散歩九百四十九話 みんなはどこにいるかな?
「グロー伯爵領のギルドマスターの仕事ぶりを聞いて、私は即座に職務の停止を言い渡した。そして、当面研修を受けさせることになり、この王都冒険者ギルドの地下にある一室で勉強から始めている。知識面ではなく、主に精神面を鍛えさせているけどね」
どんな訓練をしているのか怖くて聞けないけど、クエーサーさんも相当怒っているみたいです。
表情こそいつもの穏やかな感じなのに、怒りの波動が伝わってきます。
「あと、ギルドマスターの実家に連絡して今回の不祥事の件を伝えた。当主はカンカンに怒っていて、処分はこちらに任せると言っていた。当主に一筆書いてもらいギルドマスターにその手紙を見せると、信じられないって表情をしながら崩れ落ちていたよ。恐らく、自分は貴族の子弟だからある程度の事は許されると思っていたらしい」
クエーサーさんがため息をつきながら話してくれたけど、確かに本人は貴族の子弟だというプライドが大きかったのかもしれません。
それが、自分勝手な行動に繋がった可能性は高そうです。
でも父親である当主は冒険者ギルドを敵に回す意味をよく理解していて、息子の行動に激怒したんだ。
もしかしたら、父親と息子の間で確執があったのかもしれません。
いずれにせよ僕たちができることはないし、後は冒険者ギルドにお任せですね。
「私たちとしては、グロー伯爵領の冒険者ギルドをきちんと支援して頂ければ問題ございません」
「ご心配頂き、ありがとうございます。追加の職員も派遣し、対応にあたらせています」
スーだけでなく僕たちもグロー伯爵領の冒険者ギルドを手伝っていたので、グロー伯爵領の冒険者ギルドの状況は知っています。
職員が安心して働ける環境を作らないといけませんね。
話はこれくらいにして、僕たちはグランドマスターの部屋からちびっ子たちのところに合流することになりました。
今は一階にいるそうなので、僕たちは急いで移動しました。
「あっ、帰ってきたー!」
「「「おかえりー」」」
ジェフちゃんを始めとするちびっ子たちが僕たちの存在に気がつき、一斉に声を上げました。
今は受付がどんな対応をしているかをゴーキさんが説明していて、繁忙期も過ぎたのか冒険者の数もかなり少なくなっていました。
そんな中、ゴーキさんが驚きの発言をしました。
「シュン、新人冒険者が多いからちびっ子たちも一緒に講習を行なってやれ。冒険者の説明を聞く良い機会だ」
「「「おー!」」」
新人冒険者が三十人近くいて、しかも講習経験のある上位冒険者がいないそうです。
ちびっ子たちはかなり盛り上がっていて、スーも仕方ないねと言った表情です。




