散歩の九百六十八話 ローラン伯爵家に突入です
「スーよ、嫡男夫人と孫の側にいるように。襲ってくるものは撃退するのじゃ」
「畏まりました」
スーなら、ある程度のものは簡単に撃退できる。
兵もいるし、きっと大丈夫ですね。
僕たちは、鍵が開いている玄関から屋敷の中に入りました。
「王家より宣告する。これよりローラン伯爵家に対する強制捜査を行う。関係者よ、直ぐに来るのじゃ!」
「「「びくっ!」」」
突然僕たちが屋敷の中に入ったと思ったら、王妃様が大声で強制捜査を宣言した。
その場にいた使用人は、突然のことで思わず体がすくんでいた。
ダダダダ。
「これは、いったい何事……王妃様?」
「そうじゃ、妾じゃ」
この屋敷の主が、足音を踏みならし顔を真っ赤にしながら現れた。
流石に王妃様がこの場に現れるとは思ってもなく、ポカーンとした表情に変わった。
そして、次第にヤバいという表情に変わっていった。
しかし、悪い事をする貴族ってなんでみんな貴族服がはち切れそうな程でっぷりと太っているのだろうか。
「ローラン伯爵、これより強制捜査を行う。屋敷の関係者は応接室に集まるように」
「強制、捜査?」
王妃様がズバッと強制捜査命令書を突きつけたが、肝心のローラン伯爵は何が何だか全く分かっていなかった。
「ローラン伯爵、耳が遠くなっかえ? スラム街で行われた犯罪組織への捜査で、ローラン伯爵家と繋がる証拠を多数押収した。その罪は明白である」
「えっ、えっ?」
駄目だこりゃ。
ローラン伯爵は、未だに何が何だか分かっていなかった。
これで王太子様の補佐をしようとしたのかよ。
僕の隣にいるガンドフ様も、もはや呆れた表情だった。
ズゴゴゴゴ……
あーあ、どうやらローラン貴族は怒らせてはいけない人を激怒させちゃったみたいですね。
「ローラン伯爵、貴様はふざけているのかえ?」
「いえいえ、ふざけてはおりません。しかし、貴族の中の貴族たる我が家が、何故強制捜査を……」
「たわけ、小童が!」
ローラン伯爵が余計なことを言ってしまったので、遂に王妃様の怒りが爆発してしまった。
王妃様の怒りの咆哮で、巨大なローラン伯爵の体が一瞬吹き飛んだ気がした。
ローラン伯爵は廊下に転がって動けないでいるが、王妃様から漏れる殺気は留まることを知らなかった。
「何故不正を働いているのに、捜査を受けないと妾に言うのじゃ。公然と、王家に対して反抗していると言っているようなものじゃな。これは、反逆罪も視野に入れないのならないのう……」
「ブクブクブク……」
あ、ヤバい。
ローラン伯爵は、王妃様の殺気をモロに浴びて胸を押さえながら口から泡を吹き出しているよ。
急いで治療を行ったけど、ローラン伯爵は本当に心臓が止まりそうだったよ。
王妃様の殺気は、非殺傷設定ではなかったね。




