散歩の八百七十二話 教会に現れた小さな兄妹
ちなみに、炊き出しに参加する貴族家のものは早めに来ている人が殆どですが、中には少し遅れてやってくる人もいます。
それは各貴族家の事情があるので仕方ないと、王妃様は言っていました。
「むしろ、遅くなっても来るということは評価が良くなるポイントじゃ。やる気のあるものは、妾は大歓迎じゃ」
王妃様の言うことが全てでしょう。
どんな些細なことでも手伝ってくれるのが、やはり評価ポイントなのでしょうね。
こうして順調に奉仕活動をしていたら、予想外の子が姿を現した。
「あの……」
「僕たち、ここに行けと言われました……」
なんと、フランたちよりも小さい兄妹が教会に姿を現しました。
身なりがそこそこいいので、もしかしたら貴族の子どもかもしれない。
うーん、これはどういうことなのだろうか。
「ねえ、君たちの名前を教えてくれるかな?」
「どうして、ここに来たのかな?」
すぐさま、テルマさんとケーシーさんが小さい二人に話しかけてくれた。
すると、お兄ちゃんの方があることを教えてくれました。
「あの、ガード・ステージアです。妹のレンです。その、お父様から、教会に行けと言われました」
僕は直ぐに鑑定したけど、確かにステージア男爵家の子どもなのは間違いないみたいですね。
二人とも赤髪の可愛らしい子で、ショートヘアのお兄ちゃんのガード君が五歳で、セミロングヘアの妹のレンちゃんが三歳です。
うーん、教会の手伝いに来たとしてもこんなに小さな兄妹だけでこさせるかな。
確かにフランたちくらいの子もいるけど、大きい保護者がついています。
しかも、この子たちは使用人もついていないのが気になりますね。
すると、ガード君が胸元から手紙を取り出して僕に渡してきました。
「あの、大人がいたら渡してって言われました」
ガード君から受け取った手紙を見た瞬間、僕は思わず頭が痛くなっちゃいました。
すぐさま王妃様にも手紙を見せたけど、これまた難しそうな表情をしていました。
「『死んだ側室の子で不要だから、屋敷から追放する』、ふざけておるのう。自分の子を、犬猫みたいに考えておるのか! ステージア男爵家に、直ぐに確認に行くのじゃ!」
「「「はっ」」」
王妃様は、直ぐに側に控えていた近衛騎士に指示を出した。
つまり、この兄妹は着の身着のまま屋敷を追い出されたみたいだ。
しかも、話を聞いてみれば屋敷から教会まで二人で歩いて来たという。
なんとも頭の痛い話です。
とにかく、二人のケアをしないと。
「シロ、ホルン、この子の治療をして話を聞いてあげてね」
「シロにおまかせだよ!」
「頑張って治療する」
ここは、年齢が近い子ども同士の方が打ち解けやすいでしょう。
シロとホルンは、直ぐに兄妹の手を繋いで治療のところに連れていきました。
新作もよろしくお願いします<m(__)m>




