散歩の九百七十九話 作戦開始
「皆さま、遅くなりました」
程なくして、赤を基調とした騎士服に身を包んだスーが息を切らしながらガンドフ様の執務室に入ってきました。
律儀なスーの事だから、かなり急いでやって来たんだね。
王女とはいえ姪っ子の行動に、ガンドフ様は思わず目を細めていました。
スーは僕の隣に座り、改めて作戦を聞きます。
「夕方になり、闇賭博場には既に客も入っているという。あと一時間もすれば、闇賭博に関するものも揃うはずだ。各部隊が闇賭博場を制圧し、証拠を押さえたら本命の屋敷に向かう」
「「「はい」」」
軍務大臣の捜査方針に、みんなが頷きながら返事をしました。
既に本命と目されているとある屋敷への監視も行っていて、こちらも目立った動きは起きていないそうです。
地図を参照しながらそれぞれの活動場所を確認し、どうやって行動するか確認します。
「各闇賭博場を制圧したら、私まで連絡するように。その後の指示をする」
軍務大臣は騎士団の施設に残り、この後の指示を出すことになります。
僕たちの準備が整ったので、さっそく騎士団の施設の前に向かいます。
「これより、特殊行動を行う。戦闘が起きる可能性があるが、市民の安全を第一に行動するように」
「「「はっ」」」
ガンドフ様の訓示に、騎士団員や軍の兵は敬礼していました。
部隊は全部で四つに分かれており、闇賭博場に向かう三つの部隊と本命のところに向かう部隊です。
さっそく、それぞれの目的地に分かれて行動することになりました。
「お馬さん、頑張ってみんなを護ってね」
「「ブルル」」
シロの激に、馬も任せろと答えています。
個人的には、やり過ぎ注意と思ってしまいます。
僕たちも、馬に乗って部隊と共に足早に行動を開始しました。
「見えてきました。うーん、普通の長屋の一角にしか見えませんね……」
僕たちがやってきたのは、なんと普通の商店街でした。
スーも思わずびっくりするくらい、本当に普通の商店街です。
夕方を回っているので商店の大半は閉まっており、開いているのは飲み屋のみでした。
しかし、先行して確認しに向かったアオが戻って来ると、状況が一変しました。
「やっぱり闇賭博場なんだって。お客さんもたくさんいるんだってよ」
「既にご盛況ってわけか。じゃあ、予定通り動きますか」
僕の合図で、兵は長屋の周囲を固めて逃走防止の対応を取ります。
これから突入しますと通信用魔導具で軍務大臣に連絡し、直ぐに突入許可が降りました。
では、作戦開始ですね。




