散歩の九百三十話 財務執務官の執務室へ
とぼとぼと項垂れるちびっ子たちを見送った後、僕たちは財務調査官の執務室がある財務部門に向かいました。
スーも公務まで時間があるそうなので、僕たちの後をついてきました。
すると、兵が捕まった財務調査官の捜索を行う傍らで、他の財務調査官が忙しそうに仕事をしていました。
二十人を超える財務調査がいるけど、そろそろ徴税の時期だからまさに繁忙期なのだろうね。
スーが財務調査官のトップである首席財務調査官のところに向かうと、相当疲れた表情の首席財務調査官が僕たちを出迎えてくれました。
「繁忙期のお忙しいところ、お手数おかけします」
「こちらこそ、スーザン殿下を始めとする方々にご迷惑をおかけしました。お座り下さい」
僕とスーは、首席財務調査官の勧めで応接セットのソファーに座ります。
シロとアオは、兵と調査を始めていますね。
「今回捕まった財務調査官は、元々少し問題を抱えておりました。財務調査官採用試験もギリギリの合格で、ミスもかなりありました。我々も研修などでできる限りのサポートをしたのですが、残念ながら成果は乏しいものでした」
首席財務調査官は紅茶を一口飲んでから色々と話をしてくれたけど、どうやら中々大変な部下だったみたいですね。
ただ、上司としてはできる限りの事をしていたみたいです。
「私は対象の財務調査官の異動を検討したのですが、本人がもう少し頑張ると言い出したのです。そこで、私たちはもう少し様子を見ることにしました」
「その財務調査官は、実は貴族に付け込まれて不正に手を出していたと。タイミングが悪いとはいえ、何ともいえませんね」
「本当にその通りです。幸いにして本人が担当していた貴族家は少なかったので、捕まった影響はほぼありません。そもそもが、担当していた貴族は再度の財務調査になりますが」
首席財務調査官は、ハンカチで汗を拭きながら僕の質問に返事をした。
特にグロー伯爵家は、財務調査をするのにかなりの時間がかかりそうです。
財務担当の負荷は、まだ暫く上がりそうですね。
「あっ、何かあったよ!」
すると、調査を行っていたシロが、机と床の僅かな隙間から書類を見つけたのです。
犯行を裏付ける書類らしいけど、捕まった財務調査官自身もこの書類の事を忘れていそうです。
「うーん、もうなさそうだね。多分、ここには悪いものはないと思うよ」
シロだけでなく、アオも捕まった財務調査官の執務机周辺はもうないと触手をフリフリとしていた。
するとシロたちは、今度はロッカールームに向かっていった。




