散歩の九百五十一話 スーの座学講座
「それでは、これから座学を始めます。皆さん、冒険者登録した時に配布された冊子を準備して下さい」
僕が話そうと思ったら、そのままスーが説明を始めました。
取り敢えず、そのまま進めちゃいましょう。
すると、最後列にいる三人の男性冒険者の机には何も出てきません。
もちろん、スーも三人の様子に気が付きました。
「おや? 最後列の三人の机の上には何も出ていませんが、いったいどうしたのですか?」
「「「その、す、捨てました」」」
三人はバツの悪そうに返事をしたけど、何となく予想はついていました。
スーも、そのまま淡々と話を進めます。
「では、後ほど受付に申請して再度受け取って下さい。この冒険者の冊子には、冒険者の心構えや守るべきこと、更には薬草情報や魔物情報も載っています。私もこうして無くさないように大事にとっていますが、皆さんも無くさないようにして下さい」
「「「はい!」」」
ジェフちゃんを始めとするちびっ子たちも、スーの話を聞いて元気よく返事をしていました。
この辺は基本的なことなので、守らないといけないね。
「冒険者といえども、数ある職業の中の一つにすぎません。当たり前のルールを守らないと、冒険者ライセンス停止などの処分を受けます。残念ながら、不正をして冒険者ライセンス剥奪になった人を私は目の当たりにしました」
全員がスーの話を真剣に聞いているけど、一年間王国内を回って様々な人に会ったよね。
自分勝手な冒険者は、潰れていった気がします。
「時間を守ること、礼儀作法をキチンとすること、冒険者ギルドとの連絡をキチンとすること。全て、人として当たり前のことです。新人冒険者はまだ実力が伴わないことが多いですが、その分誰でも当たり前にできることを行いましょう。依頼主や冒険者ギルドから信頼を得ることは、新しい依頼へと繋がります」
冒険者としてではなく、人として当たり前のことをすることができない人がいるんだよね。
どうしてできないのって、逆に疑問に思うんだよなあ。
「また、夢を持つことは大切ですが、夢にとらわれてはいけません。一攫千金を夢見て無理な依頼を受けて大失敗を冒した冒険者も数多くいます。新人冒険者で一攫千金をなし得る人は、ほぼいません。自分の実力をよく知り、自己研鑽に励んではじめて大きな報酬を得るのです。また、お金は人を変える魅力を持っています。その魅力にとらわれないで下さい」
「「「はい!」」」
冒険者も、あくまで人にすぎません。
欲望に飲み込まれたら、一環の終わりです。
自分は大丈夫だろうと思うのが一番危ないんだよね。




