散歩の九百七十話 意外な戦力
「あの、私はどのようにすればいいのでしょうか?」
玄関ホールに入ったところで、嫡男夫人が心配そうな表情をしながら僕に話しかけてきた。
今後のこともあるから、その辺りの話をしないと。
「基本的には普通に屋敷で暮らして頂いて構わないのですが、指示があるまで屋敷から不用意に出ないで下さい。捜索は暫く続くと思いますが、大半は今日中に終えますので」
「教えて頂きありがとうございます。軍の指示に従うようにいたします」
この辺りの流れは、どの屋敷に捜索に行っても同じなんだよね。
勝手な行動さえとらなければ、屋敷の中だけどある程度の自由はあるんだよね。
元気の良いこの男の子の面倒を見てくれれば大丈夫だし、この嫡男夫人なら大丈夫な気がしました。
「ご実家には既に伝令を出しております。捜査が終われば、接触は可能となりますので」
「色々とご配慮頂きありがとうございます」
こんな感じで話を進めていたら、例の元気な男の子の姿がなかった。
どこに行ったのかなと思ったら、どうやら執務室に行っているみたいです。
僕たちも執務室に行ってみると、机の下で小さなお尻がゴソゴソと動いていました。
「あたー!」
「子どもというのは、意外と良く見ているのう。これもありがたく頂こう」
複雑な表情の王妃様は、ニコニコしている男の子から机の裏に隠されていた書類を受け取っていた。
どうやら、祖父と父親がどんなところに書類を隠していたのかを見ていたみたいです。
もしかしたら、男の子のいる前で堂々と隠していた可能性もあります。
子どもは、意外と色々なことを覚えているもんですね。
「自らの家の罪を積極的に暴いたという功績にすることができるのう。重要な書類が、どんどんと出てくるのじゃ」
形は何にせよ、祖父と父親の不正の証拠を見つけて報告しているのは間違いない。
アオと兵も一緒に証拠を探していて、嫡男夫人はガンドフ様から改めて今後の流れについて説明を受けていた。
問題のある使用人も全て捕まったし、一時間程でだいたいの作業が完了しました。
ガンドフ様とこの後のことを話し、僕たちは騎士団の施設経由で王城に戻ることになりました。
「この度は、大変なご迷惑をおかけし申し訳ありません。改めて謝罪いたします」
「ばいばーい」
頭を下げる嫡男夫人と、抱っこされて僕たちに手を振る男の子に見送られながら、僕たちを乗せた馬車は出発しました。
結果的に、午前中で殆どのことを終えることができたのが幸いだった。
僕としてはあの執事が残した言葉が気になったが、それは偉い人も交えて王城で話すことになった。




