散歩の九百二十一話 王都に到着です
ズドドドドドドドドドドドドド。
「は、速い、とんでもなく速いぞ!」
僕たちを乗せた馬車と護送用の幌馬車は、馬車とは思えないとんでもないスピードで街道を駆け抜けていきました。
御者をする近衛騎士は、あまりの速さにうちの馬を操るので精一杯でした。
まあ、うちの馬なら制御なしでも勝手に走っているけどね。
勿論、街道を走る他の馬車にぶつからないように周囲の安全に気をつけていました。
「気のせいか、昨日よりも速い気がしますぞ……」
「その、うちの馬は賢いので道を覚えたからだと思いますわ」
ホーネット男爵が驚いた様に馬車の窓を眺めていたが、明らかに流れる景色の速さが昨日よりも凄かった。
スーも若干驚き気味でホーネット男爵に返事をしていたけど、この分だと夕方じゃなくておやつの時間に到着しそうだよ。
僕も、苦笑しながら通信用魔導具で関係者に予定よりも早く到着すると連絡した。
すると、これまた信じられないような返事が帰ってきた。
それでもうちの馬は街道を爆走し、本当におやつよりも前の時間に王都に着いてしまった。
パカパカパカ。
「はあ、はあ。よ、ようやく普通の速さに……」
「生きているって、素晴らしい……」
御者をしていた近衛騎士は今まで経験した事のない速さで爆走した馬車を操っていたので、完全に披露困憊だった。
アオが回復魔法をかけたので筋肉痛とかは大丈夫だけど、後でスーから特別褒賞を出してもらうようにお願いしよう。
そして、この猛スピードにも関わらず、グロー伯爵とその関係者はぐっすりと気持ちよく寝ていたという。
パカパカパカ。
「「「あっ、来たよー!」」」
軍の施設に到着すると、まさかの人たちが僕らを待っていた。
なんとフランたちが軍の施設に姿を見せていたのです。
今日は、ジェフちゃんと一緒に勉強で一緒に王城にいたはずです。
というか、ジェフちゃんや他の子の姿もありますね。
馬車から僕たちが降りると、一斉に僕たちの方に走ってきました。
「「「おかえりー」」」
「ただいま。寂しい思いをさせてしまったわね」
みんなが僕たちに抱き着いてきて、スーもみんなの頭を優しく撫でていました。
抱きつく力が強いので、寂しい思いをさせてしまったのは間違いなさそうだ。
「しかし、本当におやつ前に着くとは。やはり、この馬は凄いな」
「「ブルル」」
王太子様も姿を見せていて、あれだけ爆走したのに平然としている馬に関心を寄せていた。
まあ、うちの馬にとってこの程度は余裕だろう。
「殿下、報告しておりますが本当に酷い状態になっておりました」
「私も報告を見て愕然とした。さっそく、馬鹿の顔を拝まないとならない」
あっ、ホーネット男爵が王太子様に話しかけたら、明らかに王太子様の機嫌が悪くなった。
とはいえ、全てグロー伯爵の自業自得なんだよね。




