散歩の九百六話 グロー伯爵領に到着
馬車は猛スピードで進んだのもあり、やはりというかグロー伯爵領にはおやつの時間前に到着しました。
うちの馬ならこのくらいのスピードは余裕で出せるけど、御者をしていた近衛騎士や馬車内にいた他の者はなんだこれはとあっけにとられていた。
「あの、うちの馬はスピードを出そうと思えばもっと出せますが、今日は安全の為に、このくらいのスピードにしました」
「こ、これは凄い。こんな馬が存在したのか……」
ホーネット男爵も馬車の窓からグロー伯爵領の町並みを眺めながら信じられないって表情をしていたけど、シロとアオはこれくらいは当然ってドヤ顔でいました。
スーはホーネット男爵の気持ちが分かるのか、ははって思わず苦笑していました。
流石に、馬車は領都内をゆっくりと進んで行った。
僕は、スーに使い方を習いながら通信用魔導具で陛下を始めとした各所にグロー伯爵領に到着したと連絡した。
すると、ほぼ全ての人から「はっ!?」という返事が返ってきた。
どうやら、本当に今日中にグロー伯爵領に到着するとは思わなかったらしい。
因みに、陛下と王太子様、それに王妃様だけはうちの馬のスピードを良く知っているので、「速やかにグロー伯爵家へ向かう様に」と普通に指示を出していた。
ということで、命令されたので早速グロー伯爵家の屋敷に向かいましょう。
パカパカパカ。
「皆様、グロー伯爵家の屋敷に到着しました」
「うーん、普通の屋敷だね」
「普通だね」
近衛騎士の声を聞いて馬車の窓からグロー伯爵家の屋敷を眺めたけど、今まで見てきた領地持ちの貴族家の屋敷と大差なかった。
思わず僕とシロは無難な感想を言ったけど、少なくとも屋敷の外から眺める分には豪勢な暮らしをしている様には見えなかった。
そして、御者を務める近衛騎士がグロー伯爵家の屋敷の門兵に来訪を告げた。
「先ぶれもあっただろうか、王国からグロー伯爵家に対する調査でまいった。スーザン王女殿下自ら調査隊を率いてやってきたのだ。速やかに開門せよ」
「「「はっ、はい!」」」
グロー伯爵家の門兵はまさか調査団に王国の王女様が加わっているとは思っていなかったようで、スーが馬車の窓から王家の証である豪華な装飾が施されている短剣を取り出すと門兵は酷く慌てた様子をみせた。
そして、門が開くと同時に一部の門兵が猛ダッシュで屋敷に向かって行った。
馬車はゆっくりと屋敷の庭を進み、玄関に到着した。
僕たちは順に馬車から降りたけど、スーは王女らしい品のあるドレスを着ているので僕がスーの手を取って馬車から降りるのを補助した。
うーん、玄関も見た目は普通って感じだけどいったいどうなっているのだろうか。




