散歩の九百十八話 牢屋にいるグロー伯爵と会います
グロー伯爵とその一味を王都に連行しないといけないので、僕達は馬車に乗ってグロー伯爵領の守備隊の詰所に向かいました。
ここにグロー伯爵がいるそうなんだけど、一晩経って果たしてどんな感じなのだろうか。
トーリー様もグロー伯爵の様子を見るために、一緒についてきました。
「こちらになります」
グロー伯爵領兵が僕たちをグロー伯爵のいる牢屋の所に案内してくれますが、実はその前から大声が僕たちの耳にも聞こえてきていました。
「おーい、俺を誰だと思っているんだ! 俺は、この町の領主だぞ! 伯爵様だぞ!」
とても元気な大声が周囲に響いているけど、グロー伯爵は捕縛されてへこむどころかとても元気なんだ。
ある意味安心したけど、その声にトーリー様が一番安堵していました。
ザッ。
ガシガシガシ、ガシガシガシ。
「おい、聞いているのか! 俺をここから出せ!」
そして牢屋の直ぐ近くに到着すると、グロー伯爵が牢屋の柵を掴んでガシガシと何回も揺すっていました。
他の牢屋はとても静かなので、大騒ぎしているのはグロー伯爵だけみたいですね。
そんな中、トーリー様が僕たちよりも先にグロー伯爵の前に姿を現しました。
「よう、久しぶりだな。捕まって落ち込んでいるかと思ったら、随分と元気そうだな。俺も安心したぞ」
「はっ? げぇーーー! トーリー!」
トーリー様がニヤリとしながらグロー伯爵に声をかけると、グロー伯爵は目玉が飛び出るのではないかというくらいビックリしていた。
このやり取りを見ただけでも、トーリー様とグロー伯爵との間で過去に何かあったのは想像に固くない。
「陛下の命により、お前は正式に全ての貴族権限を剥奪された上で重犯罪者として裁かれる事になった。爵位がどうなるかは分からないが、お前の息子が当主になる。賢い息子だから、これからは良い統治が行われるだろう」
「はあ!? あのジークが俺の後釜だと? あいつはもう直ぐ死ぬから、俺が再び当主になるんだ!」
トーリー様が陛下の命令書を檻を掴んでいるグロー伯爵に突きつけたけど、当のグロー伯爵は直ぐに嫡男であるジークさんが死ぬと断言していた。
何か裏があるのかなと思ったら、スーが即時に回答した。
「横から失礼いたします。ジークさんは、ヒ素に侵されていました。私がジークさんを治療をして何とか命を取り留めましたが、あと少し遅かったら危ないところでした。因みに、食事にヒ素を入れていた料理人も拘束し、ヒ素そのものもアオちゃんが発見しました」
「げっ……」
スーがニコリとしながら全てを話したけど、昨日スーが疲弊するほど治療をした理由は重体だったジークさんを治療したからだったんだ。
グロー伯爵は、自分の企みがバレて顔面蒼白になってしまいました。




