散歩の九百十話 意外な事実
三十分程かけて財務調査を行ったけど、これ以上やっても無駄っぽい。
僕とアオとホーネット男爵は、思わず顔を見合わせてしまいました。
目の前にグロー伯爵と執事がいるので流石に溜息をつけないけど、正直なところ何がどうなっているのかさっぱり分かりません。
この偽装の財務書類は計算間違いだらけなので、二重帳簿のもう一つの財務書類も信用性にかなりの疑問が残ります。
スーに現状の事を報告して、スーが直ぐにグロー伯爵に話し始めました。
「もう少しお待ち下さいませ。王城に同じ物が提出されておりますので、王城でも確認を行っております」
「承知いたしました」
グロー伯爵と執事は、どうぞどうぞとニヤニヤした表情をしていました。
余程、提出した嘘の財務書類に自信があるのでしょうね。
でも、僕としては何でこの滅茶苦茶な財務書類が王城で通過したのかが気になります。
すると、スーが通信用魔導具の画面を確認してとんでもない事を僕たちに教えてくれた。
「えっと、王城からの報告をお伝えいたします。別の貴族から賄賂を貰っていた財務監査官が逮捕され、グロー伯爵家から提出された財務書類をそのまま承認していたそうです。そして、王城で財務書類を確認したところ、保存期間のある過去十年分全て計算間違いが確認されました。また、計算間違いとは別に税金滞納も確認されました」
「「「えっ?」」」
完全に予想外の事がスーから伝えられたので、僕たちはグロー伯爵と執事を含めて思わず固まっちゃいました。
というか、財務監査官を買収していたのって一体誰ですか。
贈収賄も気になるけど、スーの話には続きがありました。
「父である国王陛下より連絡があります。『財務監査官が買収されて財務書類の確認に抜けがあったのは、国としてのミスである。しかし、税金滞納があるのはグロー伯爵家の問題なので、執務室の強制査察を実行せよ』以上になります。これより、私をトップとする形で、執務室の強制査察を開始します」
「なっ!?」
グロー伯爵は、聞いてないよという表情に変わりました。
財務部署大丈夫かなという疑念もあるけど、国王陛下からの査察命令なのでグロー伯爵は命令を拒否できません。
スーも、グロー伯爵に通信用魔導具の画面に表示された陛下からの命令を見せていました。




