散歩の九百七話 様々な違和感
「し、暫くお待ち下さいませ」
「わざわざ、ありがとうございます」
僕達は応接室に案内されたけど、使用人は目の前に王国王女様がいて粗相をしないかと気が気ではなかった。
当のスーは、にこやかに使用人に応対しているけどね。
そして、アオが僕たちに触手をフリフリとしてぴょーんと使用人の後をついていった。
先にこの屋敷の中を偵察し、僕たちに情報を伝える事になりました。
バタン。
「うーん、ちょっと違和感があります。屋敷の中もごく普通の調度品なんですけど、統一感がないというか……」
「流石はヴィクトリー子爵だ。私も、この屋敷に違和感を感じている。調度品を作った工房もバラバラだが、普通は契約した工房で作ったもので統一している。あり合わせて間に合わせた感じで、普通はこんな事はしない」
使用人が応接室を出たのを確認し、僕とホーネット男爵はこの屋敷に漂う違和感について話し合っていました。
この応接室に置かれている調度品も、物は問題ないんだけど色合いとかがずれている様に感じました。
スーとシロも違和感を感じ取っていて、シロは思わず首を傾げながらキョロキョロとしていました。
スーは、直ぐに屋敷の違和感を通信用魔導具で王城に連絡しました。
残念ながら、ホーネット男爵の部下はそこまでの違和感は感じ取れなかったみたいです。
そして、この状況と決定的に合わない服装を着た人物が応接室の中に入ってきました。
ガチャ。
「いやはや、大変お待たせいたしました。スーザン王女殿下におかれましては、遥々我が家まで起こし頂きありがとうございます」
「「「……」」」
開いた口が塞がらないというのは、こういうことを言うのだろう。
僕だけでなく、スーやホーネット男爵も応接室に入ってきた男性を見て思わずポカーンとしてしまった。
グロー伯爵と思わしきでっぷりと太った頭頂部の毛が薄い男性が、額の汗をハンカチで拭いながら入ってきた。
着ている貴族服は僕やホーネット男爵が着ているのと同じくらいの、ごく普通の貴族服だった。
しかし、指にはゴツい宝石があしらわれた指輪にきんきらきんに光るネックレスを首からかけていた。
グロー伯爵が着ている貴族服と身に着けているアクセサリーが、思いっきりちぐはぐだった。
しかも、グロー伯爵は思いっきり汗をかいているのに、着ている貴族服には汗染みはできていなかった。
ということは、この貴族服は直近で着替えた物だと推測できる。
段々と、色々な事が分かってきたぞ。




