散歩の八百七十六話 ホーネット男爵と会います
ということで、僕は準備を整えて王太子様と一緒に会議室に向かいました。
すると、既に一人の少し年配で白髪が混じった茶髪の貴族の男性が僕たちを待っていました。
多分、ホーネット男爵で間違いなさそうですね。
すると、ホーネット男爵は王太子様と僕に深々と頭を下げてきました。
「王太子殿下、ヴィクトリー子爵、この度は色々と迷惑をかけて本当に申し訳ない。この通り、深く謝罪する」
ホーネット男爵は、とても誠実な人っぽいですね。
話を聞くために頭を上げてもらい、席に着きました。
「その、嫁いだ娘が急死したのを受け、妻が精神的なショックで倒れてしまいました。更に、嫁いだ娘と仲が良かった息子の嫁までショックで倒れてしまい、我が家はかなりドタバタしております。屋敷の状況が落ち着けば、孫を引き取りたいと思っております」
ホーネット男爵が申し訳なく話したけど、家人が二人もショックで倒れてしまったとなれば混乱しているのは想像に難くない。
ホーネット男爵もだいぶ気苦労をかけているみたいだけど、暫く落ち着く時間が必要です。
そして、ホーネット男爵は王太子様も驚く事を話してくれた。
「その、嫁いだ娘はステージア男爵のだらしない生活を注意したらしく、逆ギレしたステージア男爵に殴られたみたいです。その時に負った怪我が元で亡くなったのですが、どうやらステージア男爵は自分への反抗的な態度への対応として医者を呼ばなかったらしいです」
「なんと、仮にも軍人でもあるステージア男爵が側室を殴り殺すとは。内務部局が調査しているとはいえ、普通に賠償金も絡む問題になるぞ」
「はい、その通りになります。特に姉を殺された息子の怒りは大きく、その為に葬儀の際に揉めに揉めました」
事件の背景が徐々に分かってきたけど、これって全面的にステージア男爵が悪いんじゃないかな。
内務部局が動いているけど、軍も捜査協力をしないと駄目っぽいです。
しかし、ステージア男爵は更に手を打って来たみたいです。
「ステージア男爵は、自身に捜査の手が及ばないようにしているみたいです。捜査機関に圧力をかけていると、もっぱら噂されています」
「ふむ、それでは私の権限で近衛騎士を動かそう。事件の背景だけでも調べれば、自ずと対応方法も分かるだろう」
王太子様は直ぐに部下に指示を出したけど、ステージア男爵の正妻の動向も調べないといけないし、そこそこの事件に発展しそうです。
何れにせよステージア男爵の言い分も聞かないといけないし、あの幼い兄妹をゴタゴタから守る必要もありそうです。




