散歩の九百六十三話 ローラン伯爵の情報その二
アオには夜のうちにローラン伯爵家に侵入してもらい、翌朝王太子様の執務室でどんな事があったのか報告してもらいました。
「なになに、『ローラン伯爵と人神教との繋がりが疑われた。どうやら、あの執事がローラン伯爵と接触している模様だが、何をしようとしているのかまでは分からなかった』。やはりそうか。軍でもローラン伯爵への偵察を強化するとするか」
最初に人神教に関する報告があったけど、やはりという結果だった。
報告を聞いた王太子様はもちろんのこと、僕とスーも人神教と接触をしないとローラン伯爵が力を持つことはないと考えています。
「『ローラン伯爵は、人神教とは別のスラム街にある犯罪組織と結託して資金を得ている。集めた資金を何かには使っていないようで、蓄財だけしているという』。人神教に資金が流れる可能性がある。この犯罪組織を皮切りに、ローラン伯爵を攻める口実ができるな」
犯罪組織の名前も分かっていて、直ぐにでも調査ができるという。
すると、同席していたガンドフ様がその犯罪組織の名前を聞いて何か思い出したみたいです。
「確か、その犯罪組織は最近王都各所での犯行が目立っております。急に勢力を拡大したと不審に思っておりましたが、その様な背景があったのですな。ちょうど調べている案件がありますので、そこからローラン伯爵を突く事ができます」
「よし、騎士団長に対応を一任するがシュンとアオも調査の手伝いをするように。そうだな、手伝っていた騎士団の経過を確認するためという口実にしよう」
犯罪組織が力を得れば、自ずとどこからかボロが出てくるものだと王太子様は頷いていました。
今日は朝一の書類整理が終われば時間が空くので、早めに軍の施設に行くことになった。
そして、ローラン伯爵の孫に関してもアオから報告があった。
「『嫡男自身はローラン伯爵の影響を受けて貴族主義だが、孫の男の子は嫡男の嫁の影響を受けて優しい性格の子どもらしい。しかし、ローラン伯爵はその事を気にいらず、まだ幼い孫と嫡男の嫁を引き離そうとしている』。母子を強引に引き離して都合の良い教育をするなど、あってはならんものだ」
いくら当主とはいえ、まだ幼い子どもに強引に関与するとその後の成長にも影響が出てしまう。
王太子様だけでなく、スーもこの事にかなり危惧をしていた。
「何にせよ、奴が謹慎中にある程度の証拠を固めるとする。ここ数日が勝負となるが、各自抜かりなく対応するように」
「「「はっ」」」
こうして、ローラン伯爵への対応が正式に決まり、僕たちも動き出すことになりました。
因みに、ちびっ子たちは勉強がお仕事なので今回の作戦には参加しない予定です。




