散歩の九百六十話 ちょっとは大きくなったかな
更に一週間が経ち、赤ちゃんオオカミも少しずつ動きが活発になってきました。
でも、まだ体が小さいので遊んであげる時間はほんの少しです。
そんな中、赤ちゃんオオカミにも少し個性が現れてきました。
ちょいちょい、ちょいちょい。
「「あうっ?」」
黒毛からクロちゃんと名付けられた赤ちゃんオオカミは、寝床になっている大きめのバスケットから出されるとガイちゃんとブレアちゃんの尻尾にちょっかいを出していました。
クロちゃんは好奇心が旺盛みたいで、ガイちゃんとブレアちゃんが尻尾を動かすと甘噛みしたり前足でちょいちょいとしたりします。
なんというか、とってもほのぼのとする光景ですね。
「それで、ムギちゃんはずっと抱っこをねだってくるのですか?」
「どうやら、他の人にも抱っこをねだってくるみたいです。少し甘えん坊な性格ですね」
焦げ茶の毛色からムギちゃんと名付けられた赤ちゃんオオカミは、ベリアさんに抱っこされながら安心しきった表情を見せていました。
因みに、ムギちゃんが抱っこをねだるのはあくまでも屋敷の一員だけです。
クロちゃんと違って、ムギちゃんはのんびり屋の甘えん坊みたいです。
それでも、二匹はとても仲が良いみたいですね。
「もう少しすれば、部屋の中を散歩させたりできますね。外に出すにはもう少しかかりそうですが、庭で散歩させてあげたいですわ」
「キューン」
スーは、ベリアさんからムギちゃんを受け取って抱っこしながら話しかけてあげていました。
時期的には冬前になっちゃうけど、それでも屋敷の外を散歩させるのはいい経験になると思います。
その前に、体を大きくさせないと駄目ですね。
「すー、すー」
「「あー」」
ふとガイちゃんとブレアちゃんが声をあげたかと思うと、二人の尻尾にじゃれついていたクロちゃんがスヤスヤと寝息を立てていました。
一生懸命に遊んでいて、疲れちゃったみたいですね。
「クロちゃんのことを教えてくれたのね。二人とも偉いわ」
「「あー!」」
ニコリと微笑んでいるベリアさんに頭を撫でられて、二人はとてもいい笑顔です。
その間に、クロちゃんをいつもの寝床に寝かせてあげます。
ムギちゃんもスーの腕の中で寝ちゃったので、一緒に寝かせてあげました。
「ガイちゃんもブレアちゃんも、もう少ししたらクロちゃんとムギちゃんと遊んであげてね」
「「あうあう」」
僕も二人の頭を優しく撫でていたけど、二人の視線は寄り添って寝ている赤ちゃんオオカミに向けられていました。
あと一週間もすれば、一緒に簡単な遊びもできるでしょうね。




