散歩の九百十一話 自爆したグロー伯爵
すると、グロー伯爵はワナワナと肩を振るわせたと思ったら、突然激昂したのです。
「うるさーい! このガキが、儂に楯突いてきやがって!」
ダッ。
そして、グロー伯爵はあろう事かスーに掴み掛かろうとしたのです。
これには、グロー伯爵の側にいた執事も予想外の行動に出た主人にびっくりしていた。
しかし、僕たちはいつも最悪の事を想定して動いているし、グロー伯爵が逆上してスーを襲おうとするのはある意味想定内でした。
シュッ。
「悪者、撃退!」
ドカッ、ズサー。
「うがぁ!」
「お、お館様!」
間髪入れずに、スーに襲い掛かろうとしたグロー伯爵をシロが蹴り飛ばしました。
グロー伯爵はかなりの巨漢なのだけど、派手に吹っ飛んでいった。
慌てて執事がグロー伯爵の元に駆けつけたけど、グロー伯爵は完全に気絶していますね。
僕は、グロー伯爵の馬鹿な行動に溜息をつきつつ、アイテムボックスから縄を取り出しました。
「グロー伯爵を、スーザン王女殿下に対する反逆罪の現行犯で捕縛します。反逆罪ですので、この時点をもって裁判で罪状が確定するまでグロー伯爵の貴族権限及び当主権限の一切が停止となります。そのため、八歳の嫡男が代理当主となります」
「ぐっ……」
グロー伯爵を後ろ手に拘束しながら罪状を言うと、執事は苦虫を噛み潰したような表情をしていました。
そして、執事は懐からナイフを取り出しました。
「くそ、こんなと……」
「悪者、撃退!」
バシッ。
「ぐはぁ!」
ドサッ。
執事は僕のことをナイフで突き刺して一泡吹かせようと思ったみたいだけど、残念ながらシロとアオのダブル攻撃で派手に吹っ飛んでいった。
僕も魔法の準備をしていたけど、僕が執事を撃退しなくて済んだみたいです。
執事も縄で拘束したけど、本題の罪状の前に自ら自爆しています。
素直に罪を認める事なく、自ら罪を重ねるなんてね。
スーも思わず溜息をつきながら通信用魔導具で事の次第を関係部署に報告しているし、ホーネット男爵もこりゃ駄目だって表情をしていました。
すると、スーがある事を僕に教えてくれました。
「シュンさん、もうそろそろ軍の先行部隊がグロー伯爵領に到着するそうです。いつの間にか追い抜いちゃったみたいですけど、軍が到着してから監査を始めても良さそうですね」
「この二人を監視しながらの監査は大変だから、その方が良さそうだね。僕も準備を進めるよ」
シロとアオも、いつでも大丈夫ってアピールしていました。
なんにせよ、ここからが財務監査の本番だね。




