散歩の九百八十二話 主犯捕縛の打ち合わせ
出された紅茶を飲んで僕たちの気持ちを落ち着けたところで、軍務大臣が説明を始めました。
「軍勢は二手に分けて行動をする。シュンたちと騎士団長の軍勢で主犯の屋敷を、トーリーの軍勢で闇賭博を仕切っている犯罪組織を制圧する」
軍務大臣の説明に、僕たちはコクリと頷いた。
時間が経てば経つほど、相手に逃げられたり反撃の準備の時間を与えてしまう。
今なら、まだ一気に制圧することが可能だ。
「しかし、まさか主犯が聖職者だとはな。教皇猊下にも連絡してあるが、厳しく取り調べてくれと逆に頼まれてしまったよ。聖騎士団の副団長もそろそろ騎士団の施設にやってくるはずだし、合同で動くことになる」
そうです。
なんと、今回の主犯は大教会所属の司祭だったのです。
軍務大臣が頭が痛そうに話をしたけど、僕も押収資料を見て改めて確認した程でした。
だけど、普通の教会の司祭がここまでの大犯罪に手を出すのが少し疑問でもありました。
でも、来年聖教皇猊下を選ぶ選挙があるというのが気にかかります。
何にせよ、詳しいことは主犯を問いただす必要がありそうです。
ガチャ。
「遅くなり、申し訳ありません」
程なくして聖騎士団の副団長が部下を連れて姿を現したけど、副団長の表情はかなり固かった。
きっと、教会関係者が大事件を起こして責任を感じているのでしょう。
「副団長殿、忙しいところよく来られた。思うところは多々あるだろうが、先ずは目の前の事件解決を進めないとならない」
「軍務大臣閣下、ご配慮頂き感謝申し上げます。思いの丈は、主犯である司祭にぶつけます」
軍務大臣と副団長のやり取りを見ても、この問題の複雑さを実感します。
しかし、僕たちはこれ以上被害者を出さないためにも捜査を続けないといけません。
「では、さっそく動きましょう」
「「「はっ」」」
スーの言葉を合図に、僕たちは立ち上がって動き始めました。
因みに、うちの馬二頭はトーリー様と行動するそうです。
この時点で、犯罪組織の壊滅が決定したようなものですね。
僕たちも、馬に乗って騎士団の施設から司祭の住んでいる屋敷に向かいます。
「副団長様、今回の主犯はいわゆる聖職者貴族なんですね」
「ああ、その通りだ。聖職者貴族の中には金にがめついものもいるが、あの司祭は特にその傾向にある」
副団長も聖職者貴族の一人だけど、まさに清廉潔白って感じがするよね。
元々問題がありそうな司祭ってのもあるので、教会もマークしていたそうです。




