散歩の九百十三話 ようやく捜索開始
侍従長からもう少し話を聞くと、グロー伯爵と執事は短気な性格らしく、気に入らない事があると使用人を殴ったり蹴ったりなどをしていたそうです。
しかも、使用人への給与も誤魔化していて、キチンと支払われていないそうです。
なんというか、グロー伯爵は予想以上に駄目駄目な貴族だった。
「御子息様は読書が趣味の大人しい性格でして、世話をしている使用人にもとても優しく接しています。まだ幼いのにお館様から突き放されているので、恐らく使用人を親代わりとしているのでしょう」
スーが治療をしたという嫡男は、きっと父親から避けられて寂しい思いをしていたはず。
何にせよ、明日しっかりと話をする事が大切ですね。
ドサドサ。
「こっちにもあったよー」
「うむ、これは酷い。ここまで改ざんされた帳簿は初めて見たぞ。しかも、開墾計画も全く実行されていない。一体どんな統治をしていたのだ?」
僕が侍従長と話をしている間、シロが色々な所から証拠品を見つけ出してテーブルの上に置いていった。
そして、ホーネット男爵が帳簿を見ていたけど、ページをめくる度に顔をしかめる酷さだった。
領民の健康状況もよくなさそうだし、事態はあまりよくなさそうだ。
「ホーネット男爵、グロー伯爵は普通に統治失格レベルの酷さですね……」
「同感だ。こんな酷い統治を行えば、町で見た生気のない住民がいるのも頷ける」
なんというか、僕もホーネット男爵もグロー伯爵の統治能力の酷さに溜息をつくばかりだった。
どんどんと詳細を通信用魔導具でスキャンして王城に送っているけど、王城からもここまで酷いとは思わなかったという。
そこで、王城から官僚を複数派遣して財務調査と領地内の調査をする事になりました。
「僕達は、明日朝グロー伯爵や執事などを王都に連れて行くのが主な役割みたいですね」
「再びグロー伯爵領に行くことにもなりそうだが、何れにしても首謀者をキッチリと裁かないとならない。これだけの証拠品を王都に送れば、色々と対応も出来るだろう」
通信用魔導具に送られた内容を確認しながら、僕とホーネット男爵はこれからのことを話し合いました。
分かったことは、二重帳簿の方も計算が合っていなくて、もはや何の帳簿が正しいのか全く分からない事でした。
これでは僕達では調べようがないので、財務の専門家にお願いする事になります。
そして、一旦王都に戻ってこれからの方針を確認してから再びグロー伯爵領に来ることになりそうです。




