散歩の九百二十三話 王妃様の尋問
王妃様は、くいっとあるところに視線をむけました。
すると、軍の幹部が一斉にスペースを空け、グロー伯爵が溜め込んだ金品の数々がドーンとお目見えしました。
グロー伯爵は、「あっ……」と言葉を漏らしたまま固まってしまったのです。
とはいえ、滝のような汗を流しているのを見れば、この金品が本人のものだとある意味証明していた。
「グロー伯爵、民の貴重な税を不正に蓄財し、随分と私腹を肥やしていたようじゃのう。しかも、国に税の虚偽申告をしていた上に帳簿管理もできておらぬ。これでは、統治失格だと言わざるを得ないのう」
「は、は……」
王妃様の冷たい視線と口調に、グロー伯爵は過呼吸寸前だった。
しかし、この程度で王妃様の追求が止まることはない。
グロー伯爵は、まだまだ罪を重ねている。
「妾の可愛い義娘のスーに、グロー伯爵は何をしたかのう。執事も監査役のシュンに切りかかったらしいが、揃いも揃って馬鹿とは恐れ入るのじゃ」
「へ、へは……」
王妃様は、実の娘ではないのにスーの事を可愛がっているもんなあ。
そのスーをグロー伯爵が襲ったとなれば、王妃様が激怒するのは必然だ。
グロー伯爵がとうとう過呼吸になったけど、放置してそのまま話を進めた。
「グロー伯爵は実の息子を毒殺しようとしたらしいが、そもそも毒物を持っている事自体が違法じゃ。どうして実の息子を殺そうとしたのか、妾もじっくりと話したいのう。ふふっ」
「う、うぐ……」
あっ、王妃さまの最後のダークな笑いに耐えきれず、グロー伯爵はとうとう気絶した。
他のグロー伯爵の関係者もガタガタと震えているけど、個人的には素直に全てを話せばちょっとは楽な聴取になると思うよ。
「こやつらを重犯罪者牢にぶち込み、厳しく取り調べるのじゃ。グロー伯爵は既に貴族権限の一切を停止しておる、手加減は無用じゃ」
「「「はっ」」」
グロー伯爵と関係者は、担架に乗せられて連行された。
特に、グロー伯爵への取り調べは苛烈になるだろうな。
そして、僕たちが押収した金品や証拠品もドンドンと倉庫に運ばれていった。
「ジェフも、他の者もよく見るが良い。あれが罪を犯した者の末路じゃ。罪を犯せば、相応の罰を受けなければならぬ。心に深く刻み込むように」
「「「はい!」」」
なんというか、子どもたちにとっても良い勉強の教材になっているよ。
王妃様も、良いことばかりではないと教える良いタイミングだったのかもしれない。
細かいところは成長してからになると思うけど、それでも悪は罰せられる良い例なのは間違いなかった。




