散歩の九百十九話 護送準備開始
そして、トーリー様がグロー伯爵にある事を通告しました。
「これより、グロー伯爵並びに執事を王都に護送する。より厳しい取り調べを受けるだろう」
「ふざけるな!」
おお、トーリー様がグロー伯爵に護送を通告すると、グロー伯爵はまた顔を真っ赤にして掴んだ檻をガンガンと揺すっているよ。
顔が青くなったり赤くなったり、忙しい人ですね。
でも、このままだと護送できないので、グロー伯爵にある魔法を使います。
僕は、グロー伯爵に向けて手を伸ばしました。
シュイン、もわーん。
「貴様、俺になに、を……ぐぅ」
僕は、闇魔法の一種の睡眠魔法をグロー伯爵に放ちました。
グロー伯爵も一瞬罵声を上げたけど、崩れるように寝ています。
そのまま手足を縛り上げて、担架に乗せました。
執事もアオがササッと魔法で眠らせていて、他にも主導的な役割を果たした家臣や関係者も眠らせて拘束しました。
これで、準備の第一段階は完了です。
次に、うちの幌馬車に乗せるので、全員を担架に乗せて牢屋から外に出します。
「よいしよっと」
シュイン、ドサッ。
「「「……」」」
僕は守備隊の詰所の前に移動すると、アイテムボックスからいつも使っている幌馬車を取り出しました。
大きな物をアイテムボックスから取り出したので兵が若干引いているけど、気にしないでもらいましょう。
「よし、どんどん幌馬車の中にはこ……」
「あっ、グロー伯爵とかを持ち上げるのは大変だと思いますので、僕とアオの念動で入れますね」
「「「はっ?」」」
僕がトーリー様に声を掛けると、グロー伯爵を持ち上げようとした兵も思わずビックリした表情のまま固まっちゃいました。
あんな巨体なグロー伯爵を、無理して人の手で幌馬車に上げないほうがいいですよ。
僕とアオは、一回一回は面倒くさいので全員を一気に念動で運ぶことにしました。
シュイン、ふわー。
ドサッ。
「ふう、これで完了ですね」
「「「……」」」
全員を纏めて幌馬車の中に入れ終えて、僕とアオは一仕事を終えたと清々しい気持ちになりました。
一方で、トーリー様と兵はなんじゃこりゃって表情をしていますね。
パカパカパカ。
「ブルル」
そして、馬に事前に話をしておいたので、一頭がパカパカと普通に歩いてきました。
「お馬さん、大きい人もいるけど大丈夫?」
「ブルル!」
念の為にシロが馬に確認をしていたけど、馬はこの程度問題ないって言っていますね。
そのまま、馬と幌馬車を接続します。
「殿下、いつもこんな感じなのですか?」
「えーっと、今日は控えめかと思います」
「そ、そうですか……」
トーリー様は、何だか呆然としながらスーに話しかけていました。
僕としては、このくらいはいつもやっていると思うんだけどなあ。
何れにしても、王都への出発準備は完了です。
僕達も、馬車に乗り込んで一旦屋敷に向かうことにしました。




