散歩の八百六十四話 マリアちゃんを描いてみよう
すると、部屋を出た僕たちに王太子様が話しかけてきました。
何だか、かなり疲れているみたいですね。
「シュン、悪いが暫く政務を手伝ってくれ。馬鹿な貴族が、馬鹿な贈り物をしてくるのだよ」
「王太子様、もしかして盗聴器を仕込んだぬいぐるみを贈ってきたり、生まれたばかりのお子様を嫁にくれとかですか?」
「そういえば、シュンはヴィクトリー男爵家で似たような対応をしたな。ジェフに嫁を勧めるものもいたが、それは母上が相手をしてくれた」
うん、疲れている理由がかなりどうしようもなかった。
マリアちゃんは王女様だから、是非に嫁にっていうものは多そうですね。
しかし、あの王妃様を敵に回す方が自分たちにとって不利益になるということに気が付かないのだろうか。
そこが、自分勝手な貴族のかなり残念なところです。
ということで、僕はちびっ子たちとともに王太子様の執務室に向かいました。
そして、ジェフちゃんたちにある宿題を出しました。
「じゃあ、マリアちゃんの寝ている姿をみんなで描いてみましょう。それが今日の勉強です」
「「「はいっ!」」」
みんな、元気よく手を上げて返事をしていました。
職員の皆さんも、張り切っているちびっ子を微笑ましく見ていました。
今日は終日王太子様は不在なので、応接セットは使わない予定です。
ですので、今日は一日子どもたちの勉強の為に使わせて貰いましょう。
それに、この王太子様の執務室なら警備もバッチリ安全です。
「「「うーん、うーん……」」」
みんな、とても真剣に悩んで描いていますね。
目の前にマリアちゃんがいないので、想像力を磨く勉強にもなります。
そんな中、シロはどんどんと描き進めていました。
「出来た!」
ガチャ。
「おお、皆ここにおったか」
そして、シロがマリアちゃんの絵を描き上げたと同時に宰相執務室に王妃様が姿を現しました。
どうやら、ジェフちゃんが僕たちと一緒にいると聞いたみたいです。
そして、王妃様はシロの描いたマリアちゃんの絵を繁々と眺めていました。
「うむ、流石はシロじゃ。マリアのことがよく描かれておる。この絵を借りるぞ、マリアに会わせてくれという煩い輩が多いのでな」
ということで、シロの描いた絵はイーゼルごと王妃様に貸し出すことになりました。
元々シロの描いた絵はプレゼントにすることが決まっているので、戻ってきたら更に描き足して完成させることにしました。
「おばーさま、僕もマリアちゃんを描いたよ!」
「ふふ、マリアがニコニコしておるのう。ジェフよ、良い絵じゃぞ」
「えへへ!」
ジェフちゃんも、渾身の絵を王妃様に見せていました。
寝ているのに笑顔なのは、きっとジェフちゃんが優しいからですね。
こうして、みんなはもっと張り切ってマリアちゃんの絵を描いていました。




