散歩の九百二十七話 伯爵と嫡男は二面性を持っていた
「その、お義父様と旦那様は表面上はとても良い方で、息子が生まれた時もとても喜んでくれました。しかし、先ほど連行された際に『何故バレた?』という表情をしていまして……」
どうやら、捕まった伯爵と嫡男は嫡男夫人に仮面の姿を見せていたみたいだ。
連行される際の反応を見るに、二人は仮面の姿に余程自信があったのだろう。
だからこそ、嫡男夫人のショックもかなり大きいのだろうね。
赤ちゃんを抱きしめながら涙する嫡男夫人を見て、僕もスーもなんとも居た堪れない気持ちになります。
更に、どうやらシロたちが執務室の捜索と合わせて伯爵と嫡男に関与したと思われる使用人を見つけているらしく、屋敷内は混乱の渦にあるそうです。
「先ずは、ご自身のお体と赤ちゃんの健康を第一に考えて下さい。話を聞くことはあるかと思いますが、できるだけ配慮しますので。使用人の捕縛が終われば、屋敷の中も落ち着きます。ゆっくりすることは中々難しいですが、心と体を休めることも大切です」
「ありがとうございます……」
「あぶ!」
嫡男夫人は、元気よく手を動かす赤ちゃんを抱きながら、涙ながらに僕に頭を下げてきました。
通信用魔導具で各所に連絡したけど、王太子様も罪のない人にまで罪を被せることはしないという。
この辺は、あのグロー伯爵の息子の件と同様ですね。
ガチャ。
「「「終わったよー!」」」
大体の話が終わったところで、シロたちが応接室に入ってきました。
どうやら屋敷の捜索と不審者探しを終えたらしく、とてもいい表情をしていました。
すると、シロたちは嫡男夫人が抱いている赤ちゃんに目が釘付けになりました。
うちにもブレアちゃんたちはいるけどもう歩いているし、まだ首がすわったくらいの小さい赤ちゃんなので余計に可愛いと思ったみたいです。
「あの、赤ちゃん抱っこしてもいいですか?」
「ええ、いいですよ。優しく抱っこしてね」
「あうあう」
最初にシロから赤ちゃんを抱っこするけど、赤ちゃんはぐずることなく興味深そうにシロの顔を見ていました。
フランたちも、バタバタと手足を動かす赤ちゃんを見てにっこりとしていました。
嫡男夫人も、息子を囲むシロたちを見てようやく笑顔になってくれました。
僕とスーも、ニコニコな光景を見てようやくホッと胸を撫で下ろしました。




