散歩の九百六十九話 執務室にいたもの
一瞬瀕死状態に陥ったローラン伯爵は、拘束されて担架で運ばれていきました。
周囲にいる使用人も恐慌状態になってプルプルと震えている人がいるので、鑑定で確認して問題ない人は治療します。
問題があると確認された人は拘束した上で治療していたけど、使用人は殆ど問題のある人はいなさそうです。
そして、僕たちはある意味本拠地と言える執務室に入りました。
ガチャ。
「これはこれは、王妃様、シュン様、それにガンドフ様ではありませんか」
「あばばばば……」
「うぐぐぐ……」
執務室の床にはローラン伯爵そっくりの男性と、執事服を着た初老の男性が震えながら倒れていました。
そんな中、何と人神教のあの執事がすくっと立っていたのです。
これには、僕たちも正直ビックリです。
シュイン。
「皆さま、ご安心くださいませ。今回は何もしておりません。というか、何もできませんでした。私の忠告を無視して暴走した結果といえましょう。それでは、来年聖教皇国でお会いしましょう」
「まて……」
シューン。
執事は僕たちに恭しく礼をしながら、どこかに転移していきました。
聖教皇国って、来年僕やスーが招かれているところだよね。
ということは、人神教絡みで何かがあるのは間違いなさそうです。
でも、今は目の前の事件に注力しないといけません。
「人神教の幹部と接触し、何かをしようとしたのは明白じゃ。嫡男と執事を拘束し、厳しく取り調べるように」
「「「はっ」」」
「「あばばば……」」
王妃様も、直ぐに気持ちを切り替えて兵に指示を出しました。
嫡男と執事はまだ体が震えて動けないけど、そのうち治るだろうと王妃様の指示で治療はしませんでした。
執務室内の捜索はガンドフ様と王妃様に任せ、僕とアオは屋敷内の問題のない使用人への治療を続けました。
ある程度治療を進めたところで、僕は庭に出てスーのところに合流します。
「スー、大体終わったからそろそろ中に入ってもいいよ」
「お義母様の凄い殺気が出ていましたけど、やはりローラン伯爵は何かをしようとしたのですね」
屋敷の外でも感じるくらい王妃様の殺気は凄かったし、何かあったと判断するには十分な材料です。
人神教の例の執事については、王城に行ってからスーに話をしよう。




