大丈夫だよね」
帰りの馬車内で、シロとスーがお互いにニコリとしながら話し合っていた。
僕としても、その女性と改めて話をしたいなと思っていた。
何にせよ、これから捜査がどう進むのか進捗を見守らないといけないね。




