散歩の九百六十五話 あっという間の制圧劇
シスターさんと話をしつつ、最近のスラム街の情報を聞いてみます。
「最近は新しい不審者がスラム街を出入りしています。そのために、住民に不安が広まっております」
不審者が出入りしている場所は、まさにこれから捜査を行うところだった。
となると、新しい犯罪組織の拠点で間違いなさそうです。
話を聞いていたアオは、シスターさんに敬礼のポーズをしてから教会を出て馬のところに向かった。
アオが料理ができるのをシスターさんは知っているので、不思議なスライムだと改めて思っていた。
そんな中、シスターさんが僕にあることを聞いてきた。
「シュン様は、別の教会での奉仕作業の際に若い母子を保護されたと聞いております。その後、無事なのでしょうか」
「ベリアさんとガイちゃんのことですね。ベリアさんは元気になって屋敷で働いていますし、ガイちゃんも屋敷の中を走り回っていますよ」
「そうでしたか。それは良かったです。シュン様のところにいるのなら、私たちも安心ですね」
昨年末の炊き出しはスラム街で数多く行われたが、その分考えさせられることもたくさんあった。
孤児院に送られた孤児も元気よく過ごしているらしく、僕もホッとしています。
ズン。
こうしてシスターさんと話をしつつアオの偵察を待っていたら、教会の外からとんでもないプレッシャーが発せられたのです。
ガンドフ様も直ぐに気付き、教会の外に出ます。
すると、トコトコとアオを乗せた馬が戻ってきました。
「えーっと、アオが潜入したら魔導具が複数置いてあったそうです。爆発系の魔導具も含まれていて催眠魔法などを使うと危ないから、馬と一緒に犯罪組織の拠点に向けて殺気を放ったそうです」
「それで、あれだけのプレッシャーを感じたのか。殺気を放つだけだから非殺傷とはいえ、中にいた構成員はたまったもんじゃないだろうな」
僕の話を聞いて、ガンドフ様は思わず苦笑していました。
そして兵に指示を出して建物の中に突入したら、腰を抜かして動けない多数の犯罪組織の構成員を発見したそうです。
アオも再び拠点の中に入り、爆発型魔導具に備え付けられていた魔石を外しはじめていました。
既に護送用の馬車も用意してあるのだけど、犯罪組織の構成員は軒並みガタガタと震えていますね。
馬が本気で拠点に向けて殺気を放ったらしく、その威力はご覧の通りだった。
「新しい拠点の制圧の仕方だな。まあ、使えるものは限られるがな」
ガンドフ様は、震えている構成員を見てまたまた苦笑してしまいました。
うーん、ある意味うちの馬に新たな武器ができてしまったようだ。




