散歩の九百三十三話 慰問兼治療です
ジェフちゃんは、頭の上にアオを乗せて王妃様とスーと仲良く手を繋いでいました。
近衛騎士だけでなく、馬も治療施設まで僕たちを護衛していました。
とはいえ、僕も周囲を確認したけど特に問題なさそうです。
すると、ジェフちゃんがこんな事を王妃様に聞いてきました。
「おばーさま、怪我をした人の治療はしないの?」
優しいジェフちゃんだから、慰問だけでは怪我人は治らないと思っているのでしょうね。
王妃様は、少し考えてからこんな返事をしました。
「ふむ、ジェフが問題ないと思うものは治療しても良いぞ」
「はーい!」
ジェフちゃんだけでなくアオも触手を上げながら返事をしているので、きっと治療対象者は問題ないですね。
今日は重症者から慰問に訪れるそうなので、さっそく治療施設に入ります。
すると、ジェフちゃんは最初の部屋の前でいきなり立ち止まりました。
「うーん、何だか嫌な気配がするよ……」
「ふむ、合格じゃ」
ジェフちゃんがこぼした言葉に、王妃様が何故か褒めていました。
なんだろうなと思い、僕はドア越しに中にいる人へ鑑定魔法を使いました。
シュイン、もわーん。
「王妃様、中にいる人はゲンジー伯爵と出ておりますが……」
「うむ、その通りじゃ。奴は問題のある貴族で、傍若無人な振る舞いをする。それに、ただの風邪なのに個室にしろと喚いていたそうじゃ」
王妃様の身も蓋もない言葉に、隣にいたシスターも思わず苦笑していました。
とはいえ、既に健康体と表示されていたしこのまま通過でよいでしょう。
その後は普通の町の人が入院していたのだけど、ジェフちゃんはニコリとしながら挨拶をしていました。
アオで治せる範囲の病気や怪我なので、患者も体が良くなってビックリしていました。
今度は大部屋に移動して慰問に行ったのだけど、ここではスーも患者と話をしながら治療をしていました。
ジェフちゃんも張り切ってお話と治療をしていて、患者も思わずニコリとしていました。
そんな中、シスターさんが王妃様にある事を言ってきたのです。
「王妃様、その、ゲンジー伯爵様が慰問に来ないと暴れておりまして……」
「暴れるとは、また元気なことよ。妾が向かうとしよう。シュンよ、ポーションと毒消しポーションを用意するように」
仮に病人なのだから、治療で暴れちゃ駄目でしょうが。
黒い笑いをする王妃様の事を、僕もスーも止めることはできませんでした。
そして、個室の一室から誰かの叫び声が聞こえてきたけど、特に気にしなくていいですね。




